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追加エピソード
ゲイルのハンカチ
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結婚直前の話です
ゲイルのお話にお付き合い頂きありがとうございました!
みなさま、良いお年を!
来年もよろしくおねがいいたしまするー!
※※※※※※※※
兄貴んとこに打ち合わせに行きながら、ふと気になった。
そういや、俺の紋章はグリフィス家のとグランディールのとどっちを使えばいいんだ?
「なあ、兄貴。ハンカチってイニシャルだけの方がいいのか?俺のとフィオのをまた注文すっから、兄貴も欲しけりゃ一緒に頼んでやるぜ?」
「は?イニシャルってなんのことだ?」
「いや、ほら、ハンカチの刺繍だよ。これまではご令嬢とかがくれたんだけどな。婚約したら急にくれなくなったから作ろうかと思うんだが」
「……まさか、ハンカチの意味を知らんのか ?」
「は?貴族は平民と違ってネームや家紋いれるんだろ?俺だって分かってるよ。だからわざわざ注文すんだろうが」
言ったとたん兄貴は頭を抱え、義姉さんは呆れたように口を開けた。
「いや、確かにお前に教えた覚えがないが……普通は気付くだろう⁈」
「あなた、ゲイルなのよ?この子、周りからの好意が当たり前すぎて気づかなかったんだわ。まあ、なんてこと!
フィオくんに可哀想なことをしてしまったわ!」
「は?なんでハンカチとフィオが関係あるんだよ?フィオだってハンカチくらいちゃんと持ってるぞ?イニシャルと家紋入りのやつ」
兄貴がため息をつきながら言った。
「そのハンカチはどこから手に入れたんだ?」
「普通にアドルフが注文してたぜ?」
またため息。
「だから何なんだよ⁈」
姉さんが可哀想な子を見るかのような視線を俺に寄越した。
「あのね、ゲイル。ハンカチはね、婚約者がいる場合は婚約者が、身内がいれば身内の女性が、お相手のイニシャルと家紋やなにかの刺繍を刺繍して贈るものなの。
貴族の男性は持っているハンカチの刺繍によって、婚約者や身内の女性の家政の腕やセンスの良さ、愛情などを周りの人に示すのよ。
ちなみに、まだ婚約者のいないご令嬢は、好意を持つ人にその人のイニシャルなどを刺繍したハンカチを渡すの。婚約者がいる人に渡すのは無礼になるから、みなハンカチをあなたに渡さなくなったのよ」
「…………は?何でわざわざ自分で刺繍するんだ?店に頼めばいいだろ?」
「それが女性の戦い方なのよ。あなた、貴族の女性がわざわざ刺繍を習うのはなんのためだと思っているの?」
「趣味じゃねえの?俺が絵を描くみたいに」
「違うわよ。それも高位貴族女性の仕事のひとつなの。刺繍をしたものをバザーなどに寄付したりもするでしょう?
高位貴族の女性が手ずから刺繍するから価値があるのよ」
兄貴が憐れむように俺を見た。
「お前は男だからわざわざ教える必要はないと思っていたのだ。しかし、女性から渡されていたのならば、普通は気づくだろう⁈なんだと思っていたのだ?」
「いや、差し入れかなと…。クッキーやら酒やら花やら貰うだろ?それと同じかと……」
「「はあ…」」
ため息の二重層だ。
ん?てことは、だ。
「もしかしてフィオのハンカチ、俺が刺繍してやるべきだったりすんのか?」
こくり。
「は?買ったんじゃダメなのか?」
こくり。
「フィオくんもゲイルに刺繍ができるとは思っていないだろうし。自ら要求もしないだろうが」
「健気だわ…フィオくん…。でも欲しくないわけではないと思うわよ?」
「男にとって伴侶のくれたハンカチは特別なものだからな。離れている時も心は共にある、という意味もあるのだし」
いや、兄貴の口からそんな言葉がでるとは!
…そんくらい重要なもんだってことか……。
「……義姉さん。頼みがある」
「いいわよ」
「え?何か聞かねえの?」
「刺繍でしょ?フィオくんのためだもの!頑張るわよ!」
「うむ。フィオくんに可哀想なことをしてしまった。
女性の身内もなかったというのに、さぞかし寂しい思いをしてきたに違いない。
うちのことはいいから。ゲイルに刺繍を叩き込んでやってくれ!」
こうして俺は義姉さんのスパルタ刺繍教室に通うことになったたのだった。
「ゲイル、今日もサフィールですか?」
「ああ、すまん。忙しくてな」
「私も行きます」
「い、いや!フィオはいいから!俺だけでいいそうだ!
フィオはフィオでやることがあるだろ?俺のことは心配せず仕事してくれ!」
「……そうですか?…では。
何かあれば言ってくださいね?」
ああ。フィオに垂れた耳と尻尾の幻影が見える。
すまん、フィオ。お前の為なんだ!
俺は挫けそうになる心に鞭をふるってフィオを置いてサフィールに通った。
刺繍はなかなかに難問だ。
絵を描くのと違い、図案通りに刺しているはずが上手いこと形にならない。線の上に針を入れているのに、完成すればガタガタのでこぼこ。
こんなものをフィオに使わせるわけにはいかない!フィオには最高のものを渡してやりたいからな!
俺は手に針を刺しヒールを駆使しながら毎日頑張った。
一方、フィオは徐々に萎れていく。
「……私も行ってはダメなのでしょうか?」
寂しそうに言われればつい抱きしめて「いいよ」と言ってやりたくなる。
しかし、今バレては本末転倒。あと少しの辛抱だ、と俺は涙を飲んで「ノー」を言い続けた。
そして2週間後。
ついに満足のいくものができた!
「フィオ。一緒に兄貴んとこ行こうぜ!」
「!!良いのですか?」
フィオがハンカチを握りしめて大泣きするまであと少し。
そしてフィオにハンカチを見せびらかされたハルトが「私も欲しい!」と叫びメアリーから口をきいてもらえなくなったと泣きが入るまであと数日。
俺がやった最初のハンカチは、新しいものを何枚もやった今でも大切にフィオの宝箱にしまわれている。
ゲイルのお話にお付き合い頂きありがとうございました!
みなさま、良いお年を!
来年もよろしくおねがいいたしまするー!
※※※※※※※※
兄貴んとこに打ち合わせに行きながら、ふと気になった。
そういや、俺の紋章はグリフィス家のとグランディールのとどっちを使えばいいんだ?
「なあ、兄貴。ハンカチってイニシャルだけの方がいいのか?俺のとフィオのをまた注文すっから、兄貴も欲しけりゃ一緒に頼んでやるぜ?」
「は?イニシャルってなんのことだ?」
「いや、ほら、ハンカチの刺繍だよ。これまではご令嬢とかがくれたんだけどな。婚約したら急にくれなくなったから作ろうかと思うんだが」
「……まさか、ハンカチの意味を知らんのか ?」
「は?貴族は平民と違ってネームや家紋いれるんだろ?俺だって分かってるよ。だからわざわざ注文すんだろうが」
言ったとたん兄貴は頭を抱え、義姉さんは呆れたように口を開けた。
「いや、確かにお前に教えた覚えがないが……普通は気付くだろう⁈」
「あなた、ゲイルなのよ?この子、周りからの好意が当たり前すぎて気づかなかったんだわ。まあ、なんてこと!
フィオくんに可哀想なことをしてしまったわ!」
「は?なんでハンカチとフィオが関係あるんだよ?フィオだってハンカチくらいちゃんと持ってるぞ?イニシャルと家紋入りのやつ」
兄貴がため息をつきながら言った。
「そのハンカチはどこから手に入れたんだ?」
「普通にアドルフが注文してたぜ?」
またため息。
「だから何なんだよ⁈」
姉さんが可哀想な子を見るかのような視線を俺に寄越した。
「あのね、ゲイル。ハンカチはね、婚約者がいる場合は婚約者が、身内がいれば身内の女性が、お相手のイニシャルと家紋やなにかの刺繍を刺繍して贈るものなの。
貴族の男性は持っているハンカチの刺繍によって、婚約者や身内の女性の家政の腕やセンスの良さ、愛情などを周りの人に示すのよ。
ちなみに、まだ婚約者のいないご令嬢は、好意を持つ人にその人のイニシャルなどを刺繍したハンカチを渡すの。婚約者がいる人に渡すのは無礼になるから、みなハンカチをあなたに渡さなくなったのよ」
「…………は?何でわざわざ自分で刺繍するんだ?店に頼めばいいだろ?」
「それが女性の戦い方なのよ。あなた、貴族の女性がわざわざ刺繍を習うのはなんのためだと思っているの?」
「趣味じゃねえの?俺が絵を描くみたいに」
「違うわよ。それも高位貴族女性の仕事のひとつなの。刺繍をしたものをバザーなどに寄付したりもするでしょう?
高位貴族の女性が手ずから刺繍するから価値があるのよ」
兄貴が憐れむように俺を見た。
「お前は男だからわざわざ教える必要はないと思っていたのだ。しかし、女性から渡されていたのならば、普通は気づくだろう⁈なんだと思っていたのだ?」
「いや、差し入れかなと…。クッキーやら酒やら花やら貰うだろ?それと同じかと……」
「「はあ…」」
ため息の二重層だ。
ん?てことは、だ。
「もしかしてフィオのハンカチ、俺が刺繍してやるべきだったりすんのか?」
こくり。
「は?買ったんじゃダメなのか?」
こくり。
「フィオくんもゲイルに刺繍ができるとは思っていないだろうし。自ら要求もしないだろうが」
「健気だわ…フィオくん…。でも欲しくないわけではないと思うわよ?」
「男にとって伴侶のくれたハンカチは特別なものだからな。離れている時も心は共にある、という意味もあるのだし」
いや、兄貴の口からそんな言葉がでるとは!
…そんくらい重要なもんだってことか……。
「……義姉さん。頼みがある」
「いいわよ」
「え?何か聞かねえの?」
「刺繍でしょ?フィオくんのためだもの!頑張るわよ!」
「うむ。フィオくんに可哀想なことをしてしまった。
女性の身内もなかったというのに、さぞかし寂しい思いをしてきたに違いない。
うちのことはいいから。ゲイルに刺繍を叩き込んでやってくれ!」
こうして俺は義姉さんのスパルタ刺繍教室に通うことになったたのだった。
「ゲイル、今日もサフィールですか?」
「ああ、すまん。忙しくてな」
「私も行きます」
「い、いや!フィオはいいから!俺だけでいいそうだ!
フィオはフィオでやることがあるだろ?俺のことは心配せず仕事してくれ!」
「……そうですか?…では。
何かあれば言ってくださいね?」
ああ。フィオに垂れた耳と尻尾の幻影が見える。
すまん、フィオ。お前の為なんだ!
俺は挫けそうになる心に鞭をふるってフィオを置いてサフィールに通った。
刺繍はなかなかに難問だ。
絵を描くのと違い、図案通りに刺しているはずが上手いこと形にならない。線の上に針を入れているのに、完成すればガタガタのでこぼこ。
こんなものをフィオに使わせるわけにはいかない!フィオには最高のものを渡してやりたいからな!
俺は手に針を刺しヒールを駆使しながら毎日頑張った。
一方、フィオは徐々に萎れていく。
「……私も行ってはダメなのでしょうか?」
寂しそうに言われればつい抱きしめて「いいよ」と言ってやりたくなる。
しかし、今バレては本末転倒。あと少しの辛抱だ、と俺は涙を飲んで「ノー」を言い続けた。
そして2週間後。
ついに満足のいくものができた!
「フィオ。一緒に兄貴んとこ行こうぜ!」
「!!良いのですか?」
フィオがハンカチを握りしめて大泣きするまであと少し。
そしてフィオにハンカチを見せびらかされたハルトが「私も欲しい!」と叫びメアリーから口をきいてもらえなくなったと泣きが入るまであと数日。
俺がやった最初のハンカチは、新しいものを何枚もやった今でも大切にフィオの宝箱にしまわれている。
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