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束の間の平穏
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冬将軍の勢いがもっとも激しい凍てつく季節。
老国王の死から四か月が過ぎていた。
その間、国王の御璽の持ち主は、リチャード、ダニエル、ジョージ、再び、ダニエルと、4たび変わった。
事実としては、リチャード国王は存在せず、ジョージ王子の反逆もついえたので、老国王の死後、ずっとダニエル国王の御代だったことになる。
しかし、記録上は、ジョージ国王は、遺言状によりリチャード国王のあとを継ぎ、在位三か月も満たずして不慮の事故で亡くなり、ダニエル国王が後を継いだことになっている。
パメラ殺害は結果として、アデレート体制の復活であり、その栄華を極めさせることとなるだろう。
それが良いのか悪いのか。アミーユは思考を先に進めない。もうアミーユにとってはアデレートのことは頭から放り出したいだけだ。
♰♰♰
アミーユは住居を構えることを考え始めた。
今度こそ、退役するつもりだった。
パメラ殺害の翌日に、アデレートに辞表を送っている。アデレートのもとで働くなら、食い詰めたほうがマシだ。
受け取ろうが受け取るまいが知ったことではない。
退役するならば住む場所を用意しなければならない。どうせ住むのならば、下宿ではなく、屋敷を構えたい。レルシュ邸のような立派な屋敷じゃなくていい。ダンと二人で住める小さな家でいい。
ダンはパメラ殺害以降、恋人の優しさしか見せない。ダンの復讐は終わったのだ。
アミーユとダンは生きている。この先も生きていく。
あまりにいろいろなことがあった。今後はダンと静かに暮らしたい。
そう考えるのは自然のなりゆきだった。
アミーユには賜ったまま放置しているリージュ公の領地が念頭にあった。退役しても領地からの収入がある。
領地管理人の荘官が知らせてきた領地高は期待よりもはるかに少なかった。治水や街道整備などの費用を引けば、アミーユに届けられる収入はわずかなものだ。
荘官は領地でも領民の反抗が増えて苦労している旨を寄越してきた。
荘官は自分の財布に収入を溜め込んでいるのではないか。
しかし、何もしないで果実のみを頂く身とあっては、文句をつけるのも気が引けた。一度、公爵領にも出向いてみようか。
アミーユは自分の思い付きに両手を叩いた。
ああ、それがいい! 領地に行こう!
気候の良い土地だと聞く。本格的に居住を移して、領地運営に乗り出すのもいい。領民の不満にも耳を傾ける良い領主になるんだ。
ダンも一緒に連れていこう。
ダンがいれば俺には何ら怖いものなどない。
ダンは現れたり、どこかへ出向いたりと、相変わらずのゴロツキぶりだが、アミーユには不安はない。
アミーユのいる場所がダンの帰る先だと感じている。ダンにはそんな気配があった。
互いしか知らない関係が、半ばおおやけになったのもある。ダンとアミーユとの仲は、パメラ殺害の現場にいた兵士には目についただろう。
二人の仲を知る者が二人以外にいる。それは、誰かに確認された仲、という安心となった。もう二人だけの行きずりの関係ではない。
ダンの身の上を思えば、浮浪児のときから、住所不定のその日暮らしだ。ダンには自由気ままな生き方が性分に合っているのだろう。
ダンが王都での着の身着のままの生活が良いなら、領地についてこなくてもいい。俺が王都に戻ればいい。以前のように、月に一度の逢瀬に戻るだけのこと。
そのうち、ダンも落ち着いてくれるだろう。まさかいつまでも根無し草を続けるはずもない。そうなったときに、領地に連れて行けばいい。
アミーユは執務室の片づけを行いながら、そう考えていた。
そのときのアミーユはすべてが終わったと思い込んでいた。
それが起きたのはそんな矢先のことだった。
老国王の死から四か月が過ぎていた。
その間、国王の御璽の持ち主は、リチャード、ダニエル、ジョージ、再び、ダニエルと、4たび変わった。
事実としては、リチャード国王は存在せず、ジョージ王子の反逆もついえたので、老国王の死後、ずっとダニエル国王の御代だったことになる。
しかし、記録上は、ジョージ国王は、遺言状によりリチャード国王のあとを継ぎ、在位三か月も満たずして不慮の事故で亡くなり、ダニエル国王が後を継いだことになっている。
パメラ殺害は結果として、アデレート体制の復活であり、その栄華を極めさせることとなるだろう。
それが良いのか悪いのか。アミーユは思考を先に進めない。もうアミーユにとってはアデレートのことは頭から放り出したいだけだ。
♰♰♰
アミーユは住居を構えることを考え始めた。
今度こそ、退役するつもりだった。
パメラ殺害の翌日に、アデレートに辞表を送っている。アデレートのもとで働くなら、食い詰めたほうがマシだ。
受け取ろうが受け取るまいが知ったことではない。
退役するならば住む場所を用意しなければならない。どうせ住むのならば、下宿ではなく、屋敷を構えたい。レルシュ邸のような立派な屋敷じゃなくていい。ダンと二人で住める小さな家でいい。
ダンはパメラ殺害以降、恋人の優しさしか見せない。ダンの復讐は終わったのだ。
アミーユとダンは生きている。この先も生きていく。
あまりにいろいろなことがあった。今後はダンと静かに暮らしたい。
そう考えるのは自然のなりゆきだった。
アミーユには賜ったまま放置しているリージュ公の領地が念頭にあった。退役しても領地からの収入がある。
領地管理人の荘官が知らせてきた領地高は期待よりもはるかに少なかった。治水や街道整備などの費用を引けば、アミーユに届けられる収入はわずかなものだ。
荘官は領地でも領民の反抗が増えて苦労している旨を寄越してきた。
荘官は自分の財布に収入を溜め込んでいるのではないか。
しかし、何もしないで果実のみを頂く身とあっては、文句をつけるのも気が引けた。一度、公爵領にも出向いてみようか。
アミーユは自分の思い付きに両手を叩いた。
ああ、それがいい! 領地に行こう!
気候の良い土地だと聞く。本格的に居住を移して、領地運営に乗り出すのもいい。領民の不満にも耳を傾ける良い領主になるんだ。
ダンも一緒に連れていこう。
ダンがいれば俺には何ら怖いものなどない。
ダンは現れたり、どこかへ出向いたりと、相変わらずのゴロツキぶりだが、アミーユには不安はない。
アミーユのいる場所がダンの帰る先だと感じている。ダンにはそんな気配があった。
互いしか知らない関係が、半ばおおやけになったのもある。ダンとアミーユとの仲は、パメラ殺害の現場にいた兵士には目についただろう。
二人の仲を知る者が二人以外にいる。それは、誰かに確認された仲、という安心となった。もう二人だけの行きずりの関係ではない。
ダンの身の上を思えば、浮浪児のときから、住所不定のその日暮らしだ。ダンには自由気ままな生き方が性分に合っているのだろう。
ダンが王都での着の身着のままの生活が良いなら、領地についてこなくてもいい。俺が王都に戻ればいい。以前のように、月に一度の逢瀬に戻るだけのこと。
そのうち、ダンも落ち着いてくれるだろう。まさかいつまでも根無し草を続けるはずもない。そうなったときに、領地に連れて行けばいい。
アミーユは執務室の片づけを行いながら、そう考えていた。
そのときのアミーユはすべてが終わったと思い込んでいた。
それが起きたのはそんな矢先のことだった。
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