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第1章 覚醒者たち
第2話 最初の一回転は、世界を壊す色だった
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統制局能力者・相馬迅の案内で、天城零は街外れの臨時封鎖区域に連れて来られていた。
元はショッピングモールだった場所。
今はバリケードと警告テープに囲まれ、人の気配はない。
「ここは最近、低級モンスターが頻発している」
相馬は端末を操作しながら説明する。
「新人能力者の実地確認にも使われてる。……本来は、な」
意味深な視線が零に向けられる。
「俺、場違いじゃないですか」
「正直に言う。
お前を“新人枠”に入れていいか、上が揉めてる」
零は苦笑した。
「ですよね」
◆
モンスターにはランクがある。
相馬は簡易ホログラムを表示した。
「能力者・モンスター共通の危険度ランクだ」
――E・D・C・B・A・S・EX。
「一般人が対処できるのはEまで。
D以上は能力者案件だ」
「能力者側も同じ?」
「ああ。
能力者の初期覚醒は、ほぼEかD。
努力と実戦で上がっていく」
相馬は一拍置き、続けた。
「俺はC。炎系能力者としては、上の下だ」
零は頷いた。
「……俺は?」
相馬は即答しなかった。
「測定不能、だ」
「え」
「能力が多すぎる。
通常、ランク測定は“主能力”基準だが――」
相馬は零を見据える。
「お前には、主が存在しない」
その言葉の重みを、零はまだ理解しきれていなかった。
◆
その時だった。
――ギィィ……。
金属が引き裂かれる音。
ショッピングモールの自動ドアが、内側から歪む。
「来るぞ」
相馬が前に出る。
だが、零は足を止めなかった。
「……俺に、やらせてください」
相馬が振り返る。
「初戦だぞ」
「だからです」
零は自分の胸の鼓動を感じていた。
恐怖はある。
だが、それ以上に――確かめたかった。
(俺は、どこまでできる)
ドアが吹き飛び、
四足のモンスターが姿を現す。
犬に似た体躯。
だが皮膚は黒く硬質で、目は赤く濁っている。
「Dランク・魔獣型だ」
相馬が低く告げる。
「油断するな」
零は一歩、前に出た。
「……ガチャ」
心の中で念じる。
《能力ガチャ:起動》
その瞬間。
――世界が、暗転した。
◆
いつもと違う。
今までのガチャは、
即座に文字が表示されるだけだった。
だが今回は違った。
暗闇の中、
巨大な“筐体”が現れる。
金、銀、赤、青――
無数の光が渦を巻き、
スロットのように回転する。
《レア演出:確定》
相馬が息を呑む。
「……おい。今の反応、見たか?」
零の耳には、別の音が聞こえていた。
――ゴトン。
何かが“落ちた”音。
《排出完了》
暗闇が晴れ、
文字が浮かび上がる。
《獲得スキル》
・破壊権限(限定)
一瞬、理解できなかった。
「……破壊?」
次の瞬間、
情報が脳に流れ込む。
――対象の構造的弱点を認識し、
――存在の“壊し方”を理解する。
零の視界が変わった。
モンスターの身体が、
無数の“線”で分解されて見える。
「……見える」
相馬が叫ぶ。
「零! 来るぞ!」
モンスターが跳躍した。
速い。
だが――遅く見える。
零は、ただ一歩踏み出した。
拳を、突き出す。
衝撃は、なかった。
触れた瞬間、
モンスターは“崩れた”。
血も、悲鳴もない。
存在そのものが、分解され、消失する。
……静寂。
◆
相馬は、言葉を失っていた。
「……Dランクを、素手で……?」
零は自分の手を見る。
震えてはいない。
「今の……俺がやったんですよね」
「ああ」
相馬は、ゆっくり息を吐いた。
「間違いなく」
沈黙の後、相馬は端末を操作する。
「討伐記録、完了。
……ランク評価は――」
彼は画面を見て、固まった。
「……EX?」
零が首を傾げる。
「EX?」
「本来、測定不能や災害級に使われる暫定ランクだ」
相馬は、乾いた笑いを漏らした。
「新人で、これは前例がない」
零は苦笑する。
「やっぱり、危険ですか」
相馬は、はっきりと頷いた。
「危険だ。
だが同時に――」
彼は真剣な目で言った。
「世界を救える、唯一の可能性でもある」
零は空を見上げた。
モンスター。
能力者。
魔人。
そして、神。
(全部、相手にすることになるんだろうな)
だが、不思議と恐怖はなかった。
胸の奥で、
ガチャが回る音がする。
――次は、何が出る?
世界最悪の能力は、
まだ、始まったばかりだった。
元はショッピングモールだった場所。
今はバリケードと警告テープに囲まれ、人の気配はない。
「ここは最近、低級モンスターが頻発している」
相馬は端末を操作しながら説明する。
「新人能力者の実地確認にも使われてる。……本来は、な」
意味深な視線が零に向けられる。
「俺、場違いじゃないですか」
「正直に言う。
お前を“新人枠”に入れていいか、上が揉めてる」
零は苦笑した。
「ですよね」
◆
モンスターにはランクがある。
相馬は簡易ホログラムを表示した。
「能力者・モンスター共通の危険度ランクだ」
――E・D・C・B・A・S・EX。
「一般人が対処できるのはEまで。
D以上は能力者案件だ」
「能力者側も同じ?」
「ああ。
能力者の初期覚醒は、ほぼEかD。
努力と実戦で上がっていく」
相馬は一拍置き、続けた。
「俺はC。炎系能力者としては、上の下だ」
零は頷いた。
「……俺は?」
相馬は即答しなかった。
「測定不能、だ」
「え」
「能力が多すぎる。
通常、ランク測定は“主能力”基準だが――」
相馬は零を見据える。
「お前には、主が存在しない」
その言葉の重みを、零はまだ理解しきれていなかった。
◆
その時だった。
――ギィィ……。
金属が引き裂かれる音。
ショッピングモールの自動ドアが、内側から歪む。
「来るぞ」
相馬が前に出る。
だが、零は足を止めなかった。
「……俺に、やらせてください」
相馬が振り返る。
「初戦だぞ」
「だからです」
零は自分の胸の鼓動を感じていた。
恐怖はある。
だが、それ以上に――確かめたかった。
(俺は、どこまでできる)
ドアが吹き飛び、
四足のモンスターが姿を現す。
犬に似た体躯。
だが皮膚は黒く硬質で、目は赤く濁っている。
「Dランク・魔獣型だ」
相馬が低く告げる。
「油断するな」
零は一歩、前に出た。
「……ガチャ」
心の中で念じる。
《能力ガチャ:起動》
その瞬間。
――世界が、暗転した。
◆
いつもと違う。
今までのガチャは、
即座に文字が表示されるだけだった。
だが今回は違った。
暗闇の中、
巨大な“筐体”が現れる。
金、銀、赤、青――
無数の光が渦を巻き、
スロットのように回転する。
《レア演出:確定》
相馬が息を呑む。
「……おい。今の反応、見たか?」
零の耳には、別の音が聞こえていた。
――ゴトン。
何かが“落ちた”音。
《排出完了》
暗闇が晴れ、
文字が浮かび上がる。
《獲得スキル》
・破壊権限(限定)
一瞬、理解できなかった。
「……破壊?」
次の瞬間、
情報が脳に流れ込む。
――対象の構造的弱点を認識し、
――存在の“壊し方”を理解する。
零の視界が変わった。
モンスターの身体が、
無数の“線”で分解されて見える。
「……見える」
相馬が叫ぶ。
「零! 来るぞ!」
モンスターが跳躍した。
速い。
だが――遅く見える。
零は、ただ一歩踏み出した。
拳を、突き出す。
衝撃は、なかった。
触れた瞬間、
モンスターは“崩れた”。
血も、悲鳴もない。
存在そのものが、分解され、消失する。
……静寂。
◆
相馬は、言葉を失っていた。
「……Dランクを、素手で……?」
零は自分の手を見る。
震えてはいない。
「今の……俺がやったんですよね」
「ああ」
相馬は、ゆっくり息を吐いた。
「間違いなく」
沈黙の後、相馬は端末を操作する。
「討伐記録、完了。
……ランク評価は――」
彼は画面を見て、固まった。
「……EX?」
零が首を傾げる。
「EX?」
「本来、測定不能や災害級に使われる暫定ランクだ」
相馬は、乾いた笑いを漏らした。
「新人で、これは前例がない」
零は苦笑する。
「やっぱり、危険ですか」
相馬は、はっきりと頷いた。
「危険だ。
だが同時に――」
彼は真剣な目で言った。
「世界を救える、唯一の可能性でもある」
零は空を見上げた。
モンスター。
能力者。
魔人。
そして、神。
(全部、相手にすることになるんだろうな)
だが、不思議と恐怖はなかった。
胸の奥で、
ガチャが回る音がする。
――次は、何が出る?
世界最悪の能力は、
まだ、始まったばかりだった。
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