超消滅士・蘇芳鞘の二度目の人生譚

心響

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第19話「恋の勘違い」

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 部活の助っ人として運動系の部に参加していた光琉は休憩の号令がかかるとベンチに腰を下ろした。
 季節は夏。水分補給は必須だ。
 そこへ光琉に助っ人を頼んだ友人・松下柊まつしたしゅうがやってきて「急に頼んで悪かったな。助かったよ」と謝ってきた。そこには「自分が頼まなければ初日で帰り道がまだ覚えられない転入生の鞘が困る事はなかっただろう」という意味もこめられていた。
 だから光琉は「いいんだよ」と逆になぐさめた。
「俺がいなくても音羽がいるからさ」
「ああ、音羽さんか」
「用が出来たから一緒に帰れないって言ったら私に任せて! って意気揚々としてたから」
「頼もしい妹さんだね」
「うーん。頼もしいって言うかなんて言うか......」
 今の音羽を動かしてるのは鞘への特別な想いである事を知ってる光琉としては、よかったのかそうでないのか。複雑なところではあった。
 光琉と柊が話をしているところに他の複数の部員がやってきて一斉に鞘の事を尋ねてくる。
「B組に転入してきた女の子、光琉のいとこなんだって?」
「なぁなぁ、彼女恋人いるのかな?」
「どうやら彼女、お前と一緒に住んでるらしいじゃん!」
「えー! うらやましい奴め」
 光琉は質問された順に返答する。
「その通り。彼女は俺と音羽のいとこだよ。恋人の有無は知らない。あのな、俺と一緒に住んでるって言い方は訂正してくれ。シェアハウスなんだから俺はもちろん音羽もいるし他にも住人はいるんだから」
 光琉からシェアハウスの話が出ると、部員のひとりがここに一度訪れた事があるらしく「あー、あのグラマラスなお姉さんは元気か? 確か、結芽花さんだっけ?」と発言してきた。
「結芽花さん? 元気だよ」
 すると他の部員もグラマラスなお姉さんというワードに食いつき「なんだなんだ」と面識のある部員を問い詰める。
 彼から結芽花の話を聞くやいなやまた揃って「光琉......羨ましい奴」と悔しそうに言い放つ。
「音羽ちゃんやB組の転入生と暮らしてるだけでも羨ましいのに、そんな美人なお姉さんともひとつ屋根の下で暮らしてるなんて」
 これに対しては光琉から文句が出る。
「相変わらずお前たちの妄想は気持ち悪いよな。音羽は俺の妹なんだから一緒に暮らしたっておかしくないっての!」
 こんなふうに言い返すのも今回が初めてではないのでドッと疲れが出る。
 だからつい心の中で(コイツら1回雷鳴掌くらわしてやろうかな)などと物騒な事をつぶやいてしまう。
 唯一柊だけは「お疲れさん」と労ってくれるのだ。
(ああ、まだ部活終わってないのに。しばらく動きたくない気分)
 光琉のつぶやきはスポーツドリンクと一緒に喉を通り抜けていった。



 一方、用を済ませた音羽は現在足を止めて視界の先に映る光景を眺めていた。

 それは、鞘が斗真と話をしている光景だった。

(鞘ちゃん。藤方先生と......楽しそうに話をしてる)
 音羽にはそう見えるらしい。しかも彼女は鞘が教室でも斗真を目で追っていた事に気づいていた。
 なぜなら音羽も鞘を見ていたから。
 彼女の心にどす黒い感情があふれる。
 嫉妬という名の感情が。
(鞘ちゃんは......藤方先生のような男性が好みのタイプなのかな。大人の男性が...)

 その時、鞘が音羽の存在に気づいた。斗真に音羽の到着を告げた鞘は「さようなら藤方先生」と頭を下げて音羽の元へと向かい合流した。
 その姿を見送っていた斗真は「蘇芳も音羽も、また明日な!」と手を振るが、一方の音羽はあふれてしまった嫉妬を消す事は出来ずにあろうことか斗真を睨みつけてしまった。
(え?! 俺、もしかして睨まれてる......のか?!)
 今の今まで生徒から睨まれた事などない斗真はワケがわからず困惑するばかりだ。
(俺、音羽を怒らせるような事をしちゃったのか?)
 あまりのショックに斗真は鞘と音羽が去ってもその場から動けなかった。


 帰途についたものの隣でだんまり状態の音羽に鞘は恐る恐る声をかける。
「用は終えられた......のですよね。今こうして家に向かって帰っているのですから」
 なんだか自分で質問して途中で納得しちゃったが、鞘自身なぜ音羽がこのような状態なのかを考え始めた。
(戻ってきた時にはすでに今の状態だったのですから......!! ああ、そうか。そういう事でしたか!! )

 そう納得して出た結論、それは。

(音羽さんはトマさんの事を好いておられるのですね!!)

 ーーー音羽が聞いたらどんな反応を示すのやら。
 
 しかし、音羽の本心など知らない鞘は自信満々に話しかける。
「申し訳ありません音羽さん。私全く気づかずにいて......」
 そして藤方先生と言おうとした時だ。だんまりだった音羽が突然顔をあげ
「鞘ちゃんって藤方先生みたいな大人の男性がタイプなの?」と逆に尋ねてきたのだ。更に、教室でも鞘が藤方先生の事を見ていたとも彼女に指摘されて鞘は内心(失敗しました。私とした事が)と後悔した。
 この時点でも音羽は斗真を慕っていると思い込んでる鞘。だが、ここにきてウソはつけない。心から愛した人だから。
「......た、確かに、藤方先生は好みのタイプ......なんですよね。はい」
「......!!」
 鞘からの返答に音羽のショックは計り知れない。でも鞘には(そのようにショックを受けられる程にトマさんを想っていらっしゃるなんて)というふうに映っていた。
「あ、ですがそれは昔の話と言いますか、今から17年前の事ですから今も想っていますが、気持ちを伝える事はないと言うか......」
「......鞘ちゃん、言ってる意味が」
「そうですよね。分かりませんよね」
 鞘としては斗真との事は音羽や光琉たちには話さなくてもいいと思っていた。個人的な事だから、彼らを巻き込む必要などないと。
 だが、音羽が斗真に恋をしてると知った今、正直に話すべきだと考え直したのだ。
 つまり、話さずにおこうと思ったのなら斗真を見続けるという行為を我慢すればよかったのだ。それが出来ず音羽に見られていたのは明らかに自分のミスであると鞘は反省した。

 それも含めて、鞘は音羽たちリアンの住人に斗真との事を話そうと決意し、次の言葉を待っている音羽に話し始める。

「藤方先生は......私の恋人だったのです、今から17年前までは。私はあの方をトマさんと呼んでいました」
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