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第17話「女子高生・鞘誕生と思いがけない再会」
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大浦流高校は寮も完備されてる男女共学校である。女子がセーラー服に対し男子はブレザー。校則に関してはわりと自由で、ピアスやイヤリング、ネックレス等のアクセサリーは宝石がついてないものならばOK。ただし金属アレルギーを持っている場合、それでも身につけたいのならば我慢してニッケル製をつけずにプラチナ製のものをつける事を学校側は推奨している。実際、生徒たちは個々に金属アレルギーかを検査し結果を学校に提出する事が決まりとなっている。
ちなみに鞘は事前に検査をしておりアレルギーは無しとの結果が出ている。光琉と音羽もアレルギー無しだが揃ってアクセサリーを身につけると100%どこかに失くしてしまうので日頃から身に着けないのだそうだ。
光琉と音羽がまだ天葉邸にいた時は前徳が運転する車で高校がある神明市まで送迎してもらっていたが、リアンがあるのは隣りの向塔市なので現在はバスで通学している。
今振り返ると、前徳の手をわずらわせずに済んだワケだから、そういう意味でも天葉邸を離れて正解だったと2人は思っている。
話を戻して。大浦流高校に到着すると、鞘は光琉、音羽の案内で来客受付に行き「おはようございます。本日からお世話になります天...蘇芳鞘です」と申し出た。すると受付の女性が事務所から出てきて「ようこそ大浦流高校へ。職員室までご案内します」と鞘を連れて行ってくれるようだ。「お2人とも、またあとで」と言い残して女性と去っていく叔母の後姿を光琉、音羽が見送った。
ちなみに、「天葉」ではなく「蘇芳」と苗字を変えているのは単に身バレされないため。
「蘇芳」は美咲の祖母であり当主であった局の旧姓なのだ。
彼女もまた嫁いだ身で主となったのだから相当の苦労があったに違いない。だからこそ半分しか天葉の血を引いていないと陰口を言われていた鞘に自分を重ねて彼女を守ってくれたのだろう。
さて。
鞘と共に職員室に着いた受付の女性は扉を引き「おはようございます」と言って中に入る。あとをついていく鞘も17年ぶりに職員室の雰囲気を感じていた。
やがて女性は、とあるデスクに座る人物に「おはようございます」と声をかける。
すると人物も「おはようございます」と女性に挨拶を返す。
(......え?)
鞘は人物の声を耳にした瞬間、体が固まった。
なぜならその声に聞き覚えがあったから。
(いえ、忘れることはない。忘れられるハズが...ありません)
それは結芽花と対面した時にも心に出てきたあの人の声だったから。
『わぁ~こんにちは。君、鞘って言うのか』
女性は次にこう続けた。
「藤方先生。今日からこちらに通われる生徒さんをご案内してきました」
藤方と呼ばれる教師は「ありがとうございます」と礼を述べる。
声に加え、藤方という苗字に鞘はまさか......と胸の鼓動を高鳴らせた。手で胸を抑えてないと周りに胸のドキドキが聞こえてしまうのではないかと思うほどに。
女性が鞘に「蘇芳さん。こちらがあなたが在籍する事になるクラスの担任、藤方斗真先生です」と紹介する。
そして鞘は教師を見た。
(ああ......こんな事ってあるのでしょうか。もう2度とお目にかかれないと思っていましたのに)
藤方斗真は17年前、鞘の恋人だった男性である。当時通っていた高校の同級生で教師になる夢を抱いていた。
まさか、このような場所で再会するとは。しかも生徒と先生として。
(夢を叶えられたんですね......トマさん)
トマさん。鞘は彼をそう呼んでいた。
藤方先生改め斗真は長い髪を後ろにひとつ結びにしているが、当時はポニーテールだった。
17年経ち、大人の男性になったとはいえ、あの頃と変わらず優しい朗らかな表情は健在のようだ。
でも出会った当初、鞘は彼に軽薄な印象しか持てなかった。
そして斗真も鞘を見た。
「はじめまして。俺が今日から君が入る2年B組の担任、藤方斗真です。よろしく蘇芳鞘さん」
そう言った直後、斗真は「え、鞘......?」と名前をゆっくりつぶやいた。
鞘も一瞬ドキリとなる。だが、まさか目の前の高校生が恋人の鞘と同一人物とは斗真も気づく事はないだろうがヘンに目をつけられても良くないので、あまり斗真とは必要以上に接触を持たないようにしようとたった今決めた。
そう。17年前に行方がわからなくなった天葉鞘はもうどこにもいない。そのため斗真との事も終焉を迎えたのだ。
今、斗真の前にいる鞘は17年間の眠りから現実世界に復活し、第二の人生を歩み始めた17歳の超消滅士・蘇芳鞘であり一般生徒に過ぎない。
(私がやるべき事は一般生徒を演じつつトマさんの幸せを願う事です。超消滅士である事も隠しておかなければなりませんね)
それから、斗真の事を光琉、音羽にも話しておかねば。
その後、女性から鞘を引き継いだ斗真が靴箱から始まり、トイレや食堂、売店なども案内して回ってくれた。彼の話を必死に聞きながらも思い出が脳裏に蘇る事数回。
一番大切な瞬間が訪れようとしていた。そう、教室での自己紹介だ。
向かう道すがら斗真から尋ねられる。
「蘇芳って苗字、うちのクラスに蘇芳音羽という女子生徒がいるんだけど、関係者か何かなのかな?」
それに対し鞘はいとこだと言った。
「あ、じゃあ別のクラスにいる兄の光琉も?」
「はい。いとこです」
「やっぱり血縁者だったのか。蘇芳って珍しい苗字だからつながりがあるのかなって思ってたんだ」
そう。B組と聞いて音羽のいるクラスに入ると知った鞘は尚更恥ずかしい挨拶は出来ないと緊張してしまう。
そしてついにその瞬間が。
先に入った斗真に促され教室に入る鞘。教壇まで歩を進める間、クラスの生徒たちが自分を見ている事に気づきながら音羽の姿を確認すると多少気持ちが落ち着いてきた。
教壇に着くとクラスの生徒たちと見合う形となり、一方の斗真は黒板に白いチョークで「蘇芳鞘」と名前を書き、ふりがなもふった。
「今日から我がB組に新たな仲間が加わる事になった。では蘇芳、みんなに自己紹介を」
斗真に促され鞘は生徒たちに一礼した。
「皆さんおはようございます。今日から皆さんと一緒に大浦流高校に通う事となりました蘇芳鞘と申します。右も左もわからない身なので皆さんにご迷惑をおかけすると思いますがどうかよろしくお願い致します」
ここに女子高生・蘇芳鞘が誕生したのだった。
ちなみに鞘は事前に検査をしておりアレルギーは無しとの結果が出ている。光琉と音羽もアレルギー無しだが揃ってアクセサリーを身につけると100%どこかに失くしてしまうので日頃から身に着けないのだそうだ。
光琉と音羽がまだ天葉邸にいた時は前徳が運転する車で高校がある神明市まで送迎してもらっていたが、リアンがあるのは隣りの向塔市なので現在はバスで通学している。
今振り返ると、前徳の手をわずらわせずに済んだワケだから、そういう意味でも天葉邸を離れて正解だったと2人は思っている。
話を戻して。大浦流高校に到着すると、鞘は光琉、音羽の案内で来客受付に行き「おはようございます。本日からお世話になります天...蘇芳鞘です」と申し出た。すると受付の女性が事務所から出てきて「ようこそ大浦流高校へ。職員室までご案内します」と鞘を連れて行ってくれるようだ。「お2人とも、またあとで」と言い残して女性と去っていく叔母の後姿を光琉、音羽が見送った。
ちなみに、「天葉」ではなく「蘇芳」と苗字を変えているのは単に身バレされないため。
「蘇芳」は美咲の祖母であり当主であった局の旧姓なのだ。
彼女もまた嫁いだ身で主となったのだから相当の苦労があったに違いない。だからこそ半分しか天葉の血を引いていないと陰口を言われていた鞘に自分を重ねて彼女を守ってくれたのだろう。
さて。
鞘と共に職員室に着いた受付の女性は扉を引き「おはようございます」と言って中に入る。あとをついていく鞘も17年ぶりに職員室の雰囲気を感じていた。
やがて女性は、とあるデスクに座る人物に「おはようございます」と声をかける。
すると人物も「おはようございます」と女性に挨拶を返す。
(......え?)
鞘は人物の声を耳にした瞬間、体が固まった。
なぜならその声に聞き覚えがあったから。
(いえ、忘れることはない。忘れられるハズが...ありません)
それは結芽花と対面した時にも心に出てきたあの人の声だったから。
『わぁ~こんにちは。君、鞘って言うのか』
女性は次にこう続けた。
「藤方先生。今日からこちらに通われる生徒さんをご案内してきました」
藤方と呼ばれる教師は「ありがとうございます」と礼を述べる。
声に加え、藤方という苗字に鞘はまさか......と胸の鼓動を高鳴らせた。手で胸を抑えてないと周りに胸のドキドキが聞こえてしまうのではないかと思うほどに。
女性が鞘に「蘇芳さん。こちらがあなたが在籍する事になるクラスの担任、藤方斗真先生です」と紹介する。
そして鞘は教師を見た。
(ああ......こんな事ってあるのでしょうか。もう2度とお目にかかれないと思っていましたのに)
藤方斗真は17年前、鞘の恋人だった男性である。当時通っていた高校の同級生で教師になる夢を抱いていた。
まさか、このような場所で再会するとは。しかも生徒と先生として。
(夢を叶えられたんですね......トマさん)
トマさん。鞘は彼をそう呼んでいた。
藤方先生改め斗真は長い髪を後ろにひとつ結びにしているが、当時はポニーテールだった。
17年経ち、大人の男性になったとはいえ、あの頃と変わらず優しい朗らかな表情は健在のようだ。
でも出会った当初、鞘は彼に軽薄な印象しか持てなかった。
そして斗真も鞘を見た。
「はじめまして。俺が今日から君が入る2年B組の担任、藤方斗真です。よろしく蘇芳鞘さん」
そう言った直後、斗真は「え、鞘......?」と名前をゆっくりつぶやいた。
鞘も一瞬ドキリとなる。だが、まさか目の前の高校生が恋人の鞘と同一人物とは斗真も気づく事はないだろうがヘンに目をつけられても良くないので、あまり斗真とは必要以上に接触を持たないようにしようとたった今決めた。
そう。17年前に行方がわからなくなった天葉鞘はもうどこにもいない。そのため斗真との事も終焉を迎えたのだ。
今、斗真の前にいる鞘は17年間の眠りから現実世界に復活し、第二の人生を歩み始めた17歳の超消滅士・蘇芳鞘であり一般生徒に過ぎない。
(私がやるべき事は一般生徒を演じつつトマさんの幸せを願う事です。超消滅士である事も隠しておかなければなりませんね)
それから、斗真の事を光琉、音羽にも話しておかねば。
その後、女性から鞘を引き継いだ斗真が靴箱から始まり、トイレや食堂、売店なども案内して回ってくれた。彼の話を必死に聞きながらも思い出が脳裏に蘇る事数回。
一番大切な瞬間が訪れようとしていた。そう、教室での自己紹介だ。
向かう道すがら斗真から尋ねられる。
「蘇芳って苗字、うちのクラスに蘇芳音羽という女子生徒がいるんだけど、関係者か何かなのかな?」
それに対し鞘はいとこだと言った。
「あ、じゃあ別のクラスにいる兄の光琉も?」
「はい。いとこです」
「やっぱり血縁者だったのか。蘇芳って珍しい苗字だからつながりがあるのかなって思ってたんだ」
そう。B組と聞いて音羽のいるクラスに入ると知った鞘は尚更恥ずかしい挨拶は出来ないと緊張してしまう。
そしてついにその瞬間が。
先に入った斗真に促され教室に入る鞘。教壇まで歩を進める間、クラスの生徒たちが自分を見ている事に気づきながら音羽の姿を確認すると多少気持ちが落ち着いてきた。
教壇に着くとクラスの生徒たちと見合う形となり、一方の斗真は黒板に白いチョークで「蘇芳鞘」と名前を書き、ふりがなもふった。
「今日から我がB組に新たな仲間が加わる事になった。では蘇芳、みんなに自己紹介を」
斗真に促され鞘は生徒たちに一礼した。
「皆さんおはようございます。今日から皆さんと一緒に大浦流高校に通う事となりました蘇芳鞘と申します。右も左もわからない身なので皆さんにご迷惑をおかけすると思いますがどうかよろしくお願い致します」
ここに女子高生・蘇芳鞘が誕生したのだった。
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