最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

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第十章 護衛任務

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神木公平たち3人が指示された馬車に乗り込むと、中には一人の少年が既に座っていた。

「初めまして、僕はレトと申します」

若者は座った体勢のままペコリと頭を下げると、とてもなごやかに微笑む。

サラリと揺れる黒髪ストレートのおかっぱ頭が特徴的で、腰周りと裾に青のラインの入った白い長衣ローブを着用していた。

「あ、俺は神木公平です」
「…佐敷瞳子です」
「私はチェルシーですー」

3人はそれぞれに自己紹介すると、6人乗りの馬車に乗り込んでいく。そうして全員が席についた頃、直ぐさま馬車が出発した。

目的の水晶湖は、トルネ河を越えて、北西に100キロメートル程行った先にある。途中休憩を挟みながらではあるが、おそらく到着は夜も遅くになるとのことだ。

何故か詳しい内容は当日まで明かして貰えなかったが、任務が数日になる事は聞いていたので、メイにはちゃんと伝えている。

相席のレトは、どうやら結界魔法士の見習いとして現在勉強中のようだ。前の馬車には3人の先輩方が乗っており、今回その作業の付き添いとして、見学の許可を取っていた。

窓から見える風景は、ポツポツと木々の生えるサバンナのような景色である。今はまるで春のような陽気だが、北側に連なる山脈に残る雪が、冬の厳しさを物語っていた。

それからどのくらい走ったのだろうか。馬の休憩に合わせて、自分たちも昼食を摂ることになった。残念ながら携帯用の非常食のような物だが、文句など言える筈もない。

そうして外でのんびりしていると、チェルシーが瞳を輝かせて声を張り上げた。

「実は私、水晶湖って初めてなんですー」

「そうですね、僕も初めてです。何でも、鏡のように綺麗な湖らしいですよ」

チェルシーに呼応するように、レトも口を開く。

「それだけ綺麗なのに、有名な観光地とかになってないんですか?」

二人の話を聞いて、神木公平が不思議そうな表情を浮かべた。

「以前は国立公園として開放されていましたが、もう10年以上も前から最後の神域として封鎖されています。ご存知ないのですか?」

「え…? あー…」

しかし逆にレトから向けられた視線に、神木公平は言葉に詰まって鼻の頭をポリポリと掻く。

「公平くん、何か…来る」

そのとき佐敷瞳子が不意に振り返り、遠くを見つめながらボソッと呟いた。

その声と同じくして、6人の護衛騎士たちも慌ただしく動き始める。ひとりの女性騎士が佐敷瞳子と同じ方向を指差しながら、隊長のアイゼンに何やら報告していた。

「もしかして魔獣か?」

「うん、蜜穴熊が…3体」

「そこまで分かるのですか⁉︎」

神木公平と佐敷瞳子の会話を聞いて、レトが驚いた声をあげる。

「……あ、はい」

「トーコさん、スゴいですー! 感知のスキル持ちでも、普通はそこまで分からないですー」

頷く佐敷瞳子を見て、チェルシーも思わず感嘆の声を漏らした。

「しかし、蜜穴熊ラーテルとはマズイですね」

「強いんですか?」

名前からでは、とても想像がつかない。口元に手を当て考え込むレトに向けて、神木公平が疑問を投げかける。

「はい…茂みに隠れるほどの小柄な魔獣ですが、獰猛さはピカイチです。騎馬で不用意に近付くと馬の身が危ない…」

レトは焦ったように立ち上がると、アイゼンの元へと駆けて行った。
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