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第21話「美咲・・・超消滅士の力を持たぬ者」
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*残酷表現あり。
ある日の天葉邸にて。
「美咲さま!! おられますか?!美咲さま!!」
美咲の部屋にひとりの男性・蘇芳晴明が怒りの表情でやってきた。美咲の「鞘にもこちらに住んでもらいたい」という案に反対し、自分たちにはもう超消滅士は必要ないので鞘にいては困ると異を唱えた一族のひとりでもあった。
美咲は読書中だった本をパタンと閉じて晴明を迎える。
「どうかしましたか?」
「どうもこうもありません。聞きましたよ。あの疫病神の女に蘇芳を名乗る事を許したそうですね」
「疫病神? 誰の事ですか、それは?」
「決まってるでしょう! 天葉鞘の事です!!」
「......言葉を慎みなさい。彼女は17年前、天葉のために戦ってくれた功労者のひとりなのですよ」
「功労者ですと? 敵の攻撃をその身に受け戦線離脱し、凶星にまんまとさらわれた失敗者が功労者とは、片腹痛いというものですよ、美咲さま!」
「敵の攻撃を受けたのも一族の者をかばったためです」
「理由はどうであれ結果があのようでは、あの女を天葉の者とは認めるわけにはまいりませんな!」
何を言っても目の前の男は鞘を否定したいようだ。ゆっくりと首を横に振る美咲に晴明は問いただす。
「なぜです? なぜあの女にまで蘇芳を名乗る事を許したのですか? 事もあろうに我らと同じ名字を...... !」
晴明からの問いに美咲は「当たり前な事を聞かないで」という意味を含めながら返答する。
「彼女も天葉一族の人間だからです。それともうひとつ。お祖母さまから将来鞘さんにも蘇芳と名乗らせるようにと頼まれていたからです。鞘さんを天葉邸に住まわせないというあなたがたの意見に私が従ったのは、あくまでも私が彼女を住まわせたいという案が私個人のものであったからです。しかし、蘇芳を名乗らせる事だけはお祖母さまの願いだったのですから、いくらあなたが反対なさってもこれだけはゆずれませんよ。それとも、晴明さんはお祖母さまのご意向を否定なさるおつもりですか?」
晴明は何も言えなかった。死しても局の存在は今なお大きいからだ。
美咲自身も「自分はお祖母さまの代行者である」と言い切るくらいだ。
(この忌々しい、生意気な小娘が......!)
そう。局と違い、晴明の心中には孫の美咲を敬う気持ちなどなかった。
その瞬間、彼の中に邪悪な考えが浮かび上がる。
(そうだ。今ここにいるのは俺のみ。この小娘に何が起ころうともバレる事はない。そう......たとえ俺がこの娘を殺したとしてもだ!!)
晴明は口元にうっすら笑みを浮かべると手のひらに力をため始めた。そして目には黄金色のオーラが。
そして晴明は言い放つ。
「美咲さま、何をなさるのです! 突然刀を握られて......。お気をしっかり持って下さい!!」
言葉は美咲を気遣い、行動はそれに反して力を美咲へと放ったのだ。
晴明の中に浮かんだ策略。それは、美咲が乱心して刀を握り、自分を襲おうとしたのでとっさに力を放ってしまった。結果、美咲は死亡してしまったが、これは正当防衛だと言い、彼女に代わって天葉のトップに立つ、というものだった。
表向きは超消滅士など必要ない。これからは平和に生きていきたいと一族の皆の意見に賛同しておきながら、晴明の本心は天葉を己の意のままにしたいという野望があったのだ。
更に、自分がトップに君臨したら、平和に過ごしたいと思ってる一族を抹殺し、新たな天葉を築こうと考えている。
「天葉は17年前に滅んだ方がよかった」と言う美咲とは意見が似ているが、一族の者たちに嘆きながらも天葉を守ろうとする美咲と天葉を崩壊へと辿らせる晴明という時点で全く違っている。
晴明から放たれた力は美咲へと向かい、爆発が起こった。ちなみにこの部屋でたてられる物音は外には聞こえない。晴明がこの部屋自体に結界を張ったからだ。
(美咲は超消滅士ではない。俺の力を受けてはひとたまりもないハズ。これで俺が天葉のトップに......)
ニヤリとした晴明の表情が一気に驚きのものへと変わった。
なぜなら、爆発に包まれたハズの美咲が煙の向こうから姿を現したからだ。
「なっ......そ、そんな! バカな!!」
驚愕してる晴明に対し、美咲はケロリとしており、服についたホコリをはたくぐらいの余裕があった。
「申し訳ありませんが、私に物理攻撃は通用しませんよ」
晴明は初耳だ。
「何を言っている。あなたは超消滅士の力を持たない普通の人間ではありませんか! それなのに俺の攻撃をその身に受けて何ともないなど......」
「確かに私は超消滅士の力は持ってはいません。それは私が受け継いだもう一つの血が天葉の血よりも濃かったからなのでしょうね」
「もう一つの血?」
「私は天葉一族の父と残虐士の母の間に生まれたのです」
「ざ、残虐士......」
晴明は知っていた。
残虐士。法では裁かれずのうのうと生きている罪人を残虐な方法で殺していく暗殺一族。彼らには物理攻撃は無効であり、超消滅士とは違う意味で恐れられている戦士なのだ。
この事実は局しか知らないと美咲は言う。
美咲が残虐士だと知った晴明は「あーあ」と開き直った感の声を発する。
「おまえも17年前に殺しておくべきだったな」と。
美咲が何を言ってるのだという表情をしているので晴明は更に続ける。
「17年前、天葉一族が魔物に襲われた事件は凶星と、この俺が計画したものだったんだよ」
「......そうだったのですか」
「凶星は天葉鞘を手に入れる事が目的だったからな。彼女が瀕死の重傷を負ったのを逆手に取った凶星は天葉鞘を拉致してそのまま行方をくらましたが......まさか自分が利用していた女に喰われるなんてな。鞘を手に入れようと焦った凶星のミスだな」
嘲笑う晴明。だがその表情がやがて恐怖に変わる事になる。
「そう。そうですか。つまり、あなたもあの事件の首謀者だったワケですね」
美咲はそうつぶやくと両手の中に光るものを出現させた。やがてそれは十字の形となり、美咲がそれを放り投げると十字架へと変化した。
「......天葉晴明。今から私があなたを裁きます」
「裁くだと? おまえのような娘が? 俺を?」
「言ったはずですよ。私は残虐士の血が濃いのだと」
それを合図かのように十字架が晴明の背後にそびえ立ち、彼を磁石のように磔にした。
「な、何だ? いったいこれは!!」
「ですから裁くのですよ、あなたを」
この時点でようやく晴明は自分の身の危険を感じ始めた。
「私はね晴明さん。悔しかったのです。あの事件の首謀者だった凶星に復讐が出来なくなってしまった事を。ですが、あなたがあの者と共犯であると告白してくれた事で私のこの悔しさと怒りはようやく昇華出来そうです。晴明さん。あなたへ復讐する事によって」
「ふ、復讐?」
「感謝します晴明さん。そして、その身に思う存分受けていただきます。あの事件によって一族を失った私の悲しみと鞘さんを始め人生を変えられた者たちの悔しさ、首謀者へ仕返し出来なかった無念、そして......結果的に生き残った者たちから戦闘心を根こそぎ奪った罪......まだまだありますがいいでしょう。言っておきますがラクに死ねるなどとは思わないで下さい。結界は張った本人が死ぬと解かれますが死なない程度にやっていきますので、覚悟なさって下さいね」
更に美咲はある術を晴明にかけた。
それは、再生の術である。
「これであなたの体は私がトドメをささない限り永遠に再生を続ける事になります」
「......!!」
そう聞かされた晴明はすべてを悟るとガタガタと体を震わせ、カチカチと歯を鳴らした。
それは、どんなに晴明の体を傷つけようとも再生を繰り返すワケで、その身に受ける痛みも何度だって繰り返される事を意味するからだ。
そして、美咲の手には本物の刀が握られていた。
「さあ......復讐の宴を始めるとしましょうか。晴明さん、思う存分楽しんで下さいね」
笑顔を浮かべる美咲が刀を振り下ろすーーー。
晴明はとんでもない相手に自ら首謀者のひとりだったと告白してしまったと気づいたが、時既に遅しであった。
ある日の天葉邸にて。
「美咲さま!! おられますか?!美咲さま!!」
美咲の部屋にひとりの男性・蘇芳晴明が怒りの表情でやってきた。美咲の「鞘にもこちらに住んでもらいたい」という案に反対し、自分たちにはもう超消滅士は必要ないので鞘にいては困ると異を唱えた一族のひとりでもあった。
美咲は読書中だった本をパタンと閉じて晴明を迎える。
「どうかしましたか?」
「どうもこうもありません。聞きましたよ。あの疫病神の女に蘇芳を名乗る事を許したそうですね」
「疫病神? 誰の事ですか、それは?」
「決まってるでしょう! 天葉鞘の事です!!」
「......言葉を慎みなさい。彼女は17年前、天葉のために戦ってくれた功労者のひとりなのですよ」
「功労者ですと? 敵の攻撃をその身に受け戦線離脱し、凶星にまんまとさらわれた失敗者が功労者とは、片腹痛いというものですよ、美咲さま!」
「敵の攻撃を受けたのも一族の者をかばったためです」
「理由はどうであれ結果があのようでは、あの女を天葉の者とは認めるわけにはまいりませんな!」
何を言っても目の前の男は鞘を否定したいようだ。ゆっくりと首を横に振る美咲に晴明は問いただす。
「なぜです? なぜあの女にまで蘇芳を名乗る事を許したのですか? 事もあろうに我らと同じ名字を...... !」
晴明からの問いに美咲は「当たり前な事を聞かないで」という意味を含めながら返答する。
「彼女も天葉一族の人間だからです。それともうひとつ。お祖母さまから将来鞘さんにも蘇芳と名乗らせるようにと頼まれていたからです。鞘さんを天葉邸に住まわせないというあなたがたの意見に私が従ったのは、あくまでも私が彼女を住まわせたいという案が私個人のものであったからです。しかし、蘇芳を名乗らせる事だけはお祖母さまの願いだったのですから、いくらあなたが反対なさってもこれだけはゆずれませんよ。それとも、晴明さんはお祖母さまのご意向を否定なさるおつもりですか?」
晴明は何も言えなかった。死しても局の存在は今なお大きいからだ。
美咲自身も「自分はお祖母さまの代行者である」と言い切るくらいだ。
(この忌々しい、生意気な小娘が......!)
そう。局と違い、晴明の心中には孫の美咲を敬う気持ちなどなかった。
その瞬間、彼の中に邪悪な考えが浮かび上がる。
(そうだ。今ここにいるのは俺のみ。この小娘に何が起ころうともバレる事はない。そう......たとえ俺がこの娘を殺したとしてもだ!!)
晴明は口元にうっすら笑みを浮かべると手のひらに力をため始めた。そして目には黄金色のオーラが。
そして晴明は言い放つ。
「美咲さま、何をなさるのです! 突然刀を握られて......。お気をしっかり持って下さい!!」
言葉は美咲を気遣い、行動はそれに反して力を美咲へと放ったのだ。
晴明の中に浮かんだ策略。それは、美咲が乱心して刀を握り、自分を襲おうとしたのでとっさに力を放ってしまった。結果、美咲は死亡してしまったが、これは正当防衛だと言い、彼女に代わって天葉のトップに立つ、というものだった。
表向きは超消滅士など必要ない。これからは平和に生きていきたいと一族の皆の意見に賛同しておきながら、晴明の本心は天葉を己の意のままにしたいという野望があったのだ。
更に、自分がトップに君臨したら、平和に過ごしたいと思ってる一族を抹殺し、新たな天葉を築こうと考えている。
「天葉は17年前に滅んだ方がよかった」と言う美咲とは意見が似ているが、一族の者たちに嘆きながらも天葉を守ろうとする美咲と天葉を崩壊へと辿らせる晴明という時点で全く違っている。
晴明から放たれた力は美咲へと向かい、爆発が起こった。ちなみにこの部屋でたてられる物音は外には聞こえない。晴明がこの部屋自体に結界を張ったからだ。
(美咲は超消滅士ではない。俺の力を受けてはひとたまりもないハズ。これで俺が天葉のトップに......)
ニヤリとした晴明の表情が一気に驚きのものへと変わった。
なぜなら、爆発に包まれたハズの美咲が煙の向こうから姿を現したからだ。
「なっ......そ、そんな! バカな!!」
驚愕してる晴明に対し、美咲はケロリとしており、服についたホコリをはたくぐらいの余裕があった。
「申し訳ありませんが、私に物理攻撃は通用しませんよ」
晴明は初耳だ。
「何を言っている。あなたは超消滅士の力を持たない普通の人間ではありませんか! それなのに俺の攻撃をその身に受けて何ともないなど......」
「確かに私は超消滅士の力は持ってはいません。それは私が受け継いだもう一つの血が天葉の血よりも濃かったからなのでしょうね」
「もう一つの血?」
「私は天葉一族の父と残虐士の母の間に生まれたのです」
「ざ、残虐士......」
晴明は知っていた。
残虐士。法では裁かれずのうのうと生きている罪人を残虐な方法で殺していく暗殺一族。彼らには物理攻撃は無効であり、超消滅士とは違う意味で恐れられている戦士なのだ。
この事実は局しか知らないと美咲は言う。
美咲が残虐士だと知った晴明は「あーあ」と開き直った感の声を発する。
「おまえも17年前に殺しておくべきだったな」と。
美咲が何を言ってるのだという表情をしているので晴明は更に続ける。
「17年前、天葉一族が魔物に襲われた事件は凶星と、この俺が計画したものだったんだよ」
「......そうだったのですか」
「凶星は天葉鞘を手に入れる事が目的だったからな。彼女が瀕死の重傷を負ったのを逆手に取った凶星は天葉鞘を拉致してそのまま行方をくらましたが......まさか自分が利用していた女に喰われるなんてな。鞘を手に入れようと焦った凶星のミスだな」
嘲笑う晴明。だがその表情がやがて恐怖に変わる事になる。
「そう。そうですか。つまり、あなたもあの事件の首謀者だったワケですね」
美咲はそうつぶやくと両手の中に光るものを出現させた。やがてそれは十字の形となり、美咲がそれを放り投げると十字架へと変化した。
「......天葉晴明。今から私があなたを裁きます」
「裁くだと? おまえのような娘が? 俺を?」
「言ったはずですよ。私は残虐士の血が濃いのだと」
それを合図かのように十字架が晴明の背後にそびえ立ち、彼を磁石のように磔にした。
「な、何だ? いったいこれは!!」
「ですから裁くのですよ、あなたを」
この時点でようやく晴明は自分の身の危険を感じ始めた。
「私はね晴明さん。悔しかったのです。あの事件の首謀者だった凶星に復讐が出来なくなってしまった事を。ですが、あなたがあの者と共犯であると告白してくれた事で私のこの悔しさと怒りはようやく昇華出来そうです。晴明さん。あなたへ復讐する事によって」
「ふ、復讐?」
「感謝します晴明さん。そして、その身に思う存分受けていただきます。あの事件によって一族を失った私の悲しみと鞘さんを始め人生を変えられた者たちの悔しさ、首謀者へ仕返し出来なかった無念、そして......結果的に生き残った者たちから戦闘心を根こそぎ奪った罪......まだまだありますがいいでしょう。言っておきますがラクに死ねるなどとは思わないで下さい。結界は張った本人が死ぬと解かれますが死なない程度にやっていきますので、覚悟なさって下さいね」
更に美咲はある術を晴明にかけた。
それは、再生の術である。
「これであなたの体は私がトドメをささない限り永遠に再生を続ける事になります」
「......!!」
そう聞かされた晴明はすべてを悟るとガタガタと体を震わせ、カチカチと歯を鳴らした。
それは、どんなに晴明の体を傷つけようとも再生を繰り返すワケで、その身に受ける痛みも何度だって繰り返される事を意味するからだ。
そして、美咲の手には本物の刀が握られていた。
「さあ......復讐の宴を始めるとしましょうか。晴明さん、思う存分楽しんで下さいね」
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