77 / 81
我が名3
しおりを挟む
その場は静まり返っていた。
アデレートの扇子を仰ぐ手は止まり、青髭も、家臣らも、議会のメンバーらも、押し黙っていた。
アミーユはあふれかえる議員らを、涙でにじんだ視界ごしに眺めていた。
これがダンの仲間。
国のため、人々のため、そして自分のため、彼らは戦っている。
彼らは皆一様に血気にあふれ、希望に夢に満ちている。
探せば、赤毛も紛れ込んでいる気がした。ああ、きっと紛れ込んでいる。あいつはどこにでも紛れ込むのだから。
ダンの優しい声がよみがえる。
―――仲間の顔は忘れたこともない。彼らは俺の勇気だ。
―――俺は彼らに生かされている。俺はやめない。
彼らはダンそのもの。ダン自身だ。
―――俺にはしなきゃならないことがある。果たさなきゃならないことがある。
ダン、お前は本当に馬鹿だ。恐ろしく頑固にずっと長い一本の道を歩んできた。
―――俺が果たすのは無血革命だ
―――革命は長い期間をかけて、暴力ではなく理解を深め合うことで行う。
俺は自分とお前とのささやかな幸せさえ手に入ればいいと思っていた。それに謙虚さすら感じていた。俺は傲慢だった。
俺は、何も見ず、何も考えず、翻弄されるがまま、愚かに生きてきた。
馬鹿なのは俺だ。
―――俺にはこの国も愛おしくてたまらないんだ。
―――俺は、この国を民衆のものにする
アミーユはにじんだ視界で人々を見つめていた。
ダンは今もここにいる。
―――大丈夫だ、俺は死なない。
ダンは死なない。ダンの遺志が続く限り、ダンは生きる。俺がダンを生かす。
―――アミーユ、ともに、この国を変えよう。
ああ、そうしよう。
アミーユは力の限り叫んだ。
「我こそがアクランドの国王アーサーである!」
アミーユの声は王宮じゅうに響き渡った。こだまして、『王の間』から、バルコニーへ、渡り廊下へ、王宮前広場へと。王宮の内と外に、伝搬していく。
王宮の内外にリレーで伝わっていく。
「英雄アミーユは、アーサー国王だって」
「守護天使はアーサーさまってことだな」
アミーユは叫ぶ。
「アーサー国王の名において全権を議会に委ねる!」
広場と王宮じゅうが鳴り響いた。歓喜で鳴り響いた。やがて、人々の声は一つの声へと収束していく。
「アーサー国王、万歳! アーサー国王、万歳!」
アデレートの扇子を仰ぐ手は止まり、青髭も、家臣らも、議会のメンバーらも、押し黙っていた。
アミーユはあふれかえる議員らを、涙でにじんだ視界ごしに眺めていた。
これがダンの仲間。
国のため、人々のため、そして自分のため、彼らは戦っている。
彼らは皆一様に血気にあふれ、希望に夢に満ちている。
探せば、赤毛も紛れ込んでいる気がした。ああ、きっと紛れ込んでいる。あいつはどこにでも紛れ込むのだから。
ダンの優しい声がよみがえる。
―――仲間の顔は忘れたこともない。彼らは俺の勇気だ。
―――俺は彼らに生かされている。俺はやめない。
彼らはダンそのもの。ダン自身だ。
―――俺にはしなきゃならないことがある。果たさなきゃならないことがある。
ダン、お前は本当に馬鹿だ。恐ろしく頑固にずっと長い一本の道を歩んできた。
―――俺が果たすのは無血革命だ
―――革命は長い期間をかけて、暴力ではなく理解を深め合うことで行う。
俺は自分とお前とのささやかな幸せさえ手に入ればいいと思っていた。それに謙虚さすら感じていた。俺は傲慢だった。
俺は、何も見ず、何も考えず、翻弄されるがまま、愚かに生きてきた。
馬鹿なのは俺だ。
―――俺にはこの国も愛おしくてたまらないんだ。
―――俺は、この国を民衆のものにする
アミーユはにじんだ視界で人々を見つめていた。
ダンは今もここにいる。
―――大丈夫だ、俺は死なない。
ダンは死なない。ダンの遺志が続く限り、ダンは生きる。俺がダンを生かす。
―――アミーユ、ともに、この国を変えよう。
ああ、そうしよう。
アミーユは力の限り叫んだ。
「我こそがアクランドの国王アーサーである!」
アミーユの声は王宮じゅうに響き渡った。こだまして、『王の間』から、バルコニーへ、渡り廊下へ、王宮前広場へと。王宮の内と外に、伝搬していく。
王宮の内外にリレーで伝わっていく。
「英雄アミーユは、アーサー国王だって」
「守護天使はアーサーさまってことだな」
アミーユは叫ぶ。
「アーサー国王の名において全権を議会に委ねる!」
広場と王宮じゅうが鳴り響いた。歓喜で鳴り響いた。やがて、人々の声は一つの声へと収束していく。
「アーサー国王、万歳! アーサー国王、万歳!」
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる