玉座の檻

萌於カク

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ジョージ国王、立つ

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 アデレートは長いこと呆けて立っていた。やがて、肩を落とし、うつろな目でつぶやく。

「ゆいごんじょう、たいこうたいごう、ゆいごんじょう、たいこうたいごう………。ほん、ほんほん、まるでたわごと……、ほんほんほんほんほんほんほん、ぶた、ぶたおんな……ぶたのくせに………ぶたぶた…………」

 アデレートは、うつむいて、頭を掻きむしり始めた。
 後ろに高く結い上げた髪がほどけて、内側に隠していたらしい白髪が表に出てくる。ごわごわの白髪交じりの金髪がバサッと広がる。

 アデレートが再び顔を上げたとき、そこには一人の老婆がいた。
 ギリッと眼が吊り上がった恐ろしい顔で叫び始めた。左右の兵士を振りほどいて、パメラ妃に突進する。

「ぶため! ぶため! ぶため! ぶため! ぶため! ぶため! ぶため! ぶため! ぶため!」

 正気を失った顔でパメラ妃に向かったアデレートは、兵士によって跳ね返された。
 王の間の床の真中にあおむけに倒れたアデレートは、口から泡を吹いていた。
 
 しばらく、誰も口をきけなかった。青髭宰相ですら、母親の変貌に度肝を抜かれた顔をしていた。

 うずくまったままのアミーユの目の前で、アデレートとその息子は王の間から連れ出されていった。

♰♰♰

 アミーユは、ボタンの取れた軍服を着込み、再び、王座の前に片膝をついていた。しかし目の前にいるのは。

 ジョージ国王………!

 王座にはうら若き為政者の姿があった。
 白い軍服に身を包んだ姿は、りりしく頼もしい。
 窓から陽光が長く差し込み、王座を照らし出している。
 王座のジョージ国王はまばゆく輝いていた。
 その場にいるものは誰もがかしずき、いつの間にかひざまずいている。
 ジョージ国王の横には、毅然とパメラ妃が立っていた。

 アミーユの目から涙がこぼれてきた。
 その身が助かりホッとしたのやら、ジョージ国王の立派な姿に胸打たれるやら、いろいろな感情がないまぜになっている。

 赤いドレスを揺らめかしてパメラが言う。

「リージュ大将、そなたを宰相に命じる」
「はっ!」
「ジョージ国王の即位式もそなたが仕切るのだ。良い式にしてやってくれ」
「はっ!」
「リージュ大将」

 パメラ妃は、アミーユを見る目をふと緩ませた。

「ジョージ国王は、そなたを頼みにしておる。もちろん、われもだ。頼むぞ、アミーユ殿」

 パメラ妃は初めてアミーユをその名で呼び、そして、うるんだ目で優しく笑いかけてきた。
 アミーユはその笑みに、しばらく見惚れていた。




 王宮を出てからアミーユはやっと気づいた。
 俺は、俺は宰相になってしまった……………!
 そして俺は逆賊アミーユとなる、のか。




 いや、それはない。
 今の神々しいジョージ国王のお姿はどうだ。
 俺がジョージ国王に剣を向けるはずがないのだ………!
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