皇国戦記

SHOUKICHI

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第3話「噂か真実か」

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7月14日 輸送船


「なあ、ハイト。」

「何ですか?タース兵長」

「この輸送船には俺達だけではなく、後方支援中隊の衛生科が乗船している」

「ええ、そうですね…」


何かおかしな事を言い出すぞと心構える


「見に行かないか?」

「何言ってるんですか?」


ほら来た!と思うと同時に幻滅する


「だってよぉ~衛生科には女が多い、女が見たいじゃねーか。あわよくば話たいじゃねーか。だからさ、な?見に行こーぜ?な?」

「はぁ…」


ハイトは大きくため息をつくも体育館以来セルカに会えていないしもしかしたら会えるかもしれないと思い渋々分かったと言う


「良し!この時間帯なら食堂に多く居るだろ、直ぐに行くぞ!!」

「えぇ…」


タースは部屋を出て食堂の方へ走って行く。そしてそれを追うように行く。


「おい!おい見ろ!」

「何ですか?何ですか?」


ハイトは面倒くさそうに答え、タースが指差す方を見るとそこには食事をしている衛生科の人間がいた。そして何より女子がいた。


「おぉー案外可愛いのが多いんだな、あっちに着いたらわざと負傷するのも良いかもなぁ。な、ハイト」

「何言ってるんですか!駄目に決まってるじゃないですか!!」

「冗談だよ…冗談通じないと戦場でやってられないよ?精神おかしくなっちゃうからね?」

「……」


(もうこの人は自分をバカにするのを趣味にしているのではないか?)てハイトは思うが呆れてため息すら出ない。


「あ!ハイト!」


後ろから高めの聞き慣れた声が聞こえた。


「セルカ!久々に会えた気がするよ」

「本当ね。私これからご飯だし、一緒に話さない?」

「あぁ…分かったよ。あの~兵長、失礼します」

「おい、嘘だろハイト…お前、、」


死んだような目をしているタースを置いておきハイトとセルカは食堂に入っていく。


「ハイトは食べないの?」

「うん。もう班の人達と食べたからね」

「へぇ~じゃあいただきます。んで、どう?部隊には慣れた?」


セルカはカレーを食べつつ幸せそうな顔で聞く。


「慣れないよ、行きなり放り込まれた班長がおかしいからね。セルカは?どう?」

「何それ。私はね、班長が優しくて、他の班の人達も優しくしてくれてるし。慣れてきたよ。」


笑いながらもカレーの事もあり幸せで嬉しそうに語る?


「良かったよ」


それを見て嬉しくなるハイトだった。




「じゃあね、ハイト」

「あぁ、じゃあな」


セルカはカレーを食べ終わり食堂を出た通路でセルカとハイトは別れる


「あ、そうだハイト」

「ん?」

「その…あっちで戦闘になったりしても私、ハイトの救護とかしたくないからね!」


ハイトが後ろを振り向くと少し照れくさそうにそう言って直ぐに部屋に戻っていくセルカが居たが、その背中は少し寂しそうだった。






7月15日 レトスア皇国 ソルト港


「え、何これ…」


ハルトの目に映るのは港のあちこちに居るボロボロの服を着て煤で汚れている難民の人々で船から見える限りの店は全て閉まっている。


「あ~本当だったんだ」


エラムが小声でそう言った。


「え、どういう事なんですか?」

「そういえば、あの時兵長に止められたもんね。じゃあ今言ってあげるよ」


エラムは少し笑った顔でハイトに答えたが直ぐに深刻そうな顔になりこう言った。


「開戦直後にあった幾つかの戦闘、発表では勝った事になってるけど実は負けたらしいんだよ。それも全ての戦闘で」


ハイトはエラムが何を言っているのか一瞬分からなかった。

発表であった全ての戦闘での勝利、これが全て負けていたと。だがあの港や町を見れば理解は容易かった。


「え、じゃあ自分達が行くのって……ていうか味方は?味方はどうなったんですか?後退して今も戦っているんですか?」


「噂によれば壊滅したらしいよ。今はインス国との国境に居た2個軍集団の内の1つを最前線に送って食い止めてるけどジリジリと押されてるらしい」


「そんな…今の皇国は劣勢って事ですか……」


ハイトはこの戦争が始まって以来混乱と不安にしか襲われていない。


船から降りると整列させられこれより最前線へ向かい敵部隊と交戦するとの旨が伝えられ直ぐに移動を開始した。


「あのタース兵長、交戦するって言ってましたけど…その……」

「何、やっぱり怖いの?お?お?おぉ?」


ハイトの情けない程の声に相変わらずニヤニヤしつつおちょくるタースである。


「まあ、攻勢には出ずに基本的に来た敵を撃つだけだよ、安心して俺の横で歩兵銃を撃っておけば良いから。だから安心しろって、しかもお前だけじゃなくて皆初めての戦争だからな?そうやって色々喋れてるだけまだ良いんだよ。」


(たまには上に立つ人間らしい所あるんだな)と思いつつもやはり不安は消える事無く襲ってくるし、開戦からのゴタゴタであまり寝れていない事から疲れが溜まっている。


それから30分程歩いたのだろうか、前に小さめの山が見えてきた。


「お、見えたぞ!あれがサド要塞、俺達が守る陣地だ。」


タースが指を差した方向を見るとそこには小さい山だか良く見ると山の途中に幾つかの鉄条網、山頂付近には多数の機関銃等で要塞化されていた。


要塞化された山の中には何本かの整備された通路があったりなど多少の砲撃なら耐えることが出来る造りとなっていた。

この後、この要塞を攻略せんと迫る敵王国陸軍とこれを迎撃する皇国陸軍によるサド要塞攻防戦は翌朝に火蓋が切って落とされる。
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