皇国戦記

SHOUKICHI

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第1話「開戦」

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7月8日 スルバ王国、レトスア皇国国境付近


スルバ王国陸軍第1軍集団本部


「作戦開始」

指揮官の作戦開始との号令で多数の砲が火を吹き大規模の兵力が国境を越えてレトスア皇国軍への攻撃を開始した。






同日 レトスア皇国 陸軍省


「おい!どうなってる!?状況は!?」

「分からない!!スルバ王国との国境付近にいた全部隊からの通信が途絶している!」

「故障か!?」

「国境付近の部隊全てだぞ!?そんな訳あるか!」


陸軍省内は大騒ぎだった。

通信途絶の原因どころか、どの部隊からの通信が途絶えているのか等ほぼ全ての事が把握出来ていなかった。


同省 大臣室


「とにかく、状況把握に全力を尽くすべきだな。
それにしてもこれは流石にまずくないか?単なる故障などとは考えられないが…まさか、スルバ王国が仕掛けてきたのか……」


副大臣であるエムイ・ジンは、いたって冷静に問い掛ける。


「あぁ…スルバ王国が仕掛けてきたとみるべきだ。インス国側に張り付けてる二個軍集団の内の一個軍集団に対していつでも移動出来るようには指示しておけ、本土にいる二個軍集団の内の一個軍集団にも同じ指示を出しておけ」


陸軍大臣である彼、ファミス・ネスはこの状況をあまり信じたくなかったものの指示を出していく。






同日 スルバ王国 レトスア皇国大使館


「貴国は…貴国はそれでよろしいのですね?」


凍ったような空気の中でレトスア皇国の外交官は問う。


「えぇ、もう一度言った方がよろしいですか?我が国は貴国に対し宣戦を布告します。それに、おそらく既に戦闘は始まっていると思いますよ?まぁ貴国の軍が我が国の軍に勝てているとは思いませんがね」


スルバ王国の外交官は相当この戦争に勝つ自信があるのかニヤついた顔でそう言ってきたのだ。


これより正式にレトスア皇国とスルバ王国は戦争に入ったが、あの外交官の相当な自信にはしっかりとした理由があったのだろう。これから先、レトスア皇国軍は敗走を重ねる事になる。






同日 レトスア皇国 首都アタラ 孤児院


「ねぇ!ハイト!起きてハイト!!」

「痛い痛い痛い!なんだよ、ていうかまだ7時じゃないか…軍にいくのは明日だろ?今日は何も無いじゃないか」


いきなり部屋に入るなりハイトを叩き起こしたセルカは興奮した声で言う。


「大変な事になってるから!早く下に降りて来て!ラジオの前!!早く!!!」


いきなり叩き起こされまだ目が覚めていないハイトは無理矢理体をおこして階段を降りるとラジオの音声が聞こえてくる。


(ラジオ?何でこんな所まで聞こえてくるんだ?ラジオはここからちょっと離れてるはずだぞ…音を大きくしすぎだろ、本当に朝からなんなんだよ……)


ハイトはボーッとそんなことを考えならがもラジオへ向かうと孤児院の先生と子供が全員集まっている。


「何?皆で集まって、後ラジオうるさいよ?」

「いいからラジオを聞いて!」


文句を言うもセルカにひと蹴りされ初めてラジオから流れる音声に耳を傾ける。


「えー、臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。
大本営陸海軍部発表、本8日未明スルバ王国国境付近において、皇国陸海軍はスルバ王国軍と戦闘状態に入れり。皇国陸海軍はスルバ王国軍と戦闘状態に入れり。また、皇国政府が本8日未明にスルバ王国より宣戦布告を受けたと発表しております。

更に、大本営陸海軍部の発表では国境付近で幾つか戦闘があったものの、全ての戦闘で勝利したとの事です。繰り返します。

大本営陸海軍部発表~~~」


「ねぇ、これってさ私達明後日から軍に戻るじゃない?配属される部隊によっては、、戦うって事?」

「まあ、、その、大丈夫だって、ラジオでも戦いに勝ったって言ってたし」


セルカにそう答えるハイトだったが、あまり自信がある訳ではなかった。
「いざとなれば国の為に」と意気込んでいたものの自分やセルカが死ぬかもしれない不安と全ての戦闘に勝利したのだから大丈夫という安心の2つのみがハイトの心の中を支配していた。


音が鳴った、玄関の戸が開いた音だ。
誰かと思いハイトは玄関へ向かうと男の声が聞こえてきた。


「ハイト・ノベティ!セルカ・モア!居るか!」


玄関へ行くとそこにいたのは図体が大きい2人の憲兵だった。

恐る恐る口を開く


「あの、私がハイト・ノベティですが…何か?」

「貴様がハイト・ノベティか、もう一人、セルカ・モアは?」


間髪入れずに憲兵から大きな声で返事が返ってくる。そうしていると玄関へ来たセルカが自分がセルカだと告げると、これまた間髪入れずに憲兵が口を開く。


「よし、これより直ぐに荷物をまとめろ!明後日の予定だった正規部隊への配属は変更となった!詳しい事は後に話す」


ハイトとセルカにとってはいきなりの事であるし、何より相手は憲兵だった為に更に混乱した。


「急がんかぁ!」

「「はい!」」





「よし、準備はできたな。出発する、貴様らは車の後ろへ乗れ」


憲兵はそういうと直ぐに孤児院を出て門前に止めている車に乗り込む。これに続いて乗ろうとすると後ろの孤児院の先生から声を掛けられた


「あなた達、帰ってきなさい。死んではいけません。特にハイト君、間違っても自分を犠牲にしてでも敵を殺す様な事、思わないように。良いですね?」

「分かったよ先生。じゃあ俺行ってくるね」

「私も絶対に帰ってくるから、またご飯作ってね?先生」


悲しそうな顔でそう言った先生に対して2人は笑顔でそう言って車に乗り込んだ。
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