18 / 22
第18話「トマさんと藤方先生」
しおりを挟む
かつての恋人と17年ぶりに再会した鞘。しかも彼は高校教師となっており、鞘が在籍する2年B組の担任でもあった。
鞘の自己紹介が終わると斗真がすかさず「苗字から気づいた者もいると思うが」と前置きして「蘇芳鞘さんは音羽のいとこだそうだ」と説明した。
すると生徒たちは「やっぱり」「そういえば音羽ちゃんの苗字も蘇芳だった」「あまり聞かない苗字だもんなぁ」「音羽さんの血縁者だったか」と驚く者、納得する者とさまざまだった。
すると男子が「ハーイ! 蘇芳鞘さんは彼氏いるんですかー?」とどさくさ紛れにこんな質問をしてきた。しかし斗真から「コラコラ」と待ったが入り「そういう質問は休み時間にしなさい」と言われて男子も「......ハーイ」と不本意だろうが素直に聞き入れた。
休み時間になると途端に鞘の席をクラスメイトが囲んだ。
先程の男子生徒が「休み時間なんで質問に答えて下さい。彼氏はいますか?」と聞いてきたので鞘は「彼氏はいません」と返すと「じゃあ俺、彼氏に立候補します」と名乗りをあげたのでそばにいた音羽から「皆己くん私にも同じ事言ってなかった?」と指摘されてマズっという表情をしたので図星なのだろう。
実際、この皆己という生徒、イケメンではあるが気に入った女の子には必ず声かけ、更に彼氏の有無を尋ね、いないと知ると彼氏に立候補するのだ。
他の男子からも「お前はそのクセをどうにかしないとな」と言われる始末であった。
そんなやりとりを聞きながら鞘は
(そういえば......トマさんも女の子と見るやいなや、声をかけていました)と斗真と出会った当時を思い出していた。そういう部分があったため、斗真に軽薄な印象を抱いていたのだ。
斗真とは必要以上に接触しないと決めた鞘ではあったが、そうは言っても心から愛した人。気がつくと斗真を目で追ってしまっていた。
無事放課後を迎え、あとは帰るだけとなったが到底帰り道を覚えられていない鞘はひとりで帰る事は出来ず、用事があると言う音羽を待っていた(ちなみに光琉は友人が入っている部活の助っ人に出かけた。運動神経抜群の彼はこうして助っ人に駆り出される事もしばしば。今回は断ろうと思ったのだが「ど~してもお前の力が必要なんだぁぁぁ」と泣きつかれた末、音羽に鞘の事を託していったのだ)。
その時だった。斗真が鞘の前に現れたと思ったら、ある男子生徒と女子生徒が彼のとこへ駆け寄るなり「先生! 俺たちお付き合いする事になりました」と言ったのだ。斗真は「お、そうかそうか。おめでとう」と2人を祝福。
「藤方先生が不器用でも誠意をもって気持ちを伝えろって背中を押してくれたおかげだよ」
どうやら男子生徒は人に気持ちを伝える事が得意ではないようで斗真に打ち明けたところ上記のような言葉を言われたらしい。
鞘はそこで思い出す。藤方斗真は「コミュ力オバケ」という異名をとるほど(女の子好きではあるが)男女問わず接する事が出来るは人だったなと。
だから教師となった今でも生徒たちに慕われているのは当然の事であった。
それから「でもお前たちはまだ高校生なんだから節度を持ったお付き合いをしろよ」と釘を差すことも忘れない。
わかったよと答えた2人の生徒は「じゃあね先生~」「さようなら」と言って仲良く帰っていった。
斗真も「気をつけて帰れよ~」と2人に手を振る。そのやりとりを眺めていた鞘はそこでやめておけばよかったのだ。
やめずにそのまま眺めていたから手を振り終えた斗真と目が合ってしまった。
当然「蘇芳、初日お疲れさん」と言って駆け寄ってきた斗真を無視するワケにもいかず鞘は腹を括った。
「藤方先生、ありがとうございます」
「どうだ、クラスのみんなは?」
「はい。皆さんとても優しくして下さいます」
「そうかそうか~よかった」
「校則にもありましたが、皆さん思い思いにアクセサリーやピアス、イヤリングをつけてきてますね」
「ああ。大浦流は自由な校則で有名だからな。最初の頃はずいぶん他の高校から文句を言われたんだ。この高校は不良学生を作るつもりなのかって」
「アクセサリー類をつけるだけでイコール不良学生になるなどと......まだそのような古い考え方をされる方がいらっしゃるのですね」
「少なくとも毎朝校門に風紀委員が立って身につけてくるアクセサリーやピアスに宝石がないかチェックしてるけどな」
「それでも宝石のついたものを身につけて登校してきた生徒はいらっしゃったのですか?」
「チラホラはな」
「そうですか」
「蘇芳だって身につけたかったらつけてきていいんだぞ」
「私はダメです。身につけてもすぐに失くしてしまうので」
鞘がそう言うと斗真は「2人と同じ事言うんだな」とつぶやいた。
「2人......とは?」
「君のいとこである双子だよ。2人も身につけても失くしちゃうって言ってたからさ」
「あ…そうですね」
元は双子の母であり鞘の母親違いの姉でもある葵がアクセサリー類を身につけても失くしてしまうクセを持っており、双子は完全に似てしまったというワケだ。鞘は自分も葵と似てる部分があって嬉しく思ったのを覚えている。
しばらく沈黙が続いた後、斗真が「......あのさ、蘇芳」と口を開く。
「君の❝さや❞って名前、漢字表記は刀の鞘なんだな」
鞘は斗真のこの発言にドキリとして内心あわてながらも「......私の両親が刀好きでしたので」とごまかした。
「そうだったのか~。ごめんな妙な事聞いて......」
(とっさにごまかしましたが信じて下さったようですね。逆に謝られてしまいましたし)と鞘は心でホッと安堵した。
「いいえ気になさらないで下さい。私も珍しいと思いますし」
「そう言ってもらえると助かるよ。実は......俺の知り合いにもいたんだ、君と同じ名前で刀の鞘が漢字表記だったのが」
再び鞘の胸がドキンと高鳴る。そんな事など知る由もない斗真は更に続ける。
「今から17年前に行方がわからなくなった女性でさ、生きているのかどうかもわからないんだけど」
窓の外を遠い目で眺めながら話す斗真に鞘は「なぜ私にそのようなお話を?」と平静を装って尋ねた。
すると斗真は鞘に視線を向けて言った。
「なんか蘇芳になら話しても大丈夫っていうか......聞いてもらえるって思えたんだ」と。
鞘の自己紹介が終わると斗真がすかさず「苗字から気づいた者もいると思うが」と前置きして「蘇芳鞘さんは音羽のいとこだそうだ」と説明した。
すると生徒たちは「やっぱり」「そういえば音羽ちゃんの苗字も蘇芳だった」「あまり聞かない苗字だもんなぁ」「音羽さんの血縁者だったか」と驚く者、納得する者とさまざまだった。
すると男子が「ハーイ! 蘇芳鞘さんは彼氏いるんですかー?」とどさくさ紛れにこんな質問をしてきた。しかし斗真から「コラコラ」と待ったが入り「そういう質問は休み時間にしなさい」と言われて男子も「......ハーイ」と不本意だろうが素直に聞き入れた。
休み時間になると途端に鞘の席をクラスメイトが囲んだ。
先程の男子生徒が「休み時間なんで質問に答えて下さい。彼氏はいますか?」と聞いてきたので鞘は「彼氏はいません」と返すと「じゃあ俺、彼氏に立候補します」と名乗りをあげたのでそばにいた音羽から「皆己くん私にも同じ事言ってなかった?」と指摘されてマズっという表情をしたので図星なのだろう。
実際、この皆己という生徒、イケメンではあるが気に入った女の子には必ず声かけ、更に彼氏の有無を尋ね、いないと知ると彼氏に立候補するのだ。
他の男子からも「お前はそのクセをどうにかしないとな」と言われる始末であった。
そんなやりとりを聞きながら鞘は
(そういえば......トマさんも女の子と見るやいなや、声をかけていました)と斗真と出会った当時を思い出していた。そういう部分があったため、斗真に軽薄な印象を抱いていたのだ。
斗真とは必要以上に接触しないと決めた鞘ではあったが、そうは言っても心から愛した人。気がつくと斗真を目で追ってしまっていた。
無事放課後を迎え、あとは帰るだけとなったが到底帰り道を覚えられていない鞘はひとりで帰る事は出来ず、用事があると言う音羽を待っていた(ちなみに光琉は友人が入っている部活の助っ人に出かけた。運動神経抜群の彼はこうして助っ人に駆り出される事もしばしば。今回は断ろうと思ったのだが「ど~してもお前の力が必要なんだぁぁぁ」と泣きつかれた末、音羽に鞘の事を託していったのだ)。
その時だった。斗真が鞘の前に現れたと思ったら、ある男子生徒と女子生徒が彼のとこへ駆け寄るなり「先生! 俺たちお付き合いする事になりました」と言ったのだ。斗真は「お、そうかそうか。おめでとう」と2人を祝福。
「藤方先生が不器用でも誠意をもって気持ちを伝えろって背中を押してくれたおかげだよ」
どうやら男子生徒は人に気持ちを伝える事が得意ではないようで斗真に打ち明けたところ上記のような言葉を言われたらしい。
鞘はそこで思い出す。藤方斗真は「コミュ力オバケ」という異名をとるほど(女の子好きではあるが)男女問わず接する事が出来るは人だったなと。
だから教師となった今でも生徒たちに慕われているのは当然の事であった。
それから「でもお前たちはまだ高校生なんだから節度を持ったお付き合いをしろよ」と釘を差すことも忘れない。
わかったよと答えた2人の生徒は「じゃあね先生~」「さようなら」と言って仲良く帰っていった。
斗真も「気をつけて帰れよ~」と2人に手を振る。そのやりとりを眺めていた鞘はそこでやめておけばよかったのだ。
やめずにそのまま眺めていたから手を振り終えた斗真と目が合ってしまった。
当然「蘇芳、初日お疲れさん」と言って駆け寄ってきた斗真を無視するワケにもいかず鞘は腹を括った。
「藤方先生、ありがとうございます」
「どうだ、クラスのみんなは?」
「はい。皆さんとても優しくして下さいます」
「そうかそうか~よかった」
「校則にもありましたが、皆さん思い思いにアクセサリーやピアス、イヤリングをつけてきてますね」
「ああ。大浦流は自由な校則で有名だからな。最初の頃はずいぶん他の高校から文句を言われたんだ。この高校は不良学生を作るつもりなのかって」
「アクセサリー類をつけるだけでイコール不良学生になるなどと......まだそのような古い考え方をされる方がいらっしゃるのですね」
「少なくとも毎朝校門に風紀委員が立って身につけてくるアクセサリーやピアスに宝石がないかチェックしてるけどな」
「それでも宝石のついたものを身につけて登校してきた生徒はいらっしゃったのですか?」
「チラホラはな」
「そうですか」
「蘇芳だって身につけたかったらつけてきていいんだぞ」
「私はダメです。身につけてもすぐに失くしてしまうので」
鞘がそう言うと斗真は「2人と同じ事言うんだな」とつぶやいた。
「2人......とは?」
「君のいとこである双子だよ。2人も身につけても失くしちゃうって言ってたからさ」
「あ…そうですね」
元は双子の母であり鞘の母親違いの姉でもある葵がアクセサリー類を身につけても失くしてしまうクセを持っており、双子は完全に似てしまったというワケだ。鞘は自分も葵と似てる部分があって嬉しく思ったのを覚えている。
しばらく沈黙が続いた後、斗真が「......あのさ、蘇芳」と口を開く。
「君の❝さや❞って名前、漢字表記は刀の鞘なんだな」
鞘は斗真のこの発言にドキリとして内心あわてながらも「......私の両親が刀好きでしたので」とごまかした。
「そうだったのか~。ごめんな妙な事聞いて......」
(とっさにごまかしましたが信じて下さったようですね。逆に謝られてしまいましたし)と鞘は心でホッと安堵した。
「いいえ気になさらないで下さい。私も珍しいと思いますし」
「そう言ってもらえると助かるよ。実は......俺の知り合いにもいたんだ、君と同じ名前で刀の鞘が漢字表記だったのが」
再び鞘の胸がドキンと高鳴る。そんな事など知る由もない斗真は更に続ける。
「今から17年前に行方がわからなくなった女性でさ、生きているのかどうかもわからないんだけど」
窓の外を遠い目で眺めながら話す斗真に鞘は「なぜ私にそのようなお話を?」と平静を装って尋ねた。
すると斗真は鞘に視線を向けて言った。
「なんか蘇芳になら話しても大丈夫っていうか......聞いてもらえるって思えたんだ」と。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる