世界最強はガチャで引いた――無限排出スキルで現代を救え

羽蟲蛇 響太郎

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第1章 覚醒者たち

第1話 世界で最悪のガチャ

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天城零は、昨日まで自分が“能力者”になるなど、夢にも思っていなかった。

路地裏でモンスターに襲われ、意味不明な表示に従ってガチャを引き、気づけば化け物は消滅していた。
それが現実なのか、死の間際に見た幻覚なのか――答えが出ないまま、一夜が明けた。

「……夢じゃ、ないよな」

朝日が差し込む自室で、零は自分の右手を見つめる。
意識を集中すると、脳裏にあの“画面”が浮かび上がった。

《能力ガチャ:待機中》
《所持スキル:5》
《再使用:可能》

はっきりと表示される無機質な文字列。
どうやら、昨日の出来事は現実らしい。

「能力者、か……」

ニュースで見たことはある。
モンスター出現と同時に現れ始めた“超常の存在”。
炎を操る者、異常な身体能力を持つ者、回復能力を持つ者――。

だが、能力者は特別な存在だと思っていた。
選ばれた一部の人間だけがなれるものだと。

(まさか、俺が……)



学校へ向かう途中、異変は再び起こった。

駅前の交差点。
人通りの多いはずの場所が、異様なほど静まり返っている。

「……?」

足を止めた瞬間、空気が震えた。

次の瞬間、アスファルトが割れ、
黒い影が地面から這い出てくる。

「また……モンスター!?」

昨日の化け物より小さいが、明らかに人間ではない。
周囲から悲鳴が上がり、人々が一斉に逃げ出す。

零も後ずさった、その時だった。

「下がれ!」

鋭い声と共に、誰かが前に出た。

スーツ姿の青年。
年は二十代半ばだろうか。
彼は手をかざし、低く呟く。

「――《発火》」

次の瞬間、空中に炎が生まれ、モンスターを包み込んだ。
火柱が上がり、化け物は断末魔を上げて消滅する。

一瞬の出来事だった。

「……能力者」

零の口から、自然とその言葉が漏れる。

青年は振り返り、零を鋭く見た。

「一般人か? ここは危険だ、早く離れろ」

だが――その視線が、零の違和感に気づいた。

「……いや。お前、能力者だな?」

心臓が跳ねる。

「え……?」

「隠そうとしても無駄だ。魔力反応が出てる」

青年は眉をひそめ、慎重に距離を詰めてくる。

「名前は?」

「天城、零です」

「俺は統制局所属の能力者、相馬迅。ランクはCだ」

統制局。
ニュースで聞いたことがある。能力者を管理する政府組織だ。

「昨日、覚醒したばかりだろ?」

なぜ分かる。
零が黙っていると、相馬は溜息をついた。

「最近多いんだ。無自覚な新規覚醒者が」

相馬は周囲を警戒しながら、続ける。

「能力は?」

零は一瞬、迷った。
だが、正直に答えることにした。

「……ガチャ、です」

「は?」

相馬が怪訝な顔をする。

「能力ガチャ。引くと、能力が手に入ります」

沈黙。

「……冗談じゃないよな?」

「俺も、そう思いたいです」

零は意識を集中させ、ガチャ画面を展開した。

《能力ガチャ》
・使用回数:無制限
・クールタイム:なし
・排出対象:全能力
・レアリティ:存在しない

相馬の顔色が、明らかに変わった。

「……おい。最後の一文、なんだ」

「分かりません。でも、昨日からずっとこうです」

相馬は喉を鳴らし、信じられないものを見る目で零を見る。

「通常、能力者は一つ、多くても二つだ。
 しかも成長には限界がある」

「でも、俺は……」

零は昨日獲得したスキルを思い出す。

完全適応。
能力複製。
成長無限化。
確率操作(極)。
概念耐性。

どう考えても、異常だった。

「一度、引いてみろ」

相馬の声は、半ば震えていた。

零は頷き、心の中でガチャを引く。

《能力ガチャ:実行》
《スキル抽選中……》

光が弾け、文字が浮かぶ。

《獲得スキル》
・空間把握(極)

その瞬間、世界が“立体的”に見えた。

建物の中、地下、遠くの路地。
魔力の流れ、人の位置、危険度。

「……視える」

「……は?」

相馬は言葉を失っていた。

「今引いたばかりで、もう使えるのか……?」

零は息を呑む。

(これが、俺の能力……)

相馬はしばらく沈黙した後、低く言った。

「天城零。お前は――」

一拍置いて。

「この世界で、一番危険な能力者だ」

零は苦笑する。

「それ、褒めてます?」

「警告だ」

相馬は真剣な目で告げた。

「その力、必ず狙われる。
 魔人、能力者、そして……神にすらな」

神。

その言葉に、零の背筋が冷えた。

だが同時に、胸の奥が熱くなる。

(――なら)

零は静かに拳を握る。

(全部引いて、全部乗り越えるだけだ)

世界最悪のガチャは、
今、確かに回り始めていた。
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