[完結]頭の中の泣き虫な私へ

仲 奈華 (nakanaka)

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第一部 私は

ASD傾向のある私に、友人は必要ですか?

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私はASD傾向があります。数年前酷く体調を崩し、ASD障害と診断されました。

そして、友人はいません。

けれど――

友人がいるように振る舞うことはできます。

連絡先を交換する。

あいさつを交わす。

話しかけられたら返答する。

誘われたら付き合う。

それはできるのです。

社会のルールは、覚えられるから。

「こういう場面ではこうする」という型は理解できる。

だから、外から見れば、

それなりに人付き合いができている人に見えると思います。

形式はできる。でも、共感ができない。

相手が楽しそうにしているとき。

悲しそうにしているとき。

私はまず、

「どんな反応をすれば自然か」を考えます。

頭の中で処理をしてから、言葉を出す。

心が自然に動く、という感覚が分からない。

共感していないわけではない。

でも、同じ温度で揺れている感じがしない。

どこか、ガラス越しに見ているような距離がある。

私は、人間関係を“感じる”というより

“理解して対応している”のだと思います。

それでも私は、一人が好きだ。

誰にも干渉されない時間。

静かな部屋。

自分の頭の中だけの世界。

考え続けること。

思考の中に潜っていくこと。

私は、それが好きです。

人と過ごす時間よりも、

一人で頭の中に引きこもっている時間のほうが、

安心できる。

外の世界よりも、内側の世界のほうが豊かに感じることもある。

だからこそ、迷います。

私は本当に、友人を必要としているのだろうか。

友人は「絶対に必要」なのか?

世の中は言います。

友達は大切。

人は一人では生きられない。

つながりがあることが幸せ。

それは、多くの人にとっては本当なのだと思います。

友人がいれば、

感情を共有できる

孤独がやわらぐ

困ったときに助け合える

「自分はここにいていい」という安心感が生まれる

そういう力がある。

でも、それは必ずしも

「友人」という形でなくてはいけないのでしょうか。

家族。

趣味のつながり。

オンラインの関係。

カウンセラー。

あるいは、

自分自身との安定した関係。

形は一つではないはずです。

私は欠けているのか?

共感が薄いこと。

一人が好きなこと。

深くつながる感覚が分からないこと。

それは欠陥なのか。

それとも特性なのか。

ASDという診断名はついたけれど、

それが「不足」を意味するとは限らない。

脳の使い方が違うだけかもしれない。

私は、壊れているのだろうか。

それとも、ただ少数派なだけなのだろうか。

本当の問い

もしかすると問いは、

「友人は必要か?」ではなく、

「私は、今の自分で安心できているか?」

なのかもしれません。

もし今、

一人でいることが心地よいなら、

それは間違いではない。

もし本当は寂しいのなら、

少人数でもいい、安心できる誰かを探せばいい。

たくさんでなくていい。

演じなくていい。

形式だけでなく、呼吸が楽になる関係が一つあればいい。

私は今日も、一人です。

でもそれは、必ずしも不幸ではありません。

まだ答えは出ていないけれど、

少なくとも私は、

一人で頭の中に引きこもる時間を、

本気で愛しています。

そしてその事実を、

否定しなくてもいいのかもしれないと、

少しずつ思い始めています。

本当に足りないのは、友人ですか?

それとも――

「友人がいないと不完全だ」という

この社会の物語のほうでしょうか。

私は今日も、一人です。

共感が薄いまま。

演じることはできるまま。

頭の中に引きこもることを愛したまま。

それでも私は、壊れていない。

少なくとも、

自分の内側では、何も欠けていない。

もしこの記事を読んでいるあなたが、

友人はいるのに孤独を感じているなら

共感できない自分を責めているなら

一人が好きな自分を隠しているなら

問いは、同じかもしれません。

「友人は必要ですか?」

ではなく、

「あなたは、今のあなたを否定しなければ生きられませんか?」

もし、否定しなくても生きていけるのなら。

それはもう、

十分に満ちているのかもしれません。
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