最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

文字の大きさ
64 / 114
第八章 決闘!

64 番外編 5

しおりを挟む
回復魔法と言えども万能ではない。

病気は治らないし、欠損部位も再生しない。

魔法を使えば瞬時に治る訳でもなく、術者の力量にも依るが、重傷であればある程時間がかかる。

そのため重傷者死亡のケースは、本人の体力が保たない事が殆どなのだ。

「あの二人…聞いたか?」

そのとき鳴神ひかりの近くに立っていた傭兵男性二人組が、泣き叫ぶ女性を見つめながら力無く呟く。

「…ああ。やっと先立つ物も貯まったから、来月結婚するんだと喜んでいた…」

「それが何で…クソっ、何も出来ないのかよっ」

男のひとりが腹立たしげに地面を蹴りつける姿を見て、鳴神ひかりの瞳から涙が一粒零れ落ちた。

「こんなの…可哀想だよー」

「うぉぉおおおおお!」

その涙を目撃した途端、白石和真が突然大声で吠えた。

「カ…カズっぺ、いきなり何っ⁉︎」

そのあまりの勢いに、鳴神ひかりの目が驚きで丸くなる。

「ひかりちゃん、オレに任せろっ」

白石和真は鳴神ひかりの手を両手でしっかり握りしめると、真っ直ぐに視線を合わせた。

「オレに…任せろぉぉおおおおお!」

その後、大声で叫びながら、女性の方へと一直線に駆けていった。

   ~~~

女性の膝上に頭を預けて横たわる男性は、呼吸も浅く顔色も蒼白い。腹部が異様にへこんでおり、重要な臓器が幾つも潰れている事が分かる。即死しててもおかしくないが、ここまで保ったのは、傭兵家業で鍛えた体力の為せる技であろう。

「あなた…は?」

そのとき現れた年端もいかぬ見知らぬ少年に、かすれた声で女性が呟いた。

「そのままジッとしてろ」

白石和真は二人のそばに膝をつくと、一度大きく深呼吸してから、男性にソッと右手をかざす。

「リカバー」

自然と口から言葉が溢れた。一番好きなゲームの回復呪文だ。

その時になって、先程の咲森勇人の言葉の意味をやっと理解する。

(何でもかんでもお見通しかよ)

白石和真は呆れたように笑顔を浮かべた。

その瞬間、光の粒子をまき散らしながら、男性の身体が光に包まれる。そうして光がゆっくりと収まった後、男性がパッと目を見開いた。

「えっ⁉︎」

女性が思わず声をあげる。男性はそのまま上半身を起こすと、自分の身体を不思議そうに眺めた。

「痛くない…もう、どこも痛くないぞっ!」

「まさか…っ、本当に…?」

「ああ本当だ、どこも痛くないっ!」

二人はお互い抱き合いながら、大粒の涙を流して喜び合った。

「これが、カズマさまの魔法…」

それをボンヤリと眺めていた白石和真の元に、不意に背後から声が届く。その声に白石和真が振り返ると、ユミルが両指を組み合わせて瞳を輝かせながら立っていた。

「カズっぺ、めっちゃカッコ良かったー」

そしてその横に、涙目で頬を真っ赤に染めた鳴神ひかりが目に入る。

「ひかりちゃん」

白石和真はスックと立ち上がり、ゆっくりと両腕を開いた。

「良かったー、ホントに良かったよー」

鳴神ひかりは「うわーん」と泣き声をあげると、直ぐそばに立っていた咲森勇人の胸に飛び込む。

「ちょ…ちょっとひかりちゃーん、そこはオレの胸でしょーーっ!」

白石和真の涙ながらの絶叫は、防壁に囲まれた円形の空へと吸い込まれていった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...