最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

文字の大きさ
77 / 114
第十章 護衛任務

77

しおりを挟む
蜜穴熊とは、体長80センチメートル程度のイタチに似た魔獣で、白と黒のツートンの体色を持つ。その厚手の毛皮は容易に牙を通さず、強力な顎でスッポンのように食らいつく。

弱肉強食の世界の中で、大型で獰猛な魔獣でさえ、手痛いしっぺ返しを恐れてか、わざわざこの小柄な魔獣に手を出さない。

とは言えあの隊長が、こんな話を聞き入れるだろうか…?

アイゼンに報告するレトの後ろ姿を眺めながら、神木公平は何となくそんな事を考えていた。

「魔獣は蜜穴熊ラーテルの可能性も考えられる。念のため馬を降りて陣形を組めっ!」

しかし予想に反してアイゼンの指示が素早く飛ぶ。

戻ってきたレトに、神木公平は感心したような顔を向けた。

「よく、聞き入れて貰えましたね?」

「そうですね。大型の魔獣なら既に視認も可能でしょうから、小型の魔獣である事は理解して貰えたようです」

「あー…なるほど」

やや苦笑いを浮かべるレトの説明に、神木公平は納得したように大きく頷く。

程なく魔獣は討伐され、馬車は再び水晶湖へ向けて走り出した。

   ~~~

陽も沈んで暫くたった頃、漸く北部の主要都市「ハンタリオン」にたどり着いた。

主に狩猟による産業が盛んで、狩人の聖地とも云われている。

既にひと狩り終えた狩人たちも戻って来ており、夜の繁華街は大変な賑わいを見せていた。

あらかじめ予約でもしてあったのか、神木公平たちは高級そうなレストランでの夕食となった。メニューは肉と魚の選択制で、神木公平は迷わず肉のプレートを選び取る。ちなみにチェルシーも肉を選び、佐敷瞳子とレトは魚を選んだ。

ここまで来たら、水晶湖までは、あと2時間ほどで着く。現地には元々宿泊施設であった建物があり、そこが活動の拠点となる。

当初の予定通り、本日中にそこまでたどり着き、就寝はその元ホテルですることになっていた。

騎士団の面々が現地での食糧や生活必需品を購入している間、神木公平たちには、各自自由行動が与えられた。

「公平く…」
「コーヘーさん、良ければ買い物に付き合って欲しいのですっ」

自分の声をチェルシーに遮られ、佐敷瞳子はムッと頬を膨らませる。

そのまま睨み合う二人を眺めながら、神木公平は思わず苦笑いを浮かべた。

「分かった、分かった。皆んなで行こう」

「だったら僕が案内しますよ。この街には何度か来た事がありますので」

そのとき背後からシレッと現れたレトが、和やかな笑顔で微笑んでいる。

正直これは助け船だ…

「ああレト、助かるよ。俺も瞳子も、全然知らない所だからさー」

その救いの手にすがり付くように、神木公平はレトの元へと駆け寄っていった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...