玉座の檻

萌於カク

文字の大きさ
49 / 81

泥妃、倒れる

しおりを挟む
 まさに青髭宰相の一物がアミーユに侵入しようとしたそのとき、ガツンと『王の間』の入り口が鳴った。

 二度三度と、鳴った。

 青髭がアデレートの顔を見れば、アデレートは続けるようにあごをあげたが、激しい音に入り口を見れば、扉に亀裂が入っていた。

 亀裂から斧の先端が覗いていた。

「なん、だ……?」

 ただ事ではなさそうだ。青髭宰相は眉をひそめて、体を起こし、一物をしまい込んだ。
 青髭宰相が離れれば、アミーユは跳ね起きて隅へと逃げ込んだ。

 斧は入り口を打ち続ける。裂けたドアの隙間から、赤いドレスが覗いていた。




 斧を持った兵士の向こうに立っていたのは、パメラ妃とジョージ王子だった。

 入り口の扉はこじ開けられた。

 王の間にゆっくりとパメラ妃とジョージ王子が入ってきた。

 アデレートは首を傾げる。王座からは立ち上がらない。

「これはこれは、パメラ妃、なにごとです?」

 ずかずかと入ってきた兵士らは、いきなりアデレートを両脇から抑えこんだ。王座から引っ張り立たせる。

「アデレート殿を外にお連れする」

 アデレートはきっと叫んだ。

「わたくしは摂政です。王の代理ですよ!」

 パメラは冷ややかに笑った。その肉感的な体で赤いドレスを揺らめかす。

「ひかえあれ! ジョージ国王の前だ!」

 王の間が、静まり返った。





 パメラの近習が、アデレートに一枚の紙を突き付けた。アデレートはそれを見て、眉をひそめた。

「リチャード国王の、ゆい、ごん、じょう…………?」

 青髭宰相がそれを近習から奪って読み上げる。

「―――われ、リチャードは国王として遺言する。ジョージを次期国王となす」

 その場がしん、となる。
 アデレートも青髭宰相も、突っ立ったまま、しばらく動かない。

 政権を覆す事態だった。

 その遺言状に従えば、ダニエル国王の即位は無効となり、ジョージ王子が国王を継いだことになる。

「遺言状は本物なのですか………?」

 アデレートは遺言状を無効にしようと考えを張り巡らせているようだが、次の説明に、動揺を隠せなかった。

「遺言状は真正であることが、太皇太后によって認められました」

 近習の説明に、アデレートの豪奢な刺繍襟に囲まれた顔が醜く歪んでいく。

「太皇太后……………?」
「先の先の先の国王の母后にあられます」

 近習が取り澄ました顔で説明する。

「太皇太后………」
「はい、先の先の先の国王の母后にあられます」
「うるさい! 言わずとも知っています!」

 部屋の隅でしゃがみこんでいるアミーユは事態に目を見張っていた。

 太皇太后。
 老国王の母公? そんな方がいたのか?
 いるとすれば、かなりのご高齢のはず。

 顔も名前も存じ上げなくても、尊い存在であることはわかる。
 由緒ある古きものに対する畏敬。太皇太后なるお方が、実際に遺言状の内容を認めたのか否かはこの際関係ない。
 尊い御名に遺言状に誰も異を唱えられるはずもなかった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...