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第九章 怪しいご招待
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「おや、チェルシー、持ち場はどうしたの? まさかとは思うけど、サボりじゃないわよね?」
突然どこからともなく現れたグレイスが、微笑みを浮かべて背後からチェルシーを見つめている。
その声に気付いたチェルシーが、ギギギと音でもしそうな動きでゆっくりと振り返った。
「ま、まさか…そんな訳ないですー。あーっ、もうこんな時間、そろそろ交代の時間ですーっ」
チェルシーはそれだけ言い残すと、一目散に駆けて行く。そんな彼女の後ろ姿を、グレイスが笑顔で見送っていた。
「あの、グレイスさん。クラーケン…って?」
クラーケン。
神木公平の知る限りでは、ダイオウイカの更に化け物のような存在だ。そして遠い昔から船を襲う魔物として、船乗りたちの間で恐れられていた。
「あらまあ、聞いてしまったの?」
神木公平の質問を受けて、グレイスが潤んだ翡翠色の瞳を一杯に見開く。
「お礼のつもりが、大変な時に呼んでしまってごめんなさい……私も知らなかったの」
嘘だ……神木公平は冷ややかなジト目をグレイスに向けた。
グレイスの任務を受けたチェルシーがここにいるのだから、どう考えても知らない筈がない。
しかし聖母の微笑みを浮かべるグレイスは、そんな神木公平の視線などお構いなしに言葉を続けた。
「どうもね、全長が20メートルはありそうなクラーケンが、ここの近海で観測されたようなの」
「襲ってくるんですか?」
「来ないで欲しいとは思うのだけど…こればかりは分からないじゃない?」
グレイスは頬に右手を添えると、「ふぅ」と小さく溜め息を吐く。
「だからもしもの時のために、こうして傭兵団が待機しているの」
「それじゃその時は、チェルシーも戦う事になるんですか?」
神木公平のその言葉に、グレイスが一瞬反応を見せた。それからワザとらしく盛大な溜め息を吐く。
「心配よねー。母親として、心配し過ぎて食事も喉を通らないのよー」
どう考えてもおかしい……普通、こんな大きな任務に新人が招集されるだろうか…? 神木公平のジト目が、更に冷ややかさを増す。
これではまるで、何かの陰謀に巻き込まれたラノベの主人公か、もしくは……
「公平…くん」
佐敷瞳子も気付いたのか、神木公平の上着の裾をクイッと引っ張る。
「そうだな、用があるのは俺たち…か」
それなりに名の知れた、スピアー家の御曹子を倒した自分たちを巻き込もうとしているのだろう。神木公平は半ば諦めたように苦笑いを浮かべた。
「グレイスさん、向こうの岬には誰も近付けないでください。絶対ですよっ!」
それだけ念を押すと、神木公平と佐敷瞳子が岬の方へと駆け出していく。
「あらまあチェルシーったら…もしかして見捨てられちゃったんじゃないの?」
二人の背中を眺めながら、グレイスは困ったような笑顔を浮かべた。
突然どこからともなく現れたグレイスが、微笑みを浮かべて背後からチェルシーを見つめている。
その声に気付いたチェルシーが、ギギギと音でもしそうな動きでゆっくりと振り返った。
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チェルシーはそれだけ言い残すと、一目散に駆けて行く。そんな彼女の後ろ姿を、グレイスが笑顔で見送っていた。
「あの、グレイスさん。クラーケン…って?」
クラーケン。
神木公平の知る限りでは、ダイオウイカの更に化け物のような存在だ。そして遠い昔から船を襲う魔物として、船乗りたちの間で恐れられていた。
「あらまあ、聞いてしまったの?」
神木公平の質問を受けて、グレイスが潤んだ翡翠色の瞳を一杯に見開く。
「お礼のつもりが、大変な時に呼んでしまってごめんなさい……私も知らなかったの」
嘘だ……神木公平は冷ややかなジト目をグレイスに向けた。
グレイスの任務を受けたチェルシーがここにいるのだから、どう考えても知らない筈がない。
しかし聖母の微笑みを浮かべるグレイスは、そんな神木公平の視線などお構いなしに言葉を続けた。
「どうもね、全長が20メートルはありそうなクラーケンが、ここの近海で観測されたようなの」
「襲ってくるんですか?」
「来ないで欲しいとは思うのだけど…こればかりは分からないじゃない?」
グレイスは頬に右手を添えると、「ふぅ」と小さく溜め息を吐く。
「だからもしもの時のために、こうして傭兵団が待機しているの」
「それじゃその時は、チェルシーも戦う事になるんですか?」
神木公平のその言葉に、グレイスが一瞬反応を見せた。それからワザとらしく盛大な溜め息を吐く。
「心配よねー。母親として、心配し過ぎて食事も喉を通らないのよー」
どう考えてもおかしい……普通、こんな大きな任務に新人が招集されるだろうか…? 神木公平のジト目が、更に冷ややかさを増す。
これではまるで、何かの陰謀に巻き込まれたラノベの主人公か、もしくは……
「公平…くん」
佐敷瞳子も気付いたのか、神木公平の上着の裾をクイッと引っ張る。
「そうだな、用があるのは俺たち…か」
それなりに名の知れた、スピアー家の御曹子を倒した自分たちを巻き込もうとしているのだろう。神木公平は半ば諦めたように苦笑いを浮かべた。
「グレイスさん、向こうの岬には誰も近付けないでください。絶対ですよっ!」
それだけ念を押すと、神木公平と佐敷瞳子が岬の方へと駆け出していく。
「あらまあチェルシーったら…もしかして見捨てられちゃったんじゃないの?」
二人の背中を眺めながら、グレイスは困ったような笑顔を浮かべた。
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