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第362話 巨大のヨトゥンヘイム解放
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アレクリアルたちは最初にナイトとヴァルドールの攻撃によってできたクレーターの中心にある巨大な山を登っていく。この山全てが9大ダンジョン巨大のヨトゥンヘイムなのだ。その壁を破壊することは叶わない。入り口はあの銀貨と銅貨で完全に塞がれている場所だけだ。
あっという間にたどり着いたダンジョンの入り口を見たミチナガは、思わずこぼれそうになる笑みを抑える。なんせ目の前には溢れんばかりの貨幣の山だ。これが全てミチナガのものになると考えると笑わずにはいられない。そんなミチナガをアレクリアルが急かす。
「早くやってくれ。今はアレルモレドによってダンジョンの魔力が少なくなっている。回復しだしたらこの辺りもモンスターだらけになるぞ。」
「す、すみません。それじゃあ始めますね。」
ミチナガはスマホの収納アプリを開いて銀貨銅貨の山にスマホを押し当てた。すると次の瞬間目の前から大量の銀貨銅貨が消え去った。これにはアレクリアルも12英雄も、魔帝クラスのものたちも、はたまたミチナガもその光景に驚いた。
ミチナガも気がついていなかったが、スマホの収納能力が格段に上がっているのだ。これまでスマホによる大規模な収納というのはやっていなかった。だから今まで気がつかなかった。しかしこれならばミチナガの考えていた時間よりも早く終わるかもしれない。
「どうだミチナガ、問題はないか?」
「え、ええ。スマホをダンジョンから出しても問題ありません。それじゃあ…どんどん行きましょうか。」
ミチナガはスマホを片手に走り出した。これは時間との勝負だ。銀貨銅貨が無くなったことでこれからこのダンジョンは本来の姿を取り戻す。ダンジョンからモンスターが出現するようになるのだ。戦えないミチナガが安全に回収するためには急いだ方が良い。
だがこの巨大のダンジョンは大きい。ミチナガの速力では回収するまで年単位でかかるだろう。だからナイトはそんなミチナガを抱えて走り出した。ミチナガは抱えられながらスマホを前に押し出しているというなんとも無様な格好だが、このおかげで回収速度が数百倍は早くなった。
スマホには銀貨や銅貨が1秒間に万単位で収納されていく。スマホの中では今まで銀貨や銅貨が不足していてやれなかったことが急激に始まっている。銅貨は魔力伝導率の高い特殊銅線に、銀貨は物に再生能力を与える付与材料に。
いくら使ってもなくなることのない銅貨や銀貨に使い魔たちは何やら悪巧みを始めている。そんなことを知らないミチナガは突如と立ち止まったナイトに驚きつつ、目の前の道を見た。
「お、ここから分かれ道か。俺右行くからお前ら左頼んだ。」
『ポチ・はーい。それじゃあみんな行くよー!』
ポチの号令のもとスマホから大量に溢れ出した使い魔たちが左の通路へと突き進んだ。一人一人の回収能力はミチナガよりはるかに劣るが、それを数でカバーした。アレクリアルたちは部隊を二つに分けてどちらもカバーできるようについて行く。
その後いくつもの分岐により使い魔たちは数を減らしながらもなんとか急いで回収して行く。この巨大のダンジョンは9大ダンジョンの中でも一番大きく広いダンジョンだ。かなり急ピッチにやっているが、1階層の回収を終えるのにも1週間はかかるだろう。
そんな時ミチナガが回収した場所の跡地に一つの宝箱が落ちていた。それはまさにダンジョンの宝だ。数百年ぶりに入手できる9大ダンジョンのお宝に一同は思わず緊張で手に汗をかいた。
「あ、アレクリアル様。どうぞ…」
「あ、ああ…今やダンジョンアイテムなんて神話やおとぎ話レベルだからな。それじゃあ…開けるぞ。」
アレクリアルは宝箱をゆっくりと開く。そこには一本の短剣が納められていた。なんらかの魔道具なのだろうが、詳しいことはわからない。だがそれでも皆笑いが止まらない。今世界に生きているものでダンジョンからアイテムを入手した人間はアレクリアルたちだけだ。
「ミチナガ、これを急ぎ解析に回せ。記念すべき第一弾だぞ。大切に扱うように通達しろ。」
「了解しました。…はい、これでもう届いている頃ですよ。」
すでに英雄の国の研究室ではいつダンジョンアイテムが届くのかと心待ちにしていた。それが今届いたので皆大騒ぎで解析を行っている。もう研究所は大盛り上がりだ。その報告を受けたアレクリアル一行は再び行動を開始する。
まだまだ先は長い。休んでいる暇はないのだ。ミチナガも使い魔を総動員して回収当たる。分岐して行く道の中には行き止まりもある。そこまで回収し終えたらまた戻って他の道に合流して回収する。中には隠し通路を発見したものもいる。
探せば探すほどダンジョンというものは面白い。すると使い魔たちから報告が入った。その報告を聞いたミチナガはすぐにアレクリアルに報告すると皆笑みを浮かべてその場所へ向かう。
大急ぎで向かった先には巨大な扉があった。それはまさしくこの1階層のボス部屋だ。ここから2階層目に行くことができる。皆でその扉を開く。すると中から大量の銀貨が雪崩のように流れ出てきた。このままでは銀貨に押しつぶされるというところでミチナガが全ての銀貨を回収した。
「ボスからは銅貨はあんまり出ないんですかね。とりあえずこの部屋も綺麗にしちゃいますね。」
「頼んだ。」
ミチナガは複数の使い魔とともに部屋を綺麗にして行く。すると回収物の中にいくつものダンジョン産の魔道具が入手されている。おそらくたいしたものではないだろう。過去の人間がいらないからと捨てていったものだ。
そんな魔道具はすでにあちこちで発見され始めているようで、英雄の国の解析班は大盛り上がりだ。さらにミチナガの伝手でユグドラシル国の解析班にも送られている。今後も大量の魔道具を回収することを考えれば英雄の国の研究所だけでは足りなくなるという判断だ。
やがて綺麗さっぱりボス部屋の中が片付くと一同は一度ボス部屋から出た。2階層目に続く扉が開かなかったのだ。おそらくここのボス部屋のボスを倒さないとダメなのだろう。ただいつボスがリスポーンするのかはわからない。
いつまで待てば良いのかと気を揉んでいるとボス部屋の扉にはめ込まれている宝玉が光りだした。おそらくだがこれがボスのリスポーン合図だろう。扉を開くとそこには巨大な斧を持った漆黒の体毛のミノタウロスが立っていた。
「ちゃんと居ますね。それで…誰が戦います?」
「そうだな…ダモレス、お前に任せる。」
「い、いいんですか!」
先ほどの怪物アレルモレド戦で活躍が少なかったと肩を落として居たダモレスにアレクリアルが花をもたせてやった。喜んで意気揚々とミノタウロスへと向かって行くダモレスに対してミノタウロスは持っていた斧を思いっきり振り下ろす。
「おお!すげぇすげぇ!ダンジョンボスの一撃受けちった。よっと。」
ダモレスはミノタウロスの一撃を軽々と片手で受け止めるとそのままもう片手で大剣ツバキを振るい、ミノタウロスを真っ二つにした。その瞬間2階への扉が開く。さらにミノタウロスの死体は消えて行き、後には先ほどミノタウロスが持っていた斧の一回り小さいものが落ちていた。
「おお!ボスドロップ!ボスドロップ出ましたよ!」
「そうだな。ミチナガ、回収して解析を頼む。今まで送られていったものとはレベルが違うことも添えてな。」
ミチナガはアレクリアルに言われた通りにする。そして次の階層へと降りて行く。到着した2階層目も1階層となんら見た目は変わらない。アレクリアルが調べてきた文献によるとダンジョンは5階ごとに様相が変わるのだという。だからしばらく見た目は変わらない。
「それにしても外から見るより明らかに大きいですよね。」
「ダンジョン内の空間はかなり歪んでいるからな。空間魔法を用いて一気に下に降りるようなこともできないらしい。かつての文明でもかなり研究されたそうだが、詳しいことはわからなかったようだ。…まあ文献も対して残っていないがな。」
9大ダンジョンに関する情報は古い石碑などでしか残っていない。紙の媒体で残っていたものはすでに朽ち果てている。石碑だって戦争や雨風による風化でそこまで残っていない。ダンジョンの情報は非常に価値あるものなのだ。
「ちなみにここって何階層まであるとかってちょっとした情報はないんですか?」
「石碑から確認できたものは64階層までだ。だがそれ以上あると考えた方が良いだろうな。なんせ9大ダンジョンを一つでも踏破したものなど歴史上数人しかいない。」
「ろくじゅ……もっと大急ぎでやらないとダメってことか。ナイト、すまんが頑張ってくれ。」
「ああ、任せておけ。」
ミチナガはナイトに抱えられたまま大急ぎで回収していく。9大ダンジョン、巨大のヨトゥンヘイムの解放はまだ始まったばかりだ。
あっという間にたどり着いたダンジョンの入り口を見たミチナガは、思わずこぼれそうになる笑みを抑える。なんせ目の前には溢れんばかりの貨幣の山だ。これが全てミチナガのものになると考えると笑わずにはいられない。そんなミチナガをアレクリアルが急かす。
「早くやってくれ。今はアレルモレドによってダンジョンの魔力が少なくなっている。回復しだしたらこの辺りもモンスターだらけになるぞ。」
「す、すみません。それじゃあ始めますね。」
ミチナガはスマホの収納アプリを開いて銀貨銅貨の山にスマホを押し当てた。すると次の瞬間目の前から大量の銀貨銅貨が消え去った。これにはアレクリアルも12英雄も、魔帝クラスのものたちも、はたまたミチナガもその光景に驚いた。
ミチナガも気がついていなかったが、スマホの収納能力が格段に上がっているのだ。これまでスマホによる大規模な収納というのはやっていなかった。だから今まで気がつかなかった。しかしこれならばミチナガの考えていた時間よりも早く終わるかもしれない。
「どうだミチナガ、問題はないか?」
「え、ええ。スマホをダンジョンから出しても問題ありません。それじゃあ…どんどん行きましょうか。」
ミチナガはスマホを片手に走り出した。これは時間との勝負だ。銀貨銅貨が無くなったことでこれからこのダンジョンは本来の姿を取り戻す。ダンジョンからモンスターが出現するようになるのだ。戦えないミチナガが安全に回収するためには急いだ方が良い。
だがこの巨大のダンジョンは大きい。ミチナガの速力では回収するまで年単位でかかるだろう。だからナイトはそんなミチナガを抱えて走り出した。ミチナガは抱えられながらスマホを前に押し出しているというなんとも無様な格好だが、このおかげで回収速度が数百倍は早くなった。
スマホには銀貨や銅貨が1秒間に万単位で収納されていく。スマホの中では今まで銀貨や銅貨が不足していてやれなかったことが急激に始まっている。銅貨は魔力伝導率の高い特殊銅線に、銀貨は物に再生能力を与える付与材料に。
いくら使ってもなくなることのない銅貨や銀貨に使い魔たちは何やら悪巧みを始めている。そんなことを知らないミチナガは突如と立ち止まったナイトに驚きつつ、目の前の道を見た。
「お、ここから分かれ道か。俺右行くからお前ら左頼んだ。」
『ポチ・はーい。それじゃあみんな行くよー!』
ポチの号令のもとスマホから大量に溢れ出した使い魔たちが左の通路へと突き進んだ。一人一人の回収能力はミチナガよりはるかに劣るが、それを数でカバーした。アレクリアルたちは部隊を二つに分けてどちらもカバーできるようについて行く。
その後いくつもの分岐により使い魔たちは数を減らしながらもなんとか急いで回収して行く。この巨大のダンジョンは9大ダンジョンの中でも一番大きく広いダンジョンだ。かなり急ピッチにやっているが、1階層の回収を終えるのにも1週間はかかるだろう。
そんな時ミチナガが回収した場所の跡地に一つの宝箱が落ちていた。それはまさにダンジョンの宝だ。数百年ぶりに入手できる9大ダンジョンのお宝に一同は思わず緊張で手に汗をかいた。
「あ、アレクリアル様。どうぞ…」
「あ、ああ…今やダンジョンアイテムなんて神話やおとぎ話レベルだからな。それじゃあ…開けるぞ。」
アレクリアルは宝箱をゆっくりと開く。そこには一本の短剣が納められていた。なんらかの魔道具なのだろうが、詳しいことはわからない。だがそれでも皆笑いが止まらない。今世界に生きているものでダンジョンからアイテムを入手した人間はアレクリアルたちだけだ。
「ミチナガ、これを急ぎ解析に回せ。記念すべき第一弾だぞ。大切に扱うように通達しろ。」
「了解しました。…はい、これでもう届いている頃ですよ。」
すでに英雄の国の研究室ではいつダンジョンアイテムが届くのかと心待ちにしていた。それが今届いたので皆大騒ぎで解析を行っている。もう研究所は大盛り上がりだ。その報告を受けたアレクリアル一行は再び行動を開始する。
まだまだ先は長い。休んでいる暇はないのだ。ミチナガも使い魔を総動員して回収当たる。分岐して行く道の中には行き止まりもある。そこまで回収し終えたらまた戻って他の道に合流して回収する。中には隠し通路を発見したものもいる。
探せば探すほどダンジョンというものは面白い。すると使い魔たちから報告が入った。その報告を聞いたミチナガはすぐにアレクリアルに報告すると皆笑みを浮かべてその場所へ向かう。
大急ぎで向かった先には巨大な扉があった。それはまさしくこの1階層のボス部屋だ。ここから2階層目に行くことができる。皆でその扉を開く。すると中から大量の銀貨が雪崩のように流れ出てきた。このままでは銀貨に押しつぶされるというところでミチナガが全ての銀貨を回収した。
「ボスからは銅貨はあんまり出ないんですかね。とりあえずこの部屋も綺麗にしちゃいますね。」
「頼んだ。」
ミチナガは複数の使い魔とともに部屋を綺麗にして行く。すると回収物の中にいくつものダンジョン産の魔道具が入手されている。おそらくたいしたものではないだろう。過去の人間がいらないからと捨てていったものだ。
そんな魔道具はすでにあちこちで発見され始めているようで、英雄の国の解析班は大盛り上がりだ。さらにミチナガの伝手でユグドラシル国の解析班にも送られている。今後も大量の魔道具を回収することを考えれば英雄の国の研究所だけでは足りなくなるという判断だ。
やがて綺麗さっぱりボス部屋の中が片付くと一同は一度ボス部屋から出た。2階層目に続く扉が開かなかったのだ。おそらくここのボス部屋のボスを倒さないとダメなのだろう。ただいつボスがリスポーンするのかはわからない。
いつまで待てば良いのかと気を揉んでいるとボス部屋の扉にはめ込まれている宝玉が光りだした。おそらくだがこれがボスのリスポーン合図だろう。扉を開くとそこには巨大な斧を持った漆黒の体毛のミノタウロスが立っていた。
「ちゃんと居ますね。それで…誰が戦います?」
「そうだな…ダモレス、お前に任せる。」
「い、いいんですか!」
先ほどの怪物アレルモレド戦で活躍が少なかったと肩を落として居たダモレスにアレクリアルが花をもたせてやった。喜んで意気揚々とミノタウロスへと向かって行くダモレスに対してミノタウロスは持っていた斧を思いっきり振り下ろす。
「おお!すげぇすげぇ!ダンジョンボスの一撃受けちった。よっと。」
ダモレスはミノタウロスの一撃を軽々と片手で受け止めるとそのままもう片手で大剣ツバキを振るい、ミノタウロスを真っ二つにした。その瞬間2階への扉が開く。さらにミノタウロスの死体は消えて行き、後には先ほどミノタウロスが持っていた斧の一回り小さいものが落ちていた。
「おお!ボスドロップ!ボスドロップ出ましたよ!」
「そうだな。ミチナガ、回収して解析を頼む。今まで送られていったものとはレベルが違うことも添えてな。」
ミチナガはアレクリアルに言われた通りにする。そして次の階層へと降りて行く。到着した2階層目も1階層となんら見た目は変わらない。アレクリアルが調べてきた文献によるとダンジョンは5階ごとに様相が変わるのだという。だからしばらく見た目は変わらない。
「それにしても外から見るより明らかに大きいですよね。」
「ダンジョン内の空間はかなり歪んでいるからな。空間魔法を用いて一気に下に降りるようなこともできないらしい。かつての文明でもかなり研究されたそうだが、詳しいことはわからなかったようだ。…まあ文献も対して残っていないがな。」
9大ダンジョンに関する情報は古い石碑などでしか残っていない。紙の媒体で残っていたものはすでに朽ち果てている。石碑だって戦争や雨風による風化でそこまで残っていない。ダンジョンの情報は非常に価値あるものなのだ。
「ちなみにここって何階層まであるとかってちょっとした情報はないんですか?」
「石碑から確認できたものは64階層までだ。だがそれ以上あると考えた方が良いだろうな。なんせ9大ダンジョンを一つでも踏破したものなど歴史上数人しかいない。」
「ろくじゅ……もっと大急ぎでやらないとダメってことか。ナイト、すまんが頑張ってくれ。」
「ああ、任せておけ。」
ミチナガはナイトに抱えられたまま大急ぎで回収していく。9大ダンジョン、巨大のヨトゥンヘイムの解放はまだ始まったばかりだ。
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