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第40話 エピローグ
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ミライザは、アーリン港へ辿り着いた。
アーリン港は、賑わっていた。
帝国と王国の国旗が無数に靡き、潮風にふかれ揺れている。
海運祭の時期でもないのに、仮装をした人達が楽しそうに笑って街を歩いていた。
帝国皇子へマージャス侯爵が嫁ぐと国を挙げてのお祭り騒ぎとなっている。
ブルーティアーズを巡る不思議な体験について知っているのは国王だけだ。アシリー侯爵からの聴取では「人魚の涙」は幻の宝石とマニアの中では有名らしい。国王と相談してマージャス侯爵家を王国へ変換する事になった。最後の侯爵が国外へ嫁いだ事で「人魚の涙」とマージャス侯爵家を結びつける事が難しくなり、ブルーティアーズを狙う者もいなくなるだろう。
ブルーティアーズは幻となり、もう2度と妹のような思いをする者がいない事を願う。
今日はローザリンに会いに来た。
長く病院で治療を受けたローザリンは、日常生活に不自由が無い状態まで回復し退院した。今はアーリン港の修道院で過ごしている。
修道院に入ると、ローザリンが嬉しそうにミライザを出迎えた。
ローザリンの水色の髪は、半分以上が白髪に変化してしまった。体に無数に残る傷跡は、薄れたが、消える事は無かった。瞳は焦点が合わず、正気が無く、別世界に引き篭もっているようだ。
「ローザリン」
「おねえさま。えほんをよんで。ずっとまっていたの」
「ローザリン。今日は貴方に渡したい物があるの。貴方は私の妹よ。きっと良くなるわ」
ミライザは、ブルーティアーズの短剣を出し、ローザリンの手に握らせた。
(お願い。ブルーティアーズ。妹を癒して。)
その瞬間、ブルーティアーズは青白く発光し、ローザリンの体をコバルトブルーの水幕が包み込んだ。
ローザリンの瞳が徐々に力を取り戻す。
手の傷が薄くなり、消えていった。
カラン。
ブルーティアーズは力を使い切ったのか、短剣の持ち手だけが床に落ち転がった。
「お姉様!私なんて事を!お姉様を刺すなんて!ごめんなさい。お姉様」
「ああ、ローザリン。良かった。治ったのね。いいの。貴方が無事で良かった。遅くなってごめんなさい。もっと早く気づいていたら」
ミライザは、傷が消え、瞳に光を取り戻したローザリンを抱きしめた。
「ありがとう。お姉様」
ローザリンは、ミライザを抱きしめ返し、ミライザの首元で仄暗い笑みを浮かべ小声で囁いた。
「信じていたわ。私にはお姉様しかいないって。これからもよろしくね。優しいお姉様」
ビュービュー
窓の外から聞こえる大きな波風が、ローザリンの言葉を消し去りながら強く、強く吹き荒れていった。
END「人魚の涙」
アーリン港は、賑わっていた。
帝国と王国の国旗が無数に靡き、潮風にふかれ揺れている。
海運祭の時期でもないのに、仮装をした人達が楽しそうに笑って街を歩いていた。
帝国皇子へマージャス侯爵が嫁ぐと国を挙げてのお祭り騒ぎとなっている。
ブルーティアーズを巡る不思議な体験について知っているのは国王だけだ。アシリー侯爵からの聴取では「人魚の涙」は幻の宝石とマニアの中では有名らしい。国王と相談してマージャス侯爵家を王国へ変換する事になった。最後の侯爵が国外へ嫁いだ事で「人魚の涙」とマージャス侯爵家を結びつける事が難しくなり、ブルーティアーズを狙う者もいなくなるだろう。
ブルーティアーズは幻となり、もう2度と妹のような思いをする者がいない事を願う。
今日はローザリンに会いに来た。
長く病院で治療を受けたローザリンは、日常生活に不自由が無い状態まで回復し退院した。今はアーリン港の修道院で過ごしている。
修道院に入ると、ローザリンが嬉しそうにミライザを出迎えた。
ローザリンの水色の髪は、半分以上が白髪に変化してしまった。体に無数に残る傷跡は、薄れたが、消える事は無かった。瞳は焦点が合わず、正気が無く、別世界に引き篭もっているようだ。
「ローザリン」
「おねえさま。えほんをよんで。ずっとまっていたの」
「ローザリン。今日は貴方に渡したい物があるの。貴方は私の妹よ。きっと良くなるわ」
ミライザは、ブルーティアーズの短剣を出し、ローザリンの手に握らせた。
(お願い。ブルーティアーズ。妹を癒して。)
その瞬間、ブルーティアーズは青白く発光し、ローザリンの体をコバルトブルーの水幕が包み込んだ。
ローザリンの瞳が徐々に力を取り戻す。
手の傷が薄くなり、消えていった。
カラン。
ブルーティアーズは力を使い切ったのか、短剣の持ち手だけが床に落ち転がった。
「お姉様!私なんて事を!お姉様を刺すなんて!ごめんなさい。お姉様」
「ああ、ローザリン。良かった。治ったのね。いいの。貴方が無事で良かった。遅くなってごめんなさい。もっと早く気づいていたら」
ミライザは、傷が消え、瞳に光を取り戻したローザリンを抱きしめた。
「ありがとう。お姉様」
ローザリンは、ミライザを抱きしめ返し、ミライザの首元で仄暗い笑みを浮かべ小声で囁いた。
「信じていたわ。私にはお姉様しかいないって。これからもよろしくね。優しいお姉様」
ビュービュー
窓の外から聞こえる大きな波風が、ローザリンの言葉を消し去りながら強く、強く吹き荒れていった。
END「人魚の涙」
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