玉座の檻

萌於カク

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幻の慕情2

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 アミーユはパメラの心を揺さぶったつもりだったが、夕暮れまでこれ見よがしにそれを続けても、パメラは庭に降りてくることはなかった。

 アミーユはパメラに訴える。

「棺の中が石が入っているのをアン王女が知るとどうお思いか」

 それはパメラにとって効果的な言葉だった。

「くっ、おのれ……………!」

 ついにパメラはアミーユから顔を逸らした。

「そなたは、そなたはわれを脅すのか、ええ、われを脅すのか…………!」

 パメラは手にしたコーヒーカップをアミーユに投げつけた。それは肩に当たって、熱いホットチョコレートをかぶってしまった。

「うっ………」

 湯気の上がる熱い液体に思わず呻く。

「おのれ、庭先をウロチョロとしおって」
「パメラ陛下、陛下は、リチャード国王の遺体の居場所をご存じなのですね?」
「リチャードはここにはおらぬ…………! 刑場の裏だ」

 パメラはのどから絞り出すように言った。
 アミーユは聞き間違えたかと思った。刑場の裏は崖になっている。罪人は処刑後、そこに捨てられる。

 まさか自分の夫の亡骸を、そこに捨てたのか。罪人のように。
 アミーユの目線にパメラは弱弱しく、目を伏せた。

「そなたは、われを苦しめたいのか…………」

 パメラの苦しげな声にアミーユはハッと我に返る。アミーユはパメラをひどい目つきで見ていたらしい。
 
「そうではありません! 私はパメラ陛下をお助けしたい、その一心でここにいます!」
「そうなのか」

 パメラは目をあげた。目にはうっすらと涙を浮かべている。

「はい、私は、陛下をお助けしたくて、ここに参ったのです」
「そうか」

 パメラはアミーユの言い分に納得した顔で、ゆっくりと立ち上がった。
 ひざまずいたアミーユの腕をとって立たせると、軍服の胸のボタンを外し始めた。

「陛下………?」

 パメラは、ゆらりと揺らめくように顔をあげると、笑みを浮かべていた。パメラからは香油の匂いが立ち上っていた。
 パメラはいたわるような声を出した。

「熱かったであろう。火傷をしてはおらぬか」

 パメラはアミーユの上着のボタンを外し始めた。アミーユはパメラの手を取った。

「私は大丈夫です」

 パメラは自分の手に重なったアミーユの手を見ると、侍女に出て行くように告げた。

「夫の着替えがある、こちらへこよ」

 パメラは、居間と続き間の寝室の扉を開ける。

 アミーユが戸惑っていると、「早く来ぬか」と、寝室の奥の衣裳室へとアミーユを呼びつける。
 リチャード国王の衣装室に入れば、パメラは、「早く脱がぬか」とアミーユに上着とシャツとを脱ぐように急かした。

 アミーユが脱ぎ終わると、パメラはアミーユの裸の上半身を抱きしめてきた。

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