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泥妃、倒れる
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まさに青髭宰相の一物がアミーユに侵入しようとしたそのとき、ガツンと『王の間』の入り口が鳴った。
二度三度と、鳴った。
青髭がアデレートの顔を見れば、アデレートは続けるようにあごをあげたが、激しい音に入り口を見れば、扉に亀裂が入っていた。
亀裂から斧の先端が覗いていた。
「なん、だ……?」
ただ事ではなさそうだ。青髭宰相は眉をひそめて、体を起こし、一物をしまい込んだ。
青髭宰相が離れれば、アミーユは跳ね起きて隅へと逃げ込んだ。
斧は入り口を打ち続ける。裂けたドアの隙間から、赤いドレスが覗いていた。
斧を持った兵士の向こうに立っていたのは、パメラ妃とジョージ王子だった。
入り口の扉はこじ開けられた。
王の間にゆっくりとパメラ妃とジョージ王子が入ってきた。
アデレートは首を傾げる。王座からは立ち上がらない。
「これはこれは、パメラ妃、なにごとです?」
ずかずかと入ってきた兵士らは、いきなりアデレートを両脇から抑えこんだ。王座から引っ張り立たせる。
「アデレート殿を外にお連れする」
アデレートはきっと叫んだ。
「わたくしは摂政です。王の代理ですよ!」
パメラは冷ややかに笑った。その肉感的な体で赤いドレスを揺らめかす。
「ひかえあれ! ジョージ国王の前だ!」
王の間が、静まり返った。
パメラの近習が、アデレートに一枚の紙を突き付けた。アデレートはそれを見て、眉をひそめた。
「リチャード国王の、ゆい、ごん、じょう…………?」
青髭宰相がそれを近習から奪って読み上げる。
「―――われ、リチャードは国王として遺言する。ジョージを次期国王となす」
その場がしん、となる。
アデレートも青髭宰相も、突っ立ったまま、しばらく動かない。
政権を覆す事態だった。
その遺言状に従えば、ダニエル国王の即位は無効となり、ジョージ王子が国王を継いだことになる。
「遺言状は本物なのですか………?」
アデレートは遺言状を無効にしようと考えを張り巡らせているようだが、次の説明に、動揺を隠せなかった。
「遺言状は真正であることが、太皇太后によって認められました」
近習の説明に、アデレートの豪奢な刺繍襟に囲まれた顔が醜く歪んでいく。
「太皇太后……………?」
「先の先の先の国王の母后にあられます」
近習が取り澄ました顔で説明する。
「太皇太后………」
「はい、先の先の先の国王の母后にあられます」
「うるさい! 言わずとも知っています!」
部屋の隅でしゃがみこんでいるアミーユは事態に目を見張っていた。
太皇太后。
老国王の母公? そんな方がいたのか?
いるとすれば、かなりのご高齢のはず。
顔も名前も存じ上げなくても、尊い存在であることはわかる。
由緒ある古きものに対する畏敬。太皇太后なるお方が、実際に遺言状の内容を認めたのか否かはこの際関係ない。
尊い御名に遺言状に誰も異を唱えられるはずもなかった。
二度三度と、鳴った。
青髭がアデレートの顔を見れば、アデレートは続けるようにあごをあげたが、激しい音に入り口を見れば、扉に亀裂が入っていた。
亀裂から斧の先端が覗いていた。
「なん、だ……?」
ただ事ではなさそうだ。青髭宰相は眉をひそめて、体を起こし、一物をしまい込んだ。
青髭宰相が離れれば、アミーユは跳ね起きて隅へと逃げ込んだ。
斧は入り口を打ち続ける。裂けたドアの隙間から、赤いドレスが覗いていた。
斧を持った兵士の向こうに立っていたのは、パメラ妃とジョージ王子だった。
入り口の扉はこじ開けられた。
王の間にゆっくりとパメラ妃とジョージ王子が入ってきた。
アデレートは首を傾げる。王座からは立ち上がらない。
「これはこれは、パメラ妃、なにごとです?」
ずかずかと入ってきた兵士らは、いきなりアデレートを両脇から抑えこんだ。王座から引っ張り立たせる。
「アデレート殿を外にお連れする」
アデレートはきっと叫んだ。
「わたくしは摂政です。王の代理ですよ!」
パメラは冷ややかに笑った。その肉感的な体で赤いドレスを揺らめかす。
「ひかえあれ! ジョージ国王の前だ!」
王の間が、静まり返った。
パメラの近習が、アデレートに一枚の紙を突き付けた。アデレートはそれを見て、眉をひそめた。
「リチャード国王の、ゆい、ごん、じょう…………?」
青髭宰相がそれを近習から奪って読み上げる。
「―――われ、リチャードは国王として遺言する。ジョージを次期国王となす」
その場がしん、となる。
アデレートも青髭宰相も、突っ立ったまま、しばらく動かない。
政権を覆す事態だった。
その遺言状に従えば、ダニエル国王の即位は無効となり、ジョージ王子が国王を継いだことになる。
「遺言状は本物なのですか………?」
アデレートは遺言状を無効にしようと考えを張り巡らせているようだが、次の説明に、動揺を隠せなかった。
「遺言状は真正であることが、太皇太后によって認められました」
近習の説明に、アデレートの豪奢な刺繍襟に囲まれた顔が醜く歪んでいく。
「太皇太后……………?」
「先の先の先の国王の母后にあられます」
近習が取り澄ました顔で説明する。
「太皇太后………」
「はい、先の先の先の国王の母后にあられます」
「うるさい! 言わずとも知っています!」
部屋の隅でしゃがみこんでいるアミーユは事態に目を見張っていた。
太皇太后。
老国王の母公? そんな方がいたのか?
いるとすれば、かなりのご高齢のはず。
顔も名前も存じ上げなくても、尊い存在であることはわかる。
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尊い御名に遺言状に誰も異を唱えられるはずもなかった。
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