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青年期:法国
国落とし
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咆哮が轟く。
それは戦士達の咆哮だ。
敵を呪い、己を鼓舞し、地面を踏みしめながら走っていく戦士達の力強さは味方に大きな力を与え、敵の士気を下げる効果がある。
法国で軍事行動時に使用されることの多い鎧を着用し、胸に龍の紋様をつけた男達が手にしている武器は木剣。
敵を殺すには全くもって頼りのない武器ではあるが、敵を殺さずに無力化したいのであればこれ以上ないほど便利な武器である。
彼等はハイトの指示によって法国に点在していた兵士達、その中で選りすぐりの千人をハイトはいつでも動かせるように聖都の中へと待機させていたのだが、朝日が上がると同時にその千人が一斉に動き出したのだ。
彼等は魔法や己の力によって一人一人が大きな音を立て、時には修復が楽な誰も住んでいない家や土地などを破壊したりして大教会へと一心不乱に突き進んでいた。
しかし千人の兵士と言われれば十分な脅威に聞こえるだろうが、聖人を数百大規模で確保しているゲリシンがこの程度で狼狽えるはずもない。
とはいえゲリシン配下の貴族達は怯えるかもしれないし、一般住民は避難するものも出るだろうが時間をかけられればそのうち取り押さえられるだろう。
今回の兵士たちによる威嚇はあくまでも宣戦布告、ハイトが完全に敵として前に立つ事をゲリシンに表明したに過ぎない。
側からみれば国家転覆を企てるクーデター、内情をそれなりに知るものからすれば兄弟喧嘩、全てを知るもの達からは殺し合いと違った見方で捉えられる両者の戦いの火蓋はレネスの手によって落とされる。
「魔法は好きではないのだが……まぁ致し方あるまい」
大教会の頂上から敵の動向を見守りながら、レネスは魔法陣に魔力をこめ続ける。
最大火力を誇るエルピスではなくレネスがわざわざ魔法を放つ理由は、どのような理由があるにしろ人類の聖地とも呼べる法国の重要拠点に対してエルピスが魔法を撃つ行為自体危険だからだ。
レネスが放った魔法は植物による拘束魔法であり、瞬間的に王都が意志を持って蠢く植物達に蹂躙されていく。
「さて、どうでるかな?」
植物による拘束は対象者の魔力量に応じてその締め付ける強さを強化するような術式を組んでいる。
なので聖人クラスの魔力を持っていたとすれば、ある程度抵抗するような素振りが見れてもおかしくないはずである。
一番最初に狙ってくるとすれば魔法を使っている自分のはず、だがレネス自身は己にどのような障壁も展開してはいなかった。
敵から狙われることを分かっていながらそのようなことをするとは自殺願望でもあるのかと疑ってしまうところだが、実際問題こうでもしなければ敵は攻撃してくることはないだろう。
レネスの正体が仙桜種である事がバレているかどうかは別として、これほどの魔法を行使した人物がわざわざ身体を見せている時点で罠である可能性は極めて高いからだ。
そしてその予想通りに魔力をこめ続けるレネスの頭部の近くで信じられないほどの爆音が轟く。
(──ふむ、これが銃というやつか)
爆炎の中から当然のように現れたレネスはそんな事を感じながら撃たれた方向から敵の位置を把握して味方に指示を送り出す。
数秒遅れて先程の爆音と同じような音がかなり遠くから聞こえたかと思うと、自分を狙っている人間の気配がなくなったことをレネスは確認する。
「首尾の方はいいようだな」
「問題ないです。ただ師匠がそんな目立って動く必要はあったんですかね」
「私は一度既に法国を狙っていたという実績があるからな、いまさら何をしたところで大きな問題はない。エルピスは表に出てくるんじゃないぞ」
「師匠に言われなくても出ませんよ。あと多少は防御体制取ってくださいよ、もし俺が失敗したら大怪我ですよ?」
「信頼してるからな」
レネスが連絡を取ったのは聖都から離れた場所で後方支援を担当しているエルピスである。
エルピスは今回の作戦において顔を見られることすら危惧しなければいけない人物なので、こうして直接戦闘圏外から多少の手助けをするに止めなければいけない。
エルピスの仕事は危なくなった人間に対しての障壁の展開と魔力の譲渡と敵後方部隊の排除と全軍の指揮である。
「どうもありがとうございます。民間人の確保は完了しましたか?」
「もちろんだよ。いつでも転移可能だ」
「なら魔族領に飛ばす術式を起動するのでいまから10秒くらいは自分で身を守ってくださいね」
「もちろん構わないとも。どうやら敵も本格的に殺しに来たようだしな」
エルピスが転移魔法を起動しはじめるのとほぼ同時、大教会の地下が尋常ではないほどの大爆発を起こす。
聖都に存在する建造物をあらかた吹き飛ばさんばかりの勢いで放たれたその衝撃波よりも一瞬早くエルピスの転移魔法が完成していたため民間人には被害が出ないが、ハイトが用意していた兵士の何人かは巻き込まれて戦闘不能になったようだ。
だがそれでも犠牲者が出るというわけではなく、無事を確認した後に弱っている者から順番にエルピスの手によって転移が開始していた。
「さて、この爆発の原因は何だ?」
既にレネスが足の下に置いていた大教会はその姿を見るも無残なものに変えており、瓦礫が土煙を上げていく中でレネスはその原因がなんであるかを探るために目を凝らして待っていた。
よく見てみれば爆発地の元には数人の人影が目に入り、レネスはそれが聖人のなりそこないである傀儡であることに気が付く。
予想していた通りではあるが思っていたよりは早かった傀儡兵の出兵にレネスは頭の中で今回の作戦の概要を思い出す。
「お集まりいただいてありがたいわ。こんなに大勢の人を動かせるだなんて思っても居なかったわ」
嬉しそうに笑みを浮かべながら机に地図を広げたのは帝国第一皇女のエモ二。
彼女がこの場に居ることで数人が警戒するような顔を見せるが、そんな警戒心もエモ二からしてみれば面白いものである。
この場に居るのは先ほどまで共に居たエルピス達に加えて、灰猫から始まりグロリアスなどの王国の面々や法国からもハイトだけでなく数人指揮官級の人物を招いての作戦会議である。
帝国と王国と法国に加えて新たな国を作ることを既に世界中に宣言しているエルピスが同席するこの場所は、後に四大国として他国から呼ばれてもなんらおかしなことはない程の場所。
この中で唯一利権や権力に絡まないのは鍛冶神の名前と土精霊の国という後ろ盾を保持しているルミナと灰猫だけである。
故に各々が各自の言葉に対してどれだけの責任感があるかを重々承知しつつ、それでいてかつ今回の事件を無事に終了させるための算段を付けるために話し合いの場所を設けたわけである。
「これもすべては我が弟の蛮行を諫めるため、関係各所の皆様方にはご迷惑をおかけするっす。特に王国の方々には我々から深い感謝を」
ハイトが言い終わると同時に深く頭を下げると、近くにいた法国のメンバーも同じように頭を下げる。
王国からしてみれば現四大国である法国の裏側を暴き、ましてやクーデターに参加している時点で相当にリスクを背負っているにも関わらず、それでいてこの場に居るのが現国王と協会派閥最高位の人間なのだから本来はありえないほどの行動だ。
いくらグロリアスがこれから革命の起きる法国に対して返せないほどの恩義を渡せるチャンスを見つけたとはいえ、失敗すれば最悪の場合王族としてその責を問われその首に刃物が付きつけられる可能性も十二分にあることを考慮に入れると随分とリスクの高い賭けに挑んだという認識は間違いではないだろう。
「我々王国としてもゲリシン殿の蛮行には目を瞑ることはできません。微力ではありますがお力添えになれれば幸いです」
「かの有名な少年王グロリアス様がそう言ってくださると嬉しい限りっす。それとアルへオ家の皆様もありがたいっす」
「俺たちは別に構いませんよ。目的の人物に会うための障害としてゲリシンさんが居るだけですから、利害は一致しているわけですし」
エルピス達が法国へとやってきた理由は、現在敵の攻撃を受けて負傷しているアウローラを治す方法を法国の神が知っているから。
こう言ってしまえばなんではあるが、実際のところゲリシンがこの事を事前に知っていればエルピスに取り入る方法がなかったわけではないが、急を要しているエルピスとハイトがあの場所で出会ってしまった時点でゲリシンの運命はある程度決まっていると言っていい。
「それでもっす」
「……それでは一通りの話が纏まったところで作戦の概要を説明させていただきます」
エモニから語られた作戦はこうだ。
まずハイトの手先の兵士達で聖都内部でクーデターを起こしてもらい、ある程度聖都内部を混乱させ相手の対処を遅らせる。
その後聖都内にいる人間を何らかの魔法的手段によって捕縛、後に転送させ聖都内部に関係者しか存在しない状況を作り上げ、敵の最終兵器である傀儡兵の登場まで待機。
この時傀儡兵の登場を待たずにハイトの手下は情報閉鎖の為に周囲の街道の方へと移動してもらい、実力者のみが聖都内部にいる状態を作り出す。
結局のところこの世界での戦争は個人と個人の戦いの行方が全てを左右する物であり、だからこそ他者を巻き込まないように周到に準備を重ねる必要があるのだ。
その後は現れた傀儡兵を一定数まで減らしていき、ゲリシンがその姿を表すまで待機。
もし姿を表すことがなければ大魔法を用いて生徒を丸ごと瓦礫の山へと変える。
そうして作られたこの作戦だが、ふとエモニが一つだけ注意点を口にする。
「──という事でここまでは非常に簡単ですが、問題はエルピスさんがこの場にいる事を隠さなければいけない事です」
「それはそうでしょうね。全ての国に対して公平な立場をとっている今のアルヘオ家がそれほど大きな行動に出れば他国からの追求は確定的です」
「それはまぁそうだけどいままでと変わらないし別にいいんじゃ……」
「エルピス様、この場には神官である私も同席しています。つまりエルピス様が神であることを世に知らしめるかどうかは未だ未定としても、後々法国潰しに関わっていたとなれば法国との神の間に溝があると思われかねません。
人からの意見はどうでもいいというのは私も共通認識とするところですが、神相手は流石にそうもいきませんから」
一瞬自分が前線に出れないことに対して不満を述べるエルピスだったが、それに対してイリアが一切の反論を許さない口調で詰め寄っていく。
その言葉が何も間違っていないことを理解できないほどエルピスも愚かではなく、言われたことを素直に受け入れて首を縦に振るうしかない。
「そういうことならまぁ仕方ないか。なら俺の代役にはフェルと灰猫を入れて貰おうかな、二人はいい?」
「もちろん。久々にエルピスの下で戦えるね」
「私も問題ありません。何より法国は結構嫌いなので」
「灰猫には私が着くけれど異論はない?」
「いいですよ、お母様には一応ご報告させてもらいますけど」
「……ま、まぁいいでしょう」
鍛治神の娘が危険になる可能性があるというのにそれを指を咥えて放置するのは流石にエルピスとしても看過できない問題である。
ルミナは少々嫌そうな顔をするが、こればかりは仕方がない。
「セラとニルも今回は前に出ない方がいいよね、二人の顔も割れてるわけだし」
「そうなるね、今回は僕もおとなしくしているよ」
「主力戦力をほぼ落としての戦闘になるわけだけれど……勝算は正直どれくらいで考えているの?」
「愚問ですわ天使様。やるからには必勝、それが私のポリシーですの」
主力がほとんど動けない状態であっても戦力の充実ぶりは言うまでもない。
こちら側には聖人がいるのに加えて始祖種に神の眷属、ハイトが伏せていた兵士たちはそれほど戦力にはならないだろうが、彼らの存在は法国第二王女の存在と合わせて後々の言い訳づくりには非常に大きな要素となってくれる。
そして一番大きな要因となるのは仙桜種であるレネスがこちら側についているということだ。
エモ二はエルピスがかつて全力でもってレネスに相対し、その結果負けていることを知っているわけではないがそれでも仙桜種の伝え聞く話をもとに考えればたとえ神が出てきたとしても問題ないとすら思っている。
神殺しの一族としてその名をはせながらも、その実力がゆえに神たちから放置されているこの世界の異例であり例外が彼女たちなのだから。
──そうして回想を無事に終えたレネスは己の役目のために動き始める。
襲いかかってくるのは擬似的に作られた聖人、それも数百以上の聖人が一度に襲ってくるともなればレネスとてさすがに無傷で御しきるというのは困難を極めるだろう。
だからこそレネスは戦闘の数人を切り伏せて自分が彼らにとっての脅威であることを確認させたのち、即座に反転して逃亡を開始する。
「追ってくるといい。まぁ何も言わずとも勝手に追いかけては来そうだがな」
太陽の下で傀儡兵達の顔を見てレネスが実感したことは一つ、彼等に意思というものはおおよそ存在していないだろうということだ。
ある程度前の年代の人間であり、かつ法国暗部の手によって自分の意志があるにしろないにしろ実験を行われた彼らでは、残念ながら聖人の力に対して理性を保てるだけの精神力を持ち合わせて居なかったのだろう。
むしろある程度魔法の才能がある程度でそれ以外は他の人間となんら変わりのないペトロが自意識こそある程度損傷しているが反射的に動けるだけ凄いのだ。
自分の後を追いかけて何かが体にあたればそれらを破壊しながらこちらへと詰め寄ってくる敵を前にレネスは目的の位置までの距離を目算した後に魔法を一つ放つ。
「中級炎魔法〈爆炎〉」
中級魔法で殺せる相手などもはやこの場には存在していない。
レネスが求めていたのは辺りに炎を撒き散らす力の方ではなく、中心部から放射線状に放たれる爆風による衝撃波である。
同時に体重を削る魔力を自身にかけて羽のように軽くなったレネスは、その爆風に吹き飛ばされて先程までよりもさらに早く街の中を飛んでいく。
「知能を持たない君たちじゃ、残念ながら私達には勝てないよ」
「――!」
あるいは知恵こそ持っていなくとも最低限の知能すらあれば何かまずいことになっているのかもしれないと気が付くこともできたのかもしれない。
だが残念なことにレネスが口にした通り彼らには最低限度の知能というものすら存在しえなかった。
故に彼らは罠というものに対して致命的なまでに弱い。
レネスが起動させたのは空間を隔絶させる魔法。
国家級魔法に該当するそれはレネスが簡単に発動させることができるようなものではないが、魔神としての権能を預かり受けているいまであれば簡単に使うことができる。
わざわざ元々いた大教会から離れてわざわざ魔法を使った理由は簡単で、この魔法を使用すると周辺に途轍もない程の被害が発生するからだ。
大きな空間がいきなり失われた事で虚無の空間が生まれるが、その空間を埋めようと全ての物がその場に向かって引き寄せられていく。
「さすがに桜仙種……まがい物では相手にもなりませんか」
そうして戦力の大きな要因であった傀儡兵の多くが無効化されれば、現れるのは敵の重要な人物である。
肌に感じるのは神の信徒特有の気配と、それに混じって感じられる嫌な何か。
敵の最高戦力を止めるのが役目のレネスはそうして目の前に立つ男にその綺麗な顔をゆがませながら笑みを作り出す。
己の前に武器を持ちながら立つ敵を殺すことこそが桜仙種としての彼女の役目、その役目を果たすためにレネスは一歩前に出るのだ。
それは戦士達の咆哮だ。
敵を呪い、己を鼓舞し、地面を踏みしめながら走っていく戦士達の力強さは味方に大きな力を与え、敵の士気を下げる効果がある。
法国で軍事行動時に使用されることの多い鎧を着用し、胸に龍の紋様をつけた男達が手にしている武器は木剣。
敵を殺すには全くもって頼りのない武器ではあるが、敵を殺さずに無力化したいのであればこれ以上ないほど便利な武器である。
彼等はハイトの指示によって法国に点在していた兵士達、その中で選りすぐりの千人をハイトはいつでも動かせるように聖都の中へと待機させていたのだが、朝日が上がると同時にその千人が一斉に動き出したのだ。
彼等は魔法や己の力によって一人一人が大きな音を立て、時には修復が楽な誰も住んでいない家や土地などを破壊したりして大教会へと一心不乱に突き進んでいた。
しかし千人の兵士と言われれば十分な脅威に聞こえるだろうが、聖人を数百大規模で確保しているゲリシンがこの程度で狼狽えるはずもない。
とはいえゲリシン配下の貴族達は怯えるかもしれないし、一般住民は避難するものも出るだろうが時間をかけられればそのうち取り押さえられるだろう。
今回の兵士たちによる威嚇はあくまでも宣戦布告、ハイトが完全に敵として前に立つ事をゲリシンに表明したに過ぎない。
側からみれば国家転覆を企てるクーデター、内情をそれなりに知るものからすれば兄弟喧嘩、全てを知るもの達からは殺し合いと違った見方で捉えられる両者の戦いの火蓋はレネスの手によって落とされる。
「魔法は好きではないのだが……まぁ致し方あるまい」
大教会の頂上から敵の動向を見守りながら、レネスは魔法陣に魔力をこめ続ける。
最大火力を誇るエルピスではなくレネスがわざわざ魔法を放つ理由は、どのような理由があるにしろ人類の聖地とも呼べる法国の重要拠点に対してエルピスが魔法を撃つ行為自体危険だからだ。
レネスが放った魔法は植物による拘束魔法であり、瞬間的に王都が意志を持って蠢く植物達に蹂躙されていく。
「さて、どうでるかな?」
植物による拘束は対象者の魔力量に応じてその締め付ける強さを強化するような術式を組んでいる。
なので聖人クラスの魔力を持っていたとすれば、ある程度抵抗するような素振りが見れてもおかしくないはずである。
一番最初に狙ってくるとすれば魔法を使っている自分のはず、だがレネス自身は己にどのような障壁も展開してはいなかった。
敵から狙われることを分かっていながらそのようなことをするとは自殺願望でもあるのかと疑ってしまうところだが、実際問題こうでもしなければ敵は攻撃してくることはないだろう。
レネスの正体が仙桜種である事がバレているかどうかは別として、これほどの魔法を行使した人物がわざわざ身体を見せている時点で罠である可能性は極めて高いからだ。
そしてその予想通りに魔力をこめ続けるレネスの頭部の近くで信じられないほどの爆音が轟く。
(──ふむ、これが銃というやつか)
爆炎の中から当然のように現れたレネスはそんな事を感じながら撃たれた方向から敵の位置を把握して味方に指示を送り出す。
数秒遅れて先程の爆音と同じような音がかなり遠くから聞こえたかと思うと、自分を狙っている人間の気配がなくなったことをレネスは確認する。
「首尾の方はいいようだな」
「問題ないです。ただ師匠がそんな目立って動く必要はあったんですかね」
「私は一度既に法国を狙っていたという実績があるからな、いまさら何をしたところで大きな問題はない。エルピスは表に出てくるんじゃないぞ」
「師匠に言われなくても出ませんよ。あと多少は防御体制取ってくださいよ、もし俺が失敗したら大怪我ですよ?」
「信頼してるからな」
レネスが連絡を取ったのは聖都から離れた場所で後方支援を担当しているエルピスである。
エルピスは今回の作戦において顔を見られることすら危惧しなければいけない人物なので、こうして直接戦闘圏外から多少の手助けをするに止めなければいけない。
エルピスの仕事は危なくなった人間に対しての障壁の展開と魔力の譲渡と敵後方部隊の排除と全軍の指揮である。
「どうもありがとうございます。民間人の確保は完了しましたか?」
「もちろんだよ。いつでも転移可能だ」
「なら魔族領に飛ばす術式を起動するのでいまから10秒くらいは自分で身を守ってくださいね」
「もちろん構わないとも。どうやら敵も本格的に殺しに来たようだしな」
エルピスが転移魔法を起動しはじめるのとほぼ同時、大教会の地下が尋常ではないほどの大爆発を起こす。
聖都に存在する建造物をあらかた吹き飛ばさんばかりの勢いで放たれたその衝撃波よりも一瞬早くエルピスの転移魔法が完成していたため民間人には被害が出ないが、ハイトが用意していた兵士の何人かは巻き込まれて戦闘不能になったようだ。
だがそれでも犠牲者が出るというわけではなく、無事を確認した後に弱っている者から順番にエルピスの手によって転移が開始していた。
「さて、この爆発の原因は何だ?」
既にレネスが足の下に置いていた大教会はその姿を見るも無残なものに変えており、瓦礫が土煙を上げていく中でレネスはその原因がなんであるかを探るために目を凝らして待っていた。
よく見てみれば爆発地の元には数人の人影が目に入り、レネスはそれが聖人のなりそこないである傀儡であることに気が付く。
予想していた通りではあるが思っていたよりは早かった傀儡兵の出兵にレネスは頭の中で今回の作戦の概要を思い出す。
「お集まりいただいてありがたいわ。こんなに大勢の人を動かせるだなんて思っても居なかったわ」
嬉しそうに笑みを浮かべながら机に地図を広げたのは帝国第一皇女のエモ二。
彼女がこの場に居ることで数人が警戒するような顔を見せるが、そんな警戒心もエモ二からしてみれば面白いものである。
この場に居るのは先ほどまで共に居たエルピス達に加えて、灰猫から始まりグロリアスなどの王国の面々や法国からもハイトだけでなく数人指揮官級の人物を招いての作戦会議である。
帝国と王国と法国に加えて新たな国を作ることを既に世界中に宣言しているエルピスが同席するこの場所は、後に四大国として他国から呼ばれてもなんらおかしなことはない程の場所。
この中で唯一利権や権力に絡まないのは鍛冶神の名前と土精霊の国という後ろ盾を保持しているルミナと灰猫だけである。
故に各々が各自の言葉に対してどれだけの責任感があるかを重々承知しつつ、それでいてかつ今回の事件を無事に終了させるための算段を付けるために話し合いの場所を設けたわけである。
「これもすべては我が弟の蛮行を諫めるため、関係各所の皆様方にはご迷惑をおかけするっす。特に王国の方々には我々から深い感謝を」
ハイトが言い終わると同時に深く頭を下げると、近くにいた法国のメンバーも同じように頭を下げる。
王国からしてみれば現四大国である法国の裏側を暴き、ましてやクーデターに参加している時点で相当にリスクを背負っているにも関わらず、それでいてこの場に居るのが現国王と協会派閥最高位の人間なのだから本来はありえないほどの行動だ。
いくらグロリアスがこれから革命の起きる法国に対して返せないほどの恩義を渡せるチャンスを見つけたとはいえ、失敗すれば最悪の場合王族としてその責を問われその首に刃物が付きつけられる可能性も十二分にあることを考慮に入れると随分とリスクの高い賭けに挑んだという認識は間違いではないだろう。
「我々王国としてもゲリシン殿の蛮行には目を瞑ることはできません。微力ではありますがお力添えになれれば幸いです」
「かの有名な少年王グロリアス様がそう言ってくださると嬉しい限りっす。それとアルへオ家の皆様もありがたいっす」
「俺たちは別に構いませんよ。目的の人物に会うための障害としてゲリシンさんが居るだけですから、利害は一致しているわけですし」
エルピス達が法国へとやってきた理由は、現在敵の攻撃を受けて負傷しているアウローラを治す方法を法国の神が知っているから。
こう言ってしまえばなんではあるが、実際のところゲリシンがこの事を事前に知っていればエルピスに取り入る方法がなかったわけではないが、急を要しているエルピスとハイトがあの場所で出会ってしまった時点でゲリシンの運命はある程度決まっていると言っていい。
「それでもっす」
「……それでは一通りの話が纏まったところで作戦の概要を説明させていただきます」
エモニから語られた作戦はこうだ。
まずハイトの手先の兵士達で聖都内部でクーデターを起こしてもらい、ある程度聖都内部を混乱させ相手の対処を遅らせる。
その後聖都内にいる人間を何らかの魔法的手段によって捕縛、後に転送させ聖都内部に関係者しか存在しない状況を作り上げ、敵の最終兵器である傀儡兵の登場まで待機。
この時傀儡兵の登場を待たずにハイトの手下は情報閉鎖の為に周囲の街道の方へと移動してもらい、実力者のみが聖都内部にいる状態を作り出す。
結局のところこの世界での戦争は個人と個人の戦いの行方が全てを左右する物であり、だからこそ他者を巻き込まないように周到に準備を重ねる必要があるのだ。
その後は現れた傀儡兵を一定数まで減らしていき、ゲリシンがその姿を表すまで待機。
もし姿を表すことがなければ大魔法を用いて生徒を丸ごと瓦礫の山へと変える。
そうして作られたこの作戦だが、ふとエモニが一つだけ注意点を口にする。
「──という事でここまでは非常に簡単ですが、問題はエルピスさんがこの場にいる事を隠さなければいけない事です」
「それはそうでしょうね。全ての国に対して公平な立場をとっている今のアルヘオ家がそれほど大きな行動に出れば他国からの追求は確定的です」
「それはまぁそうだけどいままでと変わらないし別にいいんじゃ……」
「エルピス様、この場には神官である私も同席しています。つまりエルピス様が神であることを世に知らしめるかどうかは未だ未定としても、後々法国潰しに関わっていたとなれば法国との神の間に溝があると思われかねません。
人からの意見はどうでもいいというのは私も共通認識とするところですが、神相手は流石にそうもいきませんから」
一瞬自分が前線に出れないことに対して不満を述べるエルピスだったが、それに対してイリアが一切の反論を許さない口調で詰め寄っていく。
その言葉が何も間違っていないことを理解できないほどエルピスも愚かではなく、言われたことを素直に受け入れて首を縦に振るうしかない。
「そういうことならまぁ仕方ないか。なら俺の代役にはフェルと灰猫を入れて貰おうかな、二人はいい?」
「もちろん。久々にエルピスの下で戦えるね」
「私も問題ありません。何より法国は結構嫌いなので」
「灰猫には私が着くけれど異論はない?」
「いいですよ、お母様には一応ご報告させてもらいますけど」
「……ま、まぁいいでしょう」
鍛治神の娘が危険になる可能性があるというのにそれを指を咥えて放置するのは流石にエルピスとしても看過できない問題である。
ルミナは少々嫌そうな顔をするが、こればかりは仕方がない。
「セラとニルも今回は前に出ない方がいいよね、二人の顔も割れてるわけだし」
「そうなるね、今回は僕もおとなしくしているよ」
「主力戦力をほぼ落としての戦闘になるわけだけれど……勝算は正直どれくらいで考えているの?」
「愚問ですわ天使様。やるからには必勝、それが私のポリシーですの」
主力がほとんど動けない状態であっても戦力の充実ぶりは言うまでもない。
こちら側には聖人がいるのに加えて始祖種に神の眷属、ハイトが伏せていた兵士たちはそれほど戦力にはならないだろうが、彼らの存在は法国第二王女の存在と合わせて後々の言い訳づくりには非常に大きな要素となってくれる。
そして一番大きな要因となるのは仙桜種であるレネスがこちら側についているということだ。
エモ二はエルピスがかつて全力でもってレネスに相対し、その結果負けていることを知っているわけではないがそれでも仙桜種の伝え聞く話をもとに考えればたとえ神が出てきたとしても問題ないとすら思っている。
神殺しの一族としてその名をはせながらも、その実力がゆえに神たちから放置されているこの世界の異例であり例外が彼女たちなのだから。
──そうして回想を無事に終えたレネスは己の役目のために動き始める。
襲いかかってくるのは擬似的に作られた聖人、それも数百以上の聖人が一度に襲ってくるともなればレネスとてさすがに無傷で御しきるというのは困難を極めるだろう。
だからこそレネスは戦闘の数人を切り伏せて自分が彼らにとっての脅威であることを確認させたのち、即座に反転して逃亡を開始する。
「追ってくるといい。まぁ何も言わずとも勝手に追いかけては来そうだがな」
太陽の下で傀儡兵達の顔を見てレネスが実感したことは一つ、彼等に意思というものはおおよそ存在していないだろうということだ。
ある程度前の年代の人間であり、かつ法国暗部の手によって自分の意志があるにしろないにしろ実験を行われた彼らでは、残念ながら聖人の力に対して理性を保てるだけの精神力を持ち合わせて居なかったのだろう。
むしろある程度魔法の才能がある程度でそれ以外は他の人間となんら変わりのないペトロが自意識こそある程度損傷しているが反射的に動けるだけ凄いのだ。
自分の後を追いかけて何かが体にあたればそれらを破壊しながらこちらへと詰め寄ってくる敵を前にレネスは目的の位置までの距離を目算した後に魔法を一つ放つ。
「中級炎魔法〈爆炎〉」
中級魔法で殺せる相手などもはやこの場には存在していない。
レネスが求めていたのは辺りに炎を撒き散らす力の方ではなく、中心部から放射線状に放たれる爆風による衝撃波である。
同時に体重を削る魔力を自身にかけて羽のように軽くなったレネスは、その爆風に吹き飛ばされて先程までよりもさらに早く街の中を飛んでいく。
「知能を持たない君たちじゃ、残念ながら私達には勝てないよ」
「――!」
あるいは知恵こそ持っていなくとも最低限の知能すらあれば何かまずいことになっているのかもしれないと気が付くこともできたのかもしれない。
だが残念なことにレネスが口にした通り彼らには最低限度の知能というものすら存在しえなかった。
故に彼らは罠というものに対して致命的なまでに弱い。
レネスが起動させたのは空間を隔絶させる魔法。
国家級魔法に該当するそれはレネスが簡単に発動させることができるようなものではないが、魔神としての権能を預かり受けているいまであれば簡単に使うことができる。
わざわざ元々いた大教会から離れてわざわざ魔法を使った理由は簡単で、この魔法を使用すると周辺に途轍もない程の被害が発生するからだ。
大きな空間がいきなり失われた事で虚無の空間が生まれるが、その空間を埋めようと全ての物がその場に向かって引き寄せられていく。
「さすがに桜仙種……まがい物では相手にもなりませんか」
そうして戦力の大きな要因であった傀儡兵の多くが無効化されれば、現れるのは敵の重要な人物である。
肌に感じるのは神の信徒特有の気配と、それに混じって感じられる嫌な何か。
敵の最高戦力を止めるのが役目のレネスはそうして目の前に立つ男にその綺麗な顔をゆがませながら笑みを作り出す。
己の前に武器を持ちながら立つ敵を殺すことこそが桜仙種としての彼女の役目、その役目を果たすためにレネスは一歩前に出るのだ。
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