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終章 ずっと一途に。

第44話 『姫殿下』御用達!? ご好評につき新たな依頼!?

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 それからどうなったかって? どこから話すか。

 まずは帰ってから1ヶ月が過ぎた日のからのことを――。

「あ! お帰りエル、ちょうどいいところに戻ってきた。護衛依頼よ。ご指名だって」

「え? どういうことっすか?」

 迷いネコの捜索から戻ってくるや否や、そんな言葉でカサンドラさんに出迎えられる。

 ほんと何かと思ったよ。

 何でも王国と帝国の間で近々、話し合いが持たれることになったという。

 さしあたって王国の第二王女から護衛の依頼が来た。

「いや、ちょっと待ってください。なんで俺?」

 そんな高貴な身分の方と知り合った覚えがないし、それに世間で注目を集めることは――したな。つい先月。

 だとしてもだ。【花】のナキアさんならまだ分かる、一介の【蕾】の俺が指名を受ける理由が見当たらない。

「なんでも……そう、直接の相手はセシルさんだったんだけどね。というか知り合いだったのねあなた達?」

「あぁ……はい。飛空挺で顔見知った程度ですが」

「そうなの? それでナキアに相談したんだけど、彼は今出張中じゃない?」

「相変わらず世話しなくすっ飛び歩いていますね」

「そしたらエルに任せて置けば大丈夫って」

「あぁ~なるほどそれで……じゃないっスよ! ナキアさんが避けた流れ弾じゃないッスか!」

 まったくあの人は……。

 ほんと帰ってきてからというものの、俺が【蕾】になったっていうこともあって、面倒ごとは全部寄越してくるだよなぁ。

 それだけ認めてくれているってことだと思うけど。

「だめかしら?」

「ダメもなにも断れないですよね。それでスケジュールの方は?」

 日程は来週で、場所はここ【マルグレリア】の領事館。

 内容はセシルさんが連れてきた兵士数名と、守護契約士の俺らと、帝国の国境警備隊の数名で、施設の警備にあたるとのこと。

 しかと会合の相手は帝国の第一王女。ということはつまり――。

「レアさんに会えるってことだよ」

 奥からシャワー上がりのアセナとシャルが出てきた。

 二人から石けんの良い香りが――ヤベ、ヤベ、しっかりしろ俺! 最近変だぞ!?

「おかえりなさい! エルくん!」

「ただいま、アセナ」

 なんか面と面を向かって言われるとなんか照れる。

「はいはい、またそうやってすぐ二人の世界つくるんだから~」

 手をシャルは叩いて、水を差しこんできた。

「そういえば王女さまと知り合いだったのよね」

 頬に手を当ててカサンドラさんは「う~ん」と考えこんでしまった。

 懸念することあんのか? レアさん来ることの。

「もしかしてアセナの処遇について話し合われるのかしら?」

「いやいや、それはないですよ。この間正式に王国籍になったじゃないですか」

 帝国での事案が終わった後、レアさんが掛け合ってしてくれたこともあって、アセナの亡命が正式に認められた。

「そ、そうよね。心配しすぎよね」

「大丈夫ですよ。カサンドラさん。きっと殿下はそんなこと考えていない、もっと別の――」

「そうじゃないよ。あーしゃん」

 真面目な顔してシャルが口を挟む。

「お義母さんでしょ?」

「……う、うん……お義母さん……」

 照れ照れにはにかむアセナを見て、カサンドラさんがしとやかに失笑する。

「っふふ、無理しなくていいのよ? まだ家族になったばかりだもの、これから段々と……ね?」

 端的にいうと、身元引き受けにカサンドラさんが名乗り出てくれたんだ。

 今は一緒に暮らしている。やっぱりいろいろ苦労はあるみたいだけど、ご覧の通りうまくやっている。

 そうそう、手に入れたアンプルのお陰で、カサンドラさんは今や杖なしで歩けるまで回復したんだ。

 【霊象予報士】としての再開はまだ分からない。でも本当に良かったよ。

 にしてもレアさん。アセナの処遇についてなにか考えているのか?

 新聞の情報によれば、クローディアスがいなくなったことで、暗殺部隊は解体したし、秘密裏の兵器開発や、霊象獣の生体実験の数々が暴かれ、帝国は政治的混乱が続いている。

「あのさエルやん」

 腰に手を当ててシャルがにらんでくる。な、なに……なんだよ?

「そんな悩むくらいなら、早く籍だけでも入れちゃえば良かったじゃん?」

「は!?」「え!?」と二人そろってすっとんきょうな声が出た。

「しゃ、シャルさん!? そ、そんな! わ、私たちまだ会って間もない……」

「あ、ああ、もうちょっと時間をかけて――」

「いや、分かるけど」

 腕を組んでシャルはため息をついた。わかっている。呆れているんだろ?

「現実、さっさと身を固めておけば気持ち的に楽だったんじゃないのって」

「身を固めるって、いや俺らまだ18」

「うんうん、だよねぇ~、ウチも先を越されるのは正直しゃくだよ」

 いや、問題はそこじゃねぇよ。所帯を持つのが早いってこと。

「ま、外野がとやかくいってもしょうがないし、二人のペースに任せるけどさ」

 ごちゃごちゃにひっかけまわして置いて、肩をすくめる!? そこで!?

 いやまぁ、確かにシャルのことも一理あるんだ。

 でも、ようやくこっちの生活にも慣れたばかりで、アセナは気持ちが整理できていない状態だし、やっぱり彼女のこと大切にしたいから、がっつきたくない。

 しかもこの間のデートの約束のやり直しをしてない。

 実はこれには事情がある。

 いろいろバタバタしていたのもあるけど、再来週に【神凪節】、俺の誕生日に祭りがるから、そこでデートする約束になったんだ。
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