世界最強はガチャで引いた――無限排出スキルで現代を救え

羽蟲蛇 響太郎

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第2章 魔神観測領域

第13話 ――ようやく、我を引いたか

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それは、宣告だった。

空が割れ、
白い光が、地上へと降り注ぐ。

「――修正執行を開始する」

神の使徒は、空中に立っていた。

白衣が風もないのに揺れ、
背後には幾重にも重なった光輪。

「対象、魔神候補・天城零」

「並びに――
 歪曲存在・眷属個体」

澪が、即座に零の前に立つ。

《忠誠領域》が、全開になる。

「……来ます」

「分かってます」

零は、深く息を吸った。

(……勝てるかどうかじゃない)

(やるしかない)



最初の一撃は、
“攻撃”ですらなかった。

使徒が指を下ろす。

それだけで――
空間が、零たちを“押し潰そう”とする。

「――っ!」

澪が、歯を食いしばる。

衝撃操作。
防御。
干渉。

すべてが、
“意味を持たない”。

「……効かない?」

「否」

使徒は、淡々と答える。

「効く前に、
 “成立させていない”」

零が踏み込む。

《存在切断》

だが――

刃は、使徒に届かない。

「……切れない?」

「君の力は、
 この位相に達していない」

次の瞬間。

零の視界が、白に染まった。



気づけば、
地面に叩きつけられていた。

呼吸が、できない。

(……くそ)

立ち上がろうとするが、
身体が言うことを聞かない。

澪が、零を庇うように立つ。

「零様から……
 離れてください……!」

その瞬間。

光が、澪を貫いた。

「――ッ!!」

血が、宙に散る。

澪が、崩れ落ちる。

「澪さん!!」

零の声が、掠れる。

使徒は、感情なく告げる。

「眷属個体、機能停止」

「修正完了」

零の中で、
“何か”が切れた。



(……また、奪うのか)

(世界の都合で)

(隣にいる存在を)

零は、震える手で――
ガチャを引いた。

《能力ガチャ:起動》

だが、
画面は、いつもと違っていた。

回転しない。

光らない。

代わりに――
深淵が、開いた。

《――深層演出:解放》

その瞬間。

“声”が、零の内側から響いた。

――ようやく、我を引いたか。

低く、
愉快そうな声。

零の意識が、引き込まれる。

(……誰だ)

――我か?

――我は、お前だ。

――否……
――お前が、我だ。

世界が、反転する。



零の足が、地面についた。

だが――
姿勢が、違う。

背筋が伸び、
視線が、使徒を“見下ろして”いる。

「……?」

使徒が、初めて反応した。

「観測不能……?」

零の口が、勝手に動く。

「安心しろ」

声が、
零のものではなかった。

重く、
底知れず。

「我は、
 “真の魔神”」

「今は――
 憑いているだけだ」



一歩。

それだけで、
使徒の光輪が軋む。

「……存在位相、急上昇」

使徒が後退する。

「不正……
 規定外……」

魔神は、笑った。

「神の使いよ」

「お前たちは、
 “可能性”を嫌う」

「だが――」

零の身体が、
空間を踏み砕く。

「可能性とは、
 飲み込むものだ」

次の瞬間。

拳が、使徒に届いた。

音は、なかった。

光が、
“内側から”崩壊する。



使徒は、
地面に叩き落とされた。

白衣は裂け、
光輪は砕け散る。

「……な……」

瀕死。

完全な敗北。

魔神は、零の身体を通して告げる。

「覚えておけ」

「神にとって、
 お前は“敵”ではない」

一歩、近づく。

「“災厄”だ」



魔神の気配が、薄れる。

零の膝が、崩れ落ちた。

「……はぁ……はぁ……」

澪が、かすかに動く。

「……零……様……」

零は、必死に彼女を抱き起こす。

「大丈夫です……
 生きてます……」

だが、
世界はもう、以前と同じではない。

遠くで、
神が“確信”した。

――観測対象、危険度更新。

――魔神、覚醒兆候あり。

零は、
自分の手を見つめる。

(……中に、いる)

(俺の中に)

ガチャは、
もう“運任せの能力”ではなかった。

それは――
封印だった。
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