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第2話 女子トイレは戦場、そして逃げ場がない
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――限界は、突然来る。
ホームルームが終わって五分。
俺は静かに、しかし確実に死を予感していた。
(……やばい)
理由は単純だ。
トイレに行きたい。
男子として十七年間生きてきた俺は、
トイレという行為を「深く考えるもの」だと思っていなかった。
だが今は違う。
(男子トイレは論外)
(女子トイレ……?)
(いや無理だろ!?)
問題は、
この世界では俺が女子として認識されているという事実だった。
周囲の女子生徒は、
何の警戒もなく、
何の疑問もなく、
俺を「同類」として扱ってくる。
「佐倉さん、次体育だよね?」
「更衣室一緒だね~」
「え」
一気にHPが削られた。
「……あ、ああ、うん」
返事をしながら、
心の中で全力で叫ぶ。
(無理無理無理無理!!)
休み時間。
俺は逃げるように教室を出た。
目的地は一つ。
女子トイレ。
廊下の角を曲がったところで、
例のピクトグラムが見えた瞬間、足が止まる。
「…………」
心臓が早鐘を打つ。
(俺、ここ入るの?)
(人生で一度も入ったことない場所だぞ?)
(というか倫理的にアウトじゃない?)
だが――
「……限界」
背に腹は代えられない。
俺は意を決して、女子トイレの中に足を踏み入れた。
「……」
――静かだ。
思っていたより、ずっと普通。
清潔で、明るくて、
恐ろしいほど日常的。
(……意外と……)
「佐倉さん?」
「うひゃっ!?」
背後から声をかけられ、
俺は情けない悲鳴を上げた。
振り返ると、
そこにいたのはクラス委員長の宮坂 彩音。
黒髪、メガネ、真面目枠。
昨日まで「ちょっと近寄りがたい女子」だった存在。
「……どうしたの? 顔赤いけど」
「い、いや、その……」
言い訳が浮かばない。
「……緊張してる?」
「え?」
「転校初日みたいなものだし。
慣れないよね、色々」
――転校生設定、いつの間にか確定してる!?
俺が何も言えずにいると、
宮坂はにこっと微笑んだ。
「大丈夫。
そのうち慣れるよ」
(慣れたら人として終わりだと思う)
個室に入る。
鍵をかける。
……そして、絶望した。
(……どうやるんだっけ)
物理的な構造は理解している。
だが、実践経験がゼロ。
数分後。
俺は人生で一番疲れた顔で、個室を出た。
「……生き延びた」
手を洗い、
鏡を見る。
そこには、
頬を赤らめ、どこか涙目の美少女が映っていた。
「……最悪だ」
教室に戻ると、
女子たちが自然に輪を作っていた。
「佐倉さん、席こっち空いてるよ!」
「一緒にお昼食べよ!」
「……あ、うん」
流れで座る。
距離が近い。
近すぎる。
(男子の時は半径一メートル保たれてたのに……)
会話が、
普通に回っている。
コスメ。
ドラマ。
クラスの男子の噂。
(俺、その“男子側”だったんだが)
「佐倉さんって、彼氏とかいるの?」
爆弾投下。
「いっ!? いない!!」
即答。
周囲が笑う。
「可愛いのに意外~」
「照れ方がガチだね」
(違う! 違うんだ!
これは照れじゃなくて精神的混乱だ!)
そして――
「……あ」
体育の時間が来た。
更衣室。
扉の前で、
俺は完全に固まった。
「佐倉さん? 入らないの?」
背中を押される。
逃げ場は、ない。
――こうして俺は、
元男子として越えてはいけない一線を、
世界の強制力によって越えさせられることになる。
(この学園生活、
俺の正気が先か、
世界の説明が先か――)
答えは、
まだ出ない。
ホームルームが終わって五分。
俺は静かに、しかし確実に死を予感していた。
(……やばい)
理由は単純だ。
トイレに行きたい。
男子として十七年間生きてきた俺は、
トイレという行為を「深く考えるもの」だと思っていなかった。
だが今は違う。
(男子トイレは論外)
(女子トイレ……?)
(いや無理だろ!?)
問題は、
この世界では俺が女子として認識されているという事実だった。
周囲の女子生徒は、
何の警戒もなく、
何の疑問もなく、
俺を「同類」として扱ってくる。
「佐倉さん、次体育だよね?」
「更衣室一緒だね~」
「え」
一気にHPが削られた。
「……あ、ああ、うん」
返事をしながら、
心の中で全力で叫ぶ。
(無理無理無理無理!!)
休み時間。
俺は逃げるように教室を出た。
目的地は一つ。
女子トイレ。
廊下の角を曲がったところで、
例のピクトグラムが見えた瞬間、足が止まる。
「…………」
心臓が早鐘を打つ。
(俺、ここ入るの?)
(人生で一度も入ったことない場所だぞ?)
(というか倫理的にアウトじゃない?)
だが――
「……限界」
背に腹は代えられない。
俺は意を決して、女子トイレの中に足を踏み入れた。
「……」
――静かだ。
思っていたより、ずっと普通。
清潔で、明るくて、
恐ろしいほど日常的。
(……意外と……)
「佐倉さん?」
「うひゃっ!?」
背後から声をかけられ、
俺は情けない悲鳴を上げた。
振り返ると、
そこにいたのはクラス委員長の宮坂 彩音。
黒髪、メガネ、真面目枠。
昨日まで「ちょっと近寄りがたい女子」だった存在。
「……どうしたの? 顔赤いけど」
「い、いや、その……」
言い訳が浮かばない。
「……緊張してる?」
「え?」
「転校初日みたいなものだし。
慣れないよね、色々」
――転校生設定、いつの間にか確定してる!?
俺が何も言えずにいると、
宮坂はにこっと微笑んだ。
「大丈夫。
そのうち慣れるよ」
(慣れたら人として終わりだと思う)
個室に入る。
鍵をかける。
……そして、絶望した。
(……どうやるんだっけ)
物理的な構造は理解している。
だが、実践経験がゼロ。
数分後。
俺は人生で一番疲れた顔で、個室を出た。
「……生き延びた」
手を洗い、
鏡を見る。
そこには、
頬を赤らめ、どこか涙目の美少女が映っていた。
「……最悪だ」
教室に戻ると、
女子たちが自然に輪を作っていた。
「佐倉さん、席こっち空いてるよ!」
「一緒にお昼食べよ!」
「……あ、うん」
流れで座る。
距離が近い。
近すぎる。
(男子の時は半径一メートル保たれてたのに……)
会話が、
普通に回っている。
コスメ。
ドラマ。
クラスの男子の噂。
(俺、その“男子側”だったんだが)
「佐倉さんって、彼氏とかいるの?」
爆弾投下。
「いっ!? いない!!」
即答。
周囲が笑う。
「可愛いのに意外~」
「照れ方がガチだね」
(違う! 違うんだ!
これは照れじゃなくて精神的混乱だ!)
そして――
「……あ」
体育の時間が来た。
更衣室。
扉の前で、
俺は完全に固まった。
「佐倉さん? 入らないの?」
背中を押される。
逃げ場は、ない。
――こうして俺は、
元男子として越えてはいけない一線を、
世界の強制力によって越えさせられることになる。
(この学園生活、
俺の正気が先か、
世界の説明が先か――)
答えは、
まだ出ない。
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