最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

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第十一章 フィアホルン攻防戦

96 番外編 12

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「お前、ミサ……何でここに…?」

唐突に現れた少女の姿に訳も分からず、白石和真が呆然と呟いた。

「大きな闇の波動を感じましたので、急いで跳んできたのです。これが私の使命のひとつですから」

そう言ってミサは、胸元で真っ白な聖杖を両手で握りしめながら、優しい笑みを浮かべる。

「ゴロスーッ! ニンゲン、ゴロスーーッ!」

同時に空気をビリビリと震わせる程の大声が、辺り一面に響き渡った。

バグナーの全身が影の様に真っ黒に染まり、眼だけが爛々と紅く輝いている。まるで理性を失ったかのようにダラシなく開いた大口から、黒い瘴気が勢いよく噴き出していた。

「やけにシャムシェールが騒ぐと思えば、中々面白い事になってるな、鳴神くん」

そのとき鳴神ひかりの直ぐ横に、白いマントを翻して、学ラン姿の少年が空から舞い降りた。

「あ…ユ、ユーたん⁉︎」

ゆらりと立ち上がる咲森勇人の全身から、銀色の炎が立ち昇っている。

「ミサ、あれは何だ?」

「あれは魔族です、ユートさん」

「魔族…魔物の上位種か?」

「と言うより、我らのついとなる存在ですね」

つい…?」

「グオオオーーッ!」

その瞬間、バグナーが右拳を振り上げながら猛突進してきた。図体からでは考えられない程の、凄まじいスピードだ。

同時に咲森勇人は太陽剣を抜き放ち、射出するように大地を蹴りつける。

続いて示し合わせたかのようにミサが咲森勇人に聖杖を向けると、太陽剣が激しい光を放ち始めた。

そうしてバグナーの巨大な拳と咲森勇人が交錯した瞬間、その太い腕の肘から先が宙に舞い上がった。

「ギ…ガ…ッ⁉︎」

その身に起きた事が理解出来ずに、バグナーの紅い両眼が大きく見開かれる。

咲森勇人はそのまま勢いでバグナーの背後の虚空を駆け上がり、首筋の延髄目掛けて太陽剣を突き刺した。

しかしその剣先が届く寸前に、激しい水流に飲み込まれ、一気に押し流されてしまう。

直後に光の筋が水流に逆らうように迸ると、モーゼのように真っ二つに斬り裂かれ、中から透明な光の球体に包まれた咲森勇人が姿を現した。

「ミサ、助かった」

「いえ、お気になさらずに。元々これは、私のお勤めですから」

ミサは聖杖の先端でコツンと地面を突くと、咲森勇人の方へと一瞬だけ視線を送る。

「今の皆さんでは、まだ太刀打ち出来ません。退がっていてください」

そうして聖杖を両手で構え直すと、その先端の青水晶をバグナーに向けた。

「バグナー、頭は冷えたかしら? 相手は女神族に聖剣よ。そんな半端な覚醒ではやられるわよ」

そのとき天に向かって伸びる3本の螺旋の水流に包まれて、ルサルサが静かに口を開く。

「グキ…ルサルサ、スマナイ」

バグナーは無くなった右肘を押さえながら、口から大量の黒いモヤを吐き出した。

すると黒に染まっていた体表がパラパラと剥がれ落ち、元の灰色の姿に戻っていった。
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