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第22話「思い出と先生との遭遇」
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とある休日。鞘はひとりで地元・光塔市の中心街へとやってきた(ちなみに大浦流高校があるのは隣りの神明市である)。
鞘がリアンに住むようになり、更に大浦流高校に通うようになって一ヶ月が経過。ようやく道も覚えてきたので初めてひとりで外出したのだ。
そんな彼女を出かける寸前まで心配したのが音羽だった。
「もし帰り道がわからなくなったらスマホに連絡してね!! 必ず迎えに行くから!!」
そう言って鞘の手を強く握った。この事で鞘の中に余裕が生まれたので結果オーライか。
出かけた目的は特にはなかった。結芽花からはいくらかおこづかいをもらったが、いずれは自分でこづかいくらいは稼がないととは思ってる。
今はいろいろ見て回ったので歩き疲れたからとベンチに座り、自販機で買ったペットボトルの中身で喉の渇きを潤してるところだ。
ふと周りの行き交う様子を眺めてるとカップルを何組か見かける。同時に斗真とデートした時の思い出が脳裏に蘇ってきた。
(デートと言っても、恋人になる前からトマさんは事あるごとに『どこか遊びに行こーよー』と誘ってきて私を連れ出していましたから、最初の頃はデートではなかったですね。やはり......恋人になってからでしょうか。目に映るものが全て違って見えるようになりましたから不思議です)
その時だ。鞘が思い出にふけっているのを邪魔するかのように2人の男性が話しかけてきた。おそらく高校生と思われた。
「君、ひとり?」
「そうですが」
「よかった。君のようなカワイイ女の子がひとりでなんてラッキー。堂々とデートに誘える」
「......」
こういうセリフを斗真も言っていた気がしたが、もちろん鞘が心を許すハズがない。
「私は間に合ってますのでお引き取り下さい」と断ってみたものの...... 。
「そんな事言わずに一緒に行こうよ」
「女の子がひとりでいるなんて寂しいじゃん」
「俺らと楽しもうよ」と彼らも引き下がってはくれない。
(......しつこいですね)
ハアっとため息をついた鞘。突然ベンチから立ち上がると2人に顔を近づけた。喜ぶ表情を見せた彼らだが、鞘と目を合わせた瞬間、表情が消えた。
鞘は2人の目を見つめながら唱える。
「あなたがたはこのままお家にまっすぐお帰り下さい......よろしいですね」
鞘の目に黄金色のオーラが浮かぶと、2人は「はい。まっすぐ帰ります」と言うなり鞘から離れていった。
「お気をつけて」
密かに、相手を操る術を使ったのだが通り過ぎる誰もが気づくワケもない。
その次にまた鞘に声をかけてきた人物が。しかし今度は鞘の知ってる人だった。
「樫原先生」
「やっぱり蘇芳鞘さんだった」
樫原華音。大浦流高校の女性教師で光琉がいるクラスの担任でもある。
以前、彼女が男に絡まれているところを鞘が助けたという繋がりがある。
「あの時は本当にありがとう」
「いえ」
「蘇芳さん、男の子2人に声をかけられて迷惑そうにしてたでしょ。止めに入ろうとしたら離れていったからホッとしたわ」
「ひとり? と聞かれたのでおつき合いしてる方と待ち合わせしてますとお答えしたら去っていかれました。本当はひとりで来たんですけどね」
まさかバカ正直に「私は超消滅士で彼らに術をかけたんです」なんて話せるワケもない。
「樫原先生は今日はどうなさったんですか?」
「私も今日はひとりでお出かけ」
「そうだったんですね」
「お隣りいいかしら?」
「はい。どうぞ」
鞘の隣りに座った華音はトートバッグからマイボトルを取り出すと一口飲んだ。
「そういえば、蘇芳さんって藤方先生が担当してるクラスにいらっしゃるのよね?」
「はい」
「藤方先生、フレンドリーなとこがある方でしょ?」
「はい。とても気さくな先生ですよね」
鞘がそう返すと華音は何とも言えない嬉しそうな表情を浮かべた。
(......あれ? この感覚。もしかして、この方......トマさんの事が......)
鞘もそうだから気づいたが、あえて聞かなかった。
「でもね、当たり前な事ではあるけど怒る時はちゃんと怒るの。前に藤方先生のクラスの男子生徒で、友だちの背中を押して階段から落とした生徒がいたの。落ちた生徒は無事だったから事なきを得たんだけど、落とした生徒が『ノリで押した』って言ったら先生怒ってね。『ふざけるな!! 今回は運良く落ちた生徒にケガがなくてよかったけど、万が一大ケガしたり、打ちどころが悪かったら命さえどうなっていたのかわからないんだぞ!! 助かったとしても後遺症が残って日常生活が送れなくなってたかもしれない。お前、そういう結果になったとして、友だちにケガを負わせた罪を一生背負っていく覚悟があるのか?!』って」
「藤方先生が......」
「先生から喝を入れられたその生徒は泣き出して友だちに謝ったそうよ。お前が無事でよかった。本当にごめんって」
「よかったです。生徒さん同士の友情も壊されずに済んだのですから」
「本当に」
そこで話が終わると華音が「鞘さん、お昼はまだ?」と尋ねてきた。鞘がまだですと返すと「じゃあランチに行かない? 美味しいお店を知ってるの」と誘ってきた。
「......あの。同じ学校の教師と生徒がランチをご一緒するというのは......」
「うん。これがお互いに男女だったらマズイわよね。でも私は女教師、蘇芳さんは女子生徒、つまりはどちらも女同士なので問題はないわ」
「まあ、そうですよね」
「じゃあ行こう!! レッツゴー!!」
鞘も女同士なのだから咎められはしないですよね、と思いながら華音のあとをついていくのだった。
結果的に鞘にとって、華音とのランチは非常に楽しいものとなった。斗真の話をする時の華音の瞳は一層キラキラと輝いて見えて、本当に斗真の事が好きなのだなと鞘は感じた。
ただ、リアンに帰宅後、華音とバッタリ会ってランチをしてきたと光琉たちに話した鞘は、不機嫌になった音羽にいつまでも頭の上にはてなマークを浮かべる事となった。
鞘がリアンに住むようになり、更に大浦流高校に通うようになって一ヶ月が経過。ようやく道も覚えてきたので初めてひとりで外出したのだ。
そんな彼女を出かける寸前まで心配したのが音羽だった。
「もし帰り道がわからなくなったらスマホに連絡してね!! 必ず迎えに行くから!!」
そう言って鞘の手を強く握った。この事で鞘の中に余裕が生まれたので結果オーライか。
出かけた目的は特にはなかった。結芽花からはいくらかおこづかいをもらったが、いずれは自分でこづかいくらいは稼がないととは思ってる。
今はいろいろ見て回ったので歩き疲れたからとベンチに座り、自販機で買ったペットボトルの中身で喉の渇きを潤してるところだ。
ふと周りの行き交う様子を眺めてるとカップルを何組か見かける。同時に斗真とデートした時の思い出が脳裏に蘇ってきた。
(デートと言っても、恋人になる前からトマさんは事あるごとに『どこか遊びに行こーよー』と誘ってきて私を連れ出していましたから、最初の頃はデートではなかったですね。やはり......恋人になってからでしょうか。目に映るものが全て違って見えるようになりましたから不思議です)
その時だ。鞘が思い出にふけっているのを邪魔するかのように2人の男性が話しかけてきた。おそらく高校生と思われた。
「君、ひとり?」
「そうですが」
「よかった。君のようなカワイイ女の子がひとりでなんてラッキー。堂々とデートに誘える」
「......」
こういうセリフを斗真も言っていた気がしたが、もちろん鞘が心を許すハズがない。
「私は間に合ってますのでお引き取り下さい」と断ってみたものの...... 。
「そんな事言わずに一緒に行こうよ」
「女の子がひとりでいるなんて寂しいじゃん」
「俺らと楽しもうよ」と彼らも引き下がってはくれない。
(......しつこいですね)
ハアっとため息をついた鞘。突然ベンチから立ち上がると2人に顔を近づけた。喜ぶ表情を見せた彼らだが、鞘と目を合わせた瞬間、表情が消えた。
鞘は2人の目を見つめながら唱える。
「あなたがたはこのままお家にまっすぐお帰り下さい......よろしいですね」
鞘の目に黄金色のオーラが浮かぶと、2人は「はい。まっすぐ帰ります」と言うなり鞘から離れていった。
「お気をつけて」
密かに、相手を操る術を使ったのだが通り過ぎる誰もが気づくワケもない。
その次にまた鞘に声をかけてきた人物が。しかし今度は鞘の知ってる人だった。
「樫原先生」
「やっぱり蘇芳鞘さんだった」
樫原華音。大浦流高校の女性教師で光琉がいるクラスの担任でもある。
以前、彼女が男に絡まれているところを鞘が助けたという繋がりがある。
「あの時は本当にありがとう」
「いえ」
「蘇芳さん、男の子2人に声をかけられて迷惑そうにしてたでしょ。止めに入ろうとしたら離れていったからホッとしたわ」
「ひとり? と聞かれたのでおつき合いしてる方と待ち合わせしてますとお答えしたら去っていかれました。本当はひとりで来たんですけどね」
まさかバカ正直に「私は超消滅士で彼らに術をかけたんです」なんて話せるワケもない。
「樫原先生は今日はどうなさったんですか?」
「私も今日はひとりでお出かけ」
「そうだったんですね」
「お隣りいいかしら?」
「はい。どうぞ」
鞘の隣りに座った華音はトートバッグからマイボトルを取り出すと一口飲んだ。
「そういえば、蘇芳さんって藤方先生が担当してるクラスにいらっしゃるのよね?」
「はい」
「藤方先生、フレンドリーなとこがある方でしょ?」
「はい。とても気さくな先生ですよね」
鞘がそう返すと華音は何とも言えない嬉しそうな表情を浮かべた。
(......あれ? この感覚。もしかして、この方......トマさんの事が......)
鞘もそうだから気づいたが、あえて聞かなかった。
「でもね、当たり前な事ではあるけど怒る時はちゃんと怒るの。前に藤方先生のクラスの男子生徒で、友だちの背中を押して階段から落とした生徒がいたの。落ちた生徒は無事だったから事なきを得たんだけど、落とした生徒が『ノリで押した』って言ったら先生怒ってね。『ふざけるな!! 今回は運良く落ちた生徒にケガがなくてよかったけど、万が一大ケガしたり、打ちどころが悪かったら命さえどうなっていたのかわからないんだぞ!! 助かったとしても後遺症が残って日常生活が送れなくなってたかもしれない。お前、そういう結果になったとして、友だちにケガを負わせた罪を一生背負っていく覚悟があるのか?!』って」
「藤方先生が......」
「先生から喝を入れられたその生徒は泣き出して友だちに謝ったそうよ。お前が無事でよかった。本当にごめんって」
「よかったです。生徒さん同士の友情も壊されずに済んだのですから」
「本当に」
そこで話が終わると華音が「鞘さん、お昼はまだ?」と尋ねてきた。鞘がまだですと返すと「じゃあランチに行かない? 美味しいお店を知ってるの」と誘ってきた。
「......あの。同じ学校の教師と生徒がランチをご一緒するというのは......」
「うん。これがお互いに男女だったらマズイわよね。でも私は女教師、蘇芳さんは女子生徒、つまりはどちらも女同士なので問題はないわ」
「まあ、そうですよね」
「じゃあ行こう!! レッツゴー!!」
鞘も女同士なのだから咎められはしないですよね、と思いながら華音のあとをついていくのだった。
結果的に鞘にとって、華音とのランチは非常に楽しいものとなった。斗真の話をする時の華音の瞳は一層キラキラと輝いて見えて、本当に斗真の事が好きなのだなと鞘は感じた。
ただ、リアンに帰宅後、華音とバッタリ会ってランチをしてきたと光琉たちに話した鞘は、不機嫌になった音羽にいつまでも頭の上にはてなマークを浮かべる事となった。
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