超消滅士・蘇芳鞘の二度目の人生譚

心響

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第16話「鞘、新たなる道」

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 鞘、光琉、音羽の3人もリアンでの共同生活に慣れてきた頃。
 季節は夏へと変わっており、外ではあちらこちらでセミの大合唱。今年も暑そうだ。
 普通は「ああ~また暑い夏がやってきた」とうんざりするところだが鞘にとっては17年ぶりの現実世界。うだるような日本特有の湿気混じりの暑さもなんだか嬉しく感じていた。

「ただいま帰りました」
「ああ涼しい。生き返る~」
 そう言ってリアンに帰宅したのは光琉と音羽。1話で2人は高校生だと表記したが現在、大浦流高校に在学中の2年生。一方の苺と蜜柑は会社勤めをしていて不在だ。
 帰宅した2人を干していた洗濯物をはずす作業をしていた鞘が出迎える。
「おかえりなさいませ。暑かったでしょう。何か冷たいものをお入れしますね」
 そう言ってあとわずかだった作業を終えた鞘は台所へ向かう、その背中にお礼を言う2人。

 するとまたもや帰宅者のお着きであった。結芽花である。
 鞘がおかえりなさいませと言う前に結芽花が「鞘ちゃん、鞘ちゃん」となぜかウキウキで声をかけてきた。
「はい、なんですか?」と鞘が尋ねると結芽花は次のような問いをしてきた。
「鞘ちゃんって高校は通ってたのよね?」と。
「あ、はい。2年の途中までですが。17年前は本人不在という前提で特別の退学手続きがなされたのだろうと思っています」
 
 鞘がそう話すと結芽花は笑顔で
「じゃあ今こそ卒業まで高校に通いきってみない?」と提案してきたのだ。
「はい?」
「だってせっかく17年ぶりに復活したんだもの。手に入れた第二の人生を棒に振る事はないのよ。私たち以外の人と交流したりお友達を作ったりしてね。だから、もう一度高校生活を送るの」
 そばで聞いていた光琉、音羽も賛成の声をあげた。
「通う学校は2人と同じ大浦流高校がいいわよね。最初はひとりだと心細いでしょうし、2人がいてくれたら鞘ちゃんも安心するでしょ?」
「......それはまあ安心ですが、でもあの......試験がありますよね」
「編入試験ね」
「そうです。きっと17年前に比べて...ずいぶん難しくなってるんじゃないでしょうか」
「大丈夫! ここに現役の高校生が2人もいるんだから教えてもらったらいいわ」
 この発言に「あの、私が教えます!!」と即座に手を挙げたのは音羽である。
 これには光琉も「それがいいよ。音羽は成績が良い方だから」と同意のようだ。

 こうして大浦流高校編入に向けて音羽による鞘の勉強が始まった。この時にはすでに鞘に対する特別な感情を自覚していた音羽は(1秒でも長く鞘ちゃんのそばにいられたら)と願っていたのだが、鞘が思いの外飲み込みが早く、すんなりと編入試験を受けられるまでになった。結果、無事合格出来たのである。
 鞘からは「音羽さん! 本当にありがとうございました」と感謝された音羽。
 鞘が自分と同じ高校に合格出来た事は大変嬉しいのだが反面、もっと鞘のそばにいたかったのも本音なので複雑なところだった。
 こんな気持ちをぶつけられるのは今のところ光琉しかいないので彼に吐露すると「そんなにガッカリするなよ」と慰められた。
「これからは鞘さんも大浦流高校の生徒なんだし、嫌っていうくらい彼女のそばにいられるだろ? まぁクラスは決まってないから、俺がいるクラスか音羽のいるクラスか、またはどっちもいないクラスかはわからないけどさ」
「......うん。そうだね」
 光琉も妹の鞘に対する気持ちが特別なものだとは気づいているがそれがヘンだとは思わなかった。むしろ人に気持ちを寄せる事が今までなかった妹なので鞘がきっかけになってくれたのは嬉しかった。


 そして、鞘が大浦流高校に行く日がやってきた。
 本校の制服は夏用セーラー服。ちなみに鞘が今まで来ていたセーラー服は17年前に通っていた高校のものである。
 真新しいセーラー服に身を包んだ鞘。
 その姿を見た黒刃は『似合ってるじゃないか』と褒め、結芽花もウンウンとうなずいたのだが「うーん。美容院で髪の長さを揃えてもらったけど......なんかこう、いじりたくなるわね」と言うと鞘に鏡の前に座るよう指示。言われた通り座ると結芽花は鞘の肩より下まである髪をとかし始めた。

 数十分後。完成した鞘の髪型を真正面から見た結芽花は「想像以上にカワイイんだけど!!!」と両手で頬を包みながら顔を赤くした。
 結芽花の様子が耳に入った二組の双子も駆け寄るなり鞘の髪型に悶絶した(特に音羽と苺が)。
「すっっっごくカワイイよ! 鞘ねーちゃん!!」
「結芽花さん! 天才!!」
「もっと褒めて褒めて~」
 3人のにぎやかなやりとりに光琉と蜜柑が顔を見合わせて微笑み合っていた。

 結芽花が施した髪型。それは髪をツインテールにして三つ編みにし、それをひとつにまとめたら結んだところをバレッタでパチンと留める...というものだった。

 鞘も鏡に映る見たことのない髪型を見てビックリしている。
「あの...いいんでしょうか。私がこのような髪型をしても......」
 戸惑ってる鞘に結芽花は「何言ってるの。いいに決まってるじゃない」と鞘の両肩に手を置き言った。
「はい......。ありがとうございます結芽花さん」
 それでもまだ嬉しいやら困るやら、戸惑ってる感じだ。
 そんな彼女を見て音羽の中にひとつの疑問が浮かんだ。
(どうして鞘ちゃんは、時折自分を卑下するような言い方をするのかな。やっぱり天葉の血を半分しか受け継いでないのを気にしてるのかな)と。
 地下空間でもそうだった。凶星との会話でも「私のような人間を理解し愛して下さる方はいない」と言い、天葉邸に向かう中でも「私は他の超消滅士よりも更に頑張らなければいけなかった」「果たして私が行って皆さんに受け入れていただけるかどうか」とも。
(そういえば鞘ちゃんの口からまだどうやって天葉に引き取られたのかを聞いてない。でも......いつかそんな話を私たちリアンのみんなにしてくれる日がきたらいいな)
 そう思い直した音羽は結芽花に髪型の結び方を教わりたいと申し出る。学校で鞘の髪が崩れた場合、サッと結び直せるようになりたいと。

 こうして鞘の新たなる第二の人生...第二の高校生活が始まるのだった。
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