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第338話 英雄の国への最後の旅路
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『ポチ・ほらもっとシャキッとして。顔少しあげて。』
「なぁ…わざわざメイクする必要あるか?服と髪型だけで良いって。」
『ポチ・こういうのはここからが肝心なの!ほら、メーク、よろしく。』
『メーク・はいじゃあそのまま…』
早朝からミチナガは部屋でメイクを施されている。こうしてメイクを施されるとぼんやりしているミチナガにも風格が漂い始める。このメイクのために昨日の夜は風呂に入りながらスキンケアなどもさせられ、あまりリラックスできていない。
なぜこんな風にメイクが施されているか。それは今日がついに英雄の国への出発日だからだ。すでにあれから3日が経った。今日の昼前に列車に乗れば夕方前には英雄の国に到着する。今日中に英雄の国に着くのだから、ミチナガを王としてここまで立派に成長したんだぞと見せつけたいらしい。
しかしそんなことよりも、これでようやくアレクリアルからの催促が終わる。ようやくホッとできるのだ。だがその前にパレードやらなんやらあり、一息つくまでは実に大変だ。
それから3時間かけてミチナガの化粧と髪のセット、それから衣装が整えられた。これで終わりだとミチナガは思わずベッドに横になろうとするが、衣装や化粧が乱れるといけないので寝っ転がるのは禁止された。
そのせいでミチナガは出発直前まで椅子に座った状態で仕事をさせられた。若干の疲れが顔に浮かんでいるが、化粧で誤魔化せている。外ではミチナガの出発のための準備が完了している。このまま出発…の前に一つの部屋を訪れた。
「お~い、エリー、エーラ。俺もう出発するけど大丈夫か?」
「あ!ミチナガ様。すみません…ようやくエリーの具合が良くなったみたいで。」
「まあ馴れない長旅だったからしょうがないさ。二人は今後この国で暮らしていくことになると思うからヴァルくんが帰ってくるまでこの国に馴染んでおいてくれ。あとこの部屋は二人が自由に使って良いから。なんか欲しい家具とかあったら使い魔たちに言っておけば用意するから。それから…」
「そ、そこまで良くして貰わなくても大丈夫ですから。それよりも出発が…とりあえず私だけでもお見送りに…」
「そんなのいいからいいから。そこの窓から顔でも出して手でも振っておいて。エーラだって正直まだ疲れ残っているでしょ?倒れないようにちゃんと休んどきな。」
エリーの疲労からきた風邪はミチナガの出発の日まで良くならなかった。よほど疲労が溜まっていたのだろう。それから姉のエーラも正直疲労が見える。新しい土地というストレスもあるのだろう。2人にはしばらくゆっくりと静養しておいてもらう。
ミチナガはエリーとエーラに別れを告げて外へと出た。そして近くの駅までミチナガたち一行は移動する。わずか数百メートルの移動にも関わらず、騎士たちは威風堂々と旗を掲げ行進していく。その姿にやや困り顔のミチナガではあるが、騎士達の誇らしげな表情を見ると笑みを浮かべた。
駅にたどり着くとそこにはヴァルドール達VMTランドの面々一行の姿もあった。今日より3日間はVMTランドも休業だ。大規模な施設の点検整備も同時に行う必要があったため、ちょうど良いタイミングだということだ。
ミチナガはVMTランド一行の元へと向かい、そこにいるヴァルドール、もといリッキーくんに話しかける。人の目がある限りヴァルドールという存在はリッキーくんへと変化する必要がある。本人としては子供達に大人気なのでこれと言った問題はない。
「やあリッキーくん。しばらくよろしくね。列車の先頭4両は貸し切ったから2両はそっちで使ってくれ。」
「ハハッ!ありがとう王様!」
早速車両に乗り込み始めるミチナガ達。本当は列車を丸ごと貸し切ろうという案もあったのだが、それだと多くの人々に影響を及ぼすため、4両貸切ということで落ち着いた。先頭の4両のうち2両は貴族用に改造された車両のため、広々と使える。
車両に乗り込むとミチナガとリッキーくんは同じ車両の隣の席に座る。他の者達はそれぞれ指示を出し合い席に着く。騎士達なんかは車両に不審物がないか、問題が無いかを点検しにいく。その様子を大変そうだなと他人事のように眺めているミチナガはリッキーくんからクッキーを渡された。
「あ、一つ一つ違うキャラが描かれているんだ。ふむ…これはいいね。これは手作業?」
「僕が作ったんだ!気に入ってくれたら嬉しいな!」
「うん、味も良いね。どうせだからチョコ味とか抹茶味とか作っても良いね。大量生産できるように工場作ろうか。手作業じゃ間に合わないだろうからね。」
「ハハッ!ありがとう王様!」
にこやかな会話をしながら新商品開発の話を進める。金貨数十万枚クラスの事業だ。なかなかのプロジェクトを朗らかに笑いながら決めていくミチナガとリッキーくんの会話を聞いてしまった者はなんとも言えぬ恐ろしさに身震いした。
やがて周りが落ち着いてくると扉が閉まり、列車の運行が始まる。列車に乗るのが久しぶりなミチナガは外の景色を楽しみながらジュースを飲んで過ごしている。特にこの車両の大きさが気に入っているらしい。ミチナガにも親しみのある日本の電車と大きさが近いのだ。
この世界の一般的な列車は家のように大きい。だからこのこじんまりした車両が懐かしくて心が安らぐのだ。それから30分ほどゆったりと列車旅を満喫したミチナガは徐々に落ち着きが無くなっていった。
リッキーくんとの会話も面白いのだが、この列車を見て回りたくなったのだ。特にこの貸切車両4両のうち、後ろ2両は一般客者だ。きっとそっちはもっと日本の車両に近いのではないかと思うと是非とも見てみたくなったのだ。
そんなミチナガはリッキーくんにも列車内を冒険してみないかと誘う。するとリッキーくんは冒険という言葉に魅了され即決でミチナガの案を受け入れた。では早速と立ち上がるミチナガの元へ騎士達が寄ってくる。
「ミチナガ様。どうかされましたか?」
「ん?ちょっと列車内を冒険してこようと思って。」
「列車内を冒険……わ、わかりました。では我々も同行して…」
「大丈夫大丈夫。それよりもそっちも少し休みな。そんな風に気を張っていちゃ疲れるだけだよ。俺の護衛はほら、リッキーくんがいるから大丈夫。どんな悪い奴らもリッキーパンチでイチコロさ。」
本当にイチコロ…一殺だろう。騎士達もリッキーくんの並々ならぬ実力を察したのかそれ以上は何も言わず、ミチナガの指示を受け入れた。それからミチナガとリッキーくんは肩を組みながら他の車両へと移動していく。
一つ後ろの車両はまだ貴族車両だ。ここには主にミチナガの供回りのものたちがいる。中には数名VMTランドのものたちもいる。リッキーくん曰く、彼らはVMTランドの中でも幹部と呼ばれるものたちらしい。
様子を見てみるとどうやら何か話し合いを行なっているらしい。そんな彼らもミチナガとリッキーくんに気がつくと全員立ち上がりこちらへ深々と頭を下げ始めた。
「初めましてミチナガ様。それからリッキーくんはお疲れ様です!」
「やあ初めまして。ああ、頭を上げて。それから座ったままでいいよ。みんなも!そんな堅苦しくしなくていいから!」
ミチナガの供回りのものたちも気がつけば全員頭を下げている。そしてミチナガの指示を聞くと頭を上げてそのまま席についた。ミチナガとリッキーくんはそのまま空いている席に座り、みんなと話を始める。
あまりに気さくに話しかけてくるミチナガに対し、VMTランドの幹部たちはどう対応して良いかわからなくなり挙動不審だ。しかししばらく話を続けると少しずつ落ち着いてきたようだ。
「どう?今の仕事は楽しいかい?」
「それはもちろんです。かつてないほどの歓声を聞くことができますし、何より充足感が違います。スカウトしてくれたリッキーくんには感謝してもしきれません。」
「それは良かった。良い人たちと巡り会えたなリッキーくん。さてと、そろそろ次の車両も行かないとな。意外と到着するまで時間ないな。」
ミチナガは立ち上がり別れを告げる。他の車両に行くことに驚くものたちは思わずなぜか尋ねた。ミチナガは正直にただの列車冒険、と言おうと思ったが、彼らの表情を見えそれを言うのをやめた。もっと良い答えを期待していると言うのが表情から見て取れた。
「せっかく時間があるんだ。みんなと話をして皆の思いを聞きたいんだよ。」
にこやかにそう答えたミチナガに対し感動するVMTランドの幹部の面々。完全に決まったと内心喜ぶミチナガが顔を上げると、そこには絶対嘘だと確信しているミチナガの供回りの面々の姿があった。そんな顔しなくても良いじゃんと目で訴えるミチナガに対して、答えはため息で返される。
自分のことをよくわかっていると嬉しく思う半面、威厳というものが薄れてきたんじゃないかと若干の危機感を覚えるミチナガ。歩きながらもっと王としてちゃんと振る舞わないといけないと反省する。
しかし王としての振る舞いというのはあまりよくわかっていない。ここをこうしたら良いという知識的なものは使い魔たちから教えられたからできる。しかし知識さえあれば王になれるわけじゃないことをミチナガは知っている。
使い魔たち曰く時折王の風格が出るということであったが、正直自覚はない。何が良いのか、何が悪いのかわからないままでは成長できない。いろいろ考えてみるが答えが見つかりそうにない。
とりあえず今は隣の客車に移動する。そちらは今までいた貴族用の客車とは違い、庶民用ということでひとつひとつの席が詰めて作られている。
そこでもミチナガとリッキーくんは喜んで迎えられた。一人一人と握手を交わし、軽く雑談をしていく。そんなことをしているとミチナガはすっかり先ほどまで考えていたことを忘れ、港の交流を楽しんでいた。
それから数時間後、周囲の景色は移ろい変わる。その景色には若干の懐かしさを感じる。ミチナガはこうして英雄の国へとたどり着いたのだ。
「なぁ…わざわざメイクする必要あるか?服と髪型だけで良いって。」
『ポチ・こういうのはここからが肝心なの!ほら、メーク、よろしく。』
『メーク・はいじゃあそのまま…』
早朝からミチナガは部屋でメイクを施されている。こうしてメイクを施されるとぼんやりしているミチナガにも風格が漂い始める。このメイクのために昨日の夜は風呂に入りながらスキンケアなどもさせられ、あまりリラックスできていない。
なぜこんな風にメイクが施されているか。それは今日がついに英雄の国への出発日だからだ。すでにあれから3日が経った。今日の昼前に列車に乗れば夕方前には英雄の国に到着する。今日中に英雄の国に着くのだから、ミチナガを王としてここまで立派に成長したんだぞと見せつけたいらしい。
しかしそんなことよりも、これでようやくアレクリアルからの催促が終わる。ようやくホッとできるのだ。だがその前にパレードやらなんやらあり、一息つくまでは実に大変だ。
それから3時間かけてミチナガの化粧と髪のセット、それから衣装が整えられた。これで終わりだとミチナガは思わずベッドに横になろうとするが、衣装や化粧が乱れるといけないので寝っ転がるのは禁止された。
そのせいでミチナガは出発直前まで椅子に座った状態で仕事をさせられた。若干の疲れが顔に浮かんでいるが、化粧で誤魔化せている。外ではミチナガの出発のための準備が完了している。このまま出発…の前に一つの部屋を訪れた。
「お~い、エリー、エーラ。俺もう出発するけど大丈夫か?」
「あ!ミチナガ様。すみません…ようやくエリーの具合が良くなったみたいで。」
「まあ馴れない長旅だったからしょうがないさ。二人は今後この国で暮らしていくことになると思うからヴァルくんが帰ってくるまでこの国に馴染んでおいてくれ。あとこの部屋は二人が自由に使って良いから。なんか欲しい家具とかあったら使い魔たちに言っておけば用意するから。それから…」
「そ、そこまで良くして貰わなくても大丈夫ですから。それよりも出発が…とりあえず私だけでもお見送りに…」
「そんなのいいからいいから。そこの窓から顔でも出して手でも振っておいて。エーラだって正直まだ疲れ残っているでしょ?倒れないようにちゃんと休んどきな。」
エリーの疲労からきた風邪はミチナガの出発の日まで良くならなかった。よほど疲労が溜まっていたのだろう。それから姉のエーラも正直疲労が見える。新しい土地というストレスもあるのだろう。2人にはしばらくゆっくりと静養しておいてもらう。
ミチナガはエリーとエーラに別れを告げて外へと出た。そして近くの駅までミチナガたち一行は移動する。わずか数百メートルの移動にも関わらず、騎士たちは威風堂々と旗を掲げ行進していく。その姿にやや困り顔のミチナガではあるが、騎士達の誇らしげな表情を見ると笑みを浮かべた。
駅にたどり着くとそこにはヴァルドール達VMTランドの面々一行の姿もあった。今日より3日間はVMTランドも休業だ。大規模な施設の点検整備も同時に行う必要があったため、ちょうど良いタイミングだということだ。
ミチナガはVMTランド一行の元へと向かい、そこにいるヴァルドール、もといリッキーくんに話しかける。人の目がある限りヴァルドールという存在はリッキーくんへと変化する必要がある。本人としては子供達に大人気なのでこれと言った問題はない。
「やあリッキーくん。しばらくよろしくね。列車の先頭4両は貸し切ったから2両はそっちで使ってくれ。」
「ハハッ!ありがとう王様!」
早速車両に乗り込み始めるミチナガ達。本当は列車を丸ごと貸し切ろうという案もあったのだが、それだと多くの人々に影響を及ぼすため、4両貸切ということで落ち着いた。先頭の4両のうち2両は貴族用に改造された車両のため、広々と使える。
車両に乗り込むとミチナガとリッキーくんは同じ車両の隣の席に座る。他の者達はそれぞれ指示を出し合い席に着く。騎士達なんかは車両に不審物がないか、問題が無いかを点検しにいく。その様子を大変そうだなと他人事のように眺めているミチナガはリッキーくんからクッキーを渡された。
「あ、一つ一つ違うキャラが描かれているんだ。ふむ…これはいいね。これは手作業?」
「僕が作ったんだ!気に入ってくれたら嬉しいな!」
「うん、味も良いね。どうせだからチョコ味とか抹茶味とか作っても良いね。大量生産できるように工場作ろうか。手作業じゃ間に合わないだろうからね。」
「ハハッ!ありがとう王様!」
にこやかな会話をしながら新商品開発の話を進める。金貨数十万枚クラスの事業だ。なかなかのプロジェクトを朗らかに笑いながら決めていくミチナガとリッキーくんの会話を聞いてしまった者はなんとも言えぬ恐ろしさに身震いした。
やがて周りが落ち着いてくると扉が閉まり、列車の運行が始まる。列車に乗るのが久しぶりなミチナガは外の景色を楽しみながらジュースを飲んで過ごしている。特にこの車両の大きさが気に入っているらしい。ミチナガにも親しみのある日本の電車と大きさが近いのだ。
この世界の一般的な列車は家のように大きい。だからこのこじんまりした車両が懐かしくて心が安らぐのだ。それから30分ほどゆったりと列車旅を満喫したミチナガは徐々に落ち着きが無くなっていった。
リッキーくんとの会話も面白いのだが、この列車を見て回りたくなったのだ。特にこの貸切車両4両のうち、後ろ2両は一般客者だ。きっとそっちはもっと日本の車両に近いのではないかと思うと是非とも見てみたくなったのだ。
そんなミチナガはリッキーくんにも列車内を冒険してみないかと誘う。するとリッキーくんは冒険という言葉に魅了され即決でミチナガの案を受け入れた。では早速と立ち上がるミチナガの元へ騎士達が寄ってくる。
「ミチナガ様。どうかされましたか?」
「ん?ちょっと列車内を冒険してこようと思って。」
「列車内を冒険……わ、わかりました。では我々も同行して…」
「大丈夫大丈夫。それよりもそっちも少し休みな。そんな風に気を張っていちゃ疲れるだけだよ。俺の護衛はほら、リッキーくんがいるから大丈夫。どんな悪い奴らもリッキーパンチでイチコロさ。」
本当にイチコロ…一殺だろう。騎士達もリッキーくんの並々ならぬ実力を察したのかそれ以上は何も言わず、ミチナガの指示を受け入れた。それからミチナガとリッキーくんは肩を組みながら他の車両へと移動していく。
一つ後ろの車両はまだ貴族車両だ。ここには主にミチナガの供回りのものたちがいる。中には数名VMTランドのものたちもいる。リッキーくん曰く、彼らはVMTランドの中でも幹部と呼ばれるものたちらしい。
様子を見てみるとどうやら何か話し合いを行なっているらしい。そんな彼らもミチナガとリッキーくんに気がつくと全員立ち上がりこちらへ深々と頭を下げ始めた。
「初めましてミチナガ様。それからリッキーくんはお疲れ様です!」
「やあ初めまして。ああ、頭を上げて。それから座ったままでいいよ。みんなも!そんな堅苦しくしなくていいから!」
ミチナガの供回りのものたちも気がつけば全員頭を下げている。そしてミチナガの指示を聞くと頭を上げてそのまま席についた。ミチナガとリッキーくんはそのまま空いている席に座り、みんなと話を始める。
あまりに気さくに話しかけてくるミチナガに対し、VMTランドの幹部たちはどう対応して良いかわからなくなり挙動不審だ。しかししばらく話を続けると少しずつ落ち着いてきたようだ。
「どう?今の仕事は楽しいかい?」
「それはもちろんです。かつてないほどの歓声を聞くことができますし、何より充足感が違います。スカウトしてくれたリッキーくんには感謝してもしきれません。」
「それは良かった。良い人たちと巡り会えたなリッキーくん。さてと、そろそろ次の車両も行かないとな。意外と到着するまで時間ないな。」
ミチナガは立ち上がり別れを告げる。他の車両に行くことに驚くものたちは思わずなぜか尋ねた。ミチナガは正直にただの列車冒険、と言おうと思ったが、彼らの表情を見えそれを言うのをやめた。もっと良い答えを期待していると言うのが表情から見て取れた。
「せっかく時間があるんだ。みんなと話をして皆の思いを聞きたいんだよ。」
にこやかにそう答えたミチナガに対し感動するVMTランドの幹部の面々。完全に決まったと内心喜ぶミチナガが顔を上げると、そこには絶対嘘だと確信しているミチナガの供回りの面々の姿があった。そんな顔しなくても良いじゃんと目で訴えるミチナガに対して、答えはため息で返される。
自分のことをよくわかっていると嬉しく思う半面、威厳というものが薄れてきたんじゃないかと若干の危機感を覚えるミチナガ。歩きながらもっと王としてちゃんと振る舞わないといけないと反省する。
しかし王としての振る舞いというのはあまりよくわかっていない。ここをこうしたら良いという知識的なものは使い魔たちから教えられたからできる。しかし知識さえあれば王になれるわけじゃないことをミチナガは知っている。
使い魔たち曰く時折王の風格が出るということであったが、正直自覚はない。何が良いのか、何が悪いのかわからないままでは成長できない。いろいろ考えてみるが答えが見つかりそうにない。
とりあえず今は隣の客車に移動する。そちらは今までいた貴族用の客車とは違い、庶民用ということでひとつひとつの席が詰めて作られている。
そこでもミチナガとリッキーくんは喜んで迎えられた。一人一人と握手を交わし、軽く雑談をしていく。そんなことをしているとミチナガはすっかり先ほどまで考えていたことを忘れ、港の交流を楽しんでいた。
それから数時間後、周囲の景色は移ろい変わる。その景色には若干の懐かしさを感じる。ミチナガはこうして英雄の国へとたどり着いたのだ。
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