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第1章 覚醒者たち
第1話 世界で最悪のガチャ
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天城零は、昨日まで自分が“能力者”になるなど、夢にも思っていなかった。
路地裏でモンスターに襲われ、意味不明な表示に従ってガチャを引き、気づけば化け物は消滅していた。
それが現実なのか、死の間際に見た幻覚なのか――答えが出ないまま、一夜が明けた。
「……夢じゃ、ないよな」
朝日が差し込む自室で、零は自分の右手を見つめる。
意識を集中すると、脳裏にあの“画面”が浮かび上がった。
《能力ガチャ:待機中》
《所持スキル:5》
《再使用:可能》
はっきりと表示される無機質な文字列。
どうやら、昨日の出来事は現実らしい。
「能力者、か……」
ニュースで見たことはある。
モンスター出現と同時に現れ始めた“超常の存在”。
炎を操る者、異常な身体能力を持つ者、回復能力を持つ者――。
だが、能力者は特別な存在だと思っていた。
選ばれた一部の人間だけがなれるものだと。
(まさか、俺が……)
◆
学校へ向かう途中、異変は再び起こった。
駅前の交差点。
人通りの多いはずの場所が、異様なほど静まり返っている。
「……?」
足を止めた瞬間、空気が震えた。
次の瞬間、アスファルトが割れ、
黒い影が地面から這い出てくる。
「また……モンスター!?」
昨日の化け物より小さいが、明らかに人間ではない。
周囲から悲鳴が上がり、人々が一斉に逃げ出す。
零も後ずさった、その時だった。
「下がれ!」
鋭い声と共に、誰かが前に出た。
スーツ姿の青年。
年は二十代半ばだろうか。
彼は手をかざし、低く呟く。
「――《発火》」
次の瞬間、空中に炎が生まれ、モンスターを包み込んだ。
火柱が上がり、化け物は断末魔を上げて消滅する。
一瞬の出来事だった。
「……能力者」
零の口から、自然とその言葉が漏れる。
青年は振り返り、零を鋭く見た。
「一般人か? ここは危険だ、早く離れろ」
だが――その視線が、零の違和感に気づいた。
「……いや。お前、能力者だな?」
心臓が跳ねる。
「え……?」
「隠そうとしても無駄だ。魔力反応が出てる」
青年は眉をひそめ、慎重に距離を詰めてくる。
「名前は?」
「天城、零です」
「俺は統制局所属の能力者、相馬迅。ランクはCだ」
統制局。
ニュースで聞いたことがある。能力者を管理する政府組織だ。
「昨日、覚醒したばかりだろ?」
なぜ分かる。
零が黙っていると、相馬は溜息をついた。
「最近多いんだ。無自覚な新規覚醒者が」
相馬は周囲を警戒しながら、続ける。
「能力は?」
零は一瞬、迷った。
だが、正直に答えることにした。
「……ガチャ、です」
「は?」
相馬が怪訝な顔をする。
「能力ガチャ。引くと、能力が手に入ります」
沈黙。
「……冗談じゃないよな?」
「俺も、そう思いたいです」
零は意識を集中させ、ガチャ画面を展開した。
《能力ガチャ》
・使用回数:無制限
・クールタイム:なし
・排出対象:全能力
・レアリティ:存在しない
相馬の顔色が、明らかに変わった。
「……おい。最後の一文、なんだ」
「分かりません。でも、昨日からずっとこうです」
相馬は喉を鳴らし、信じられないものを見る目で零を見る。
「通常、能力者は一つ、多くても二つだ。
しかも成長には限界がある」
「でも、俺は……」
零は昨日獲得したスキルを思い出す。
完全適応。
能力複製。
成長無限化。
確率操作(極)。
概念耐性。
どう考えても、異常だった。
「一度、引いてみろ」
相馬の声は、半ば震えていた。
零は頷き、心の中でガチャを引く。
《能力ガチャ:実行》
《スキル抽選中……》
光が弾け、文字が浮かぶ。
《獲得スキル》
・空間把握(極)
その瞬間、世界が“立体的”に見えた。
建物の中、地下、遠くの路地。
魔力の流れ、人の位置、危険度。
「……視える」
「……は?」
相馬は言葉を失っていた。
「今引いたばかりで、もう使えるのか……?」
零は息を呑む。
(これが、俺の能力……)
相馬はしばらく沈黙した後、低く言った。
「天城零。お前は――」
一拍置いて。
「この世界で、一番危険な能力者だ」
零は苦笑する。
「それ、褒めてます?」
「警告だ」
相馬は真剣な目で告げた。
「その力、必ず狙われる。
魔人、能力者、そして……神にすらな」
神。
その言葉に、零の背筋が冷えた。
だが同時に、胸の奥が熱くなる。
(――なら)
零は静かに拳を握る。
(全部引いて、全部乗り越えるだけだ)
世界最悪のガチャは、
今、確かに回り始めていた。
路地裏でモンスターに襲われ、意味不明な表示に従ってガチャを引き、気づけば化け物は消滅していた。
それが現実なのか、死の間際に見た幻覚なのか――答えが出ないまま、一夜が明けた。
「……夢じゃ、ないよな」
朝日が差し込む自室で、零は自分の右手を見つめる。
意識を集中すると、脳裏にあの“画面”が浮かび上がった。
《能力ガチャ:待機中》
《所持スキル:5》
《再使用:可能》
はっきりと表示される無機質な文字列。
どうやら、昨日の出来事は現実らしい。
「能力者、か……」
ニュースで見たことはある。
モンスター出現と同時に現れ始めた“超常の存在”。
炎を操る者、異常な身体能力を持つ者、回復能力を持つ者――。
だが、能力者は特別な存在だと思っていた。
選ばれた一部の人間だけがなれるものだと。
(まさか、俺が……)
◆
学校へ向かう途中、異変は再び起こった。
駅前の交差点。
人通りの多いはずの場所が、異様なほど静まり返っている。
「……?」
足を止めた瞬間、空気が震えた。
次の瞬間、アスファルトが割れ、
黒い影が地面から這い出てくる。
「また……モンスター!?」
昨日の化け物より小さいが、明らかに人間ではない。
周囲から悲鳴が上がり、人々が一斉に逃げ出す。
零も後ずさった、その時だった。
「下がれ!」
鋭い声と共に、誰かが前に出た。
スーツ姿の青年。
年は二十代半ばだろうか。
彼は手をかざし、低く呟く。
「――《発火》」
次の瞬間、空中に炎が生まれ、モンスターを包み込んだ。
火柱が上がり、化け物は断末魔を上げて消滅する。
一瞬の出来事だった。
「……能力者」
零の口から、自然とその言葉が漏れる。
青年は振り返り、零を鋭く見た。
「一般人か? ここは危険だ、早く離れろ」
だが――その視線が、零の違和感に気づいた。
「……いや。お前、能力者だな?」
心臓が跳ねる。
「え……?」
「隠そうとしても無駄だ。魔力反応が出てる」
青年は眉をひそめ、慎重に距離を詰めてくる。
「名前は?」
「天城、零です」
「俺は統制局所属の能力者、相馬迅。ランクはCだ」
統制局。
ニュースで聞いたことがある。能力者を管理する政府組織だ。
「昨日、覚醒したばかりだろ?」
なぜ分かる。
零が黙っていると、相馬は溜息をついた。
「最近多いんだ。無自覚な新規覚醒者が」
相馬は周囲を警戒しながら、続ける。
「能力は?」
零は一瞬、迷った。
だが、正直に答えることにした。
「……ガチャ、です」
「は?」
相馬が怪訝な顔をする。
「能力ガチャ。引くと、能力が手に入ります」
沈黙。
「……冗談じゃないよな?」
「俺も、そう思いたいです」
零は意識を集中させ、ガチャ画面を展開した。
《能力ガチャ》
・使用回数:無制限
・クールタイム:なし
・排出対象:全能力
・レアリティ:存在しない
相馬の顔色が、明らかに変わった。
「……おい。最後の一文、なんだ」
「分かりません。でも、昨日からずっとこうです」
相馬は喉を鳴らし、信じられないものを見る目で零を見る。
「通常、能力者は一つ、多くても二つだ。
しかも成長には限界がある」
「でも、俺は……」
零は昨日獲得したスキルを思い出す。
完全適応。
能力複製。
成長無限化。
確率操作(極)。
概念耐性。
どう考えても、異常だった。
「一度、引いてみろ」
相馬の声は、半ば震えていた。
零は頷き、心の中でガチャを引く。
《能力ガチャ:実行》
《スキル抽選中……》
光が弾け、文字が浮かぶ。
《獲得スキル》
・空間把握(極)
その瞬間、世界が“立体的”に見えた。
建物の中、地下、遠くの路地。
魔力の流れ、人の位置、危険度。
「……視える」
「……は?」
相馬は言葉を失っていた。
「今引いたばかりで、もう使えるのか……?」
零は息を呑む。
(これが、俺の能力……)
相馬はしばらく沈黙した後、低く言った。
「天城零。お前は――」
一拍置いて。
「この世界で、一番危険な能力者だ」
零は苦笑する。
「それ、褒めてます?」
「警告だ」
相馬は真剣な目で告げた。
「その力、必ず狙われる。
魔人、能力者、そして……神にすらな」
神。
その言葉に、零の背筋が冷えた。
だが同時に、胸の奥が熱くなる。
(――なら)
零は静かに拳を握る。
(全部引いて、全部乗り越えるだけだ)
世界最悪のガチャは、
今、確かに回り始めていた。
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