魔王を倒した勇者だけど帰還して今度はVRMMOに挑みます

六山葵

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初サイドクエスト

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「魔法書ならば私が融通しましょう」

気まずい雰囲気の流れを変えたのはビスタのそんな一言だった。
分類的には魔法書は魔法道具の扱いであり、ロトの町にある彼の別邸に行けばいくつか取り置きがあるという。

シャインはあからさまに表情が明るくなり、

「いいんですか?」

と目を輝かせ始めた。

「もちろんですとも。あなたには二度命を助けられていますから、甥を紹介しただけではお礼が不十分だと思っていました」

シャインの他にも目を輝かせた者がいる。
リサだ。

彼女も目に見えて浮かれ出し、それから少し気恥ずかしそうにおずおずと手を上げる。

「あのー、私助けたのは一回だけなんですけどついて行っちゃだめですか?」

図々しい頼みだったが、ビスタは気前よく了承した。それからユーサの方に向き直り「よろしければあなたも」と言うのでユーサもお言葉に甘えることにする。

「楽しみだなー。魔法道具って冒険者も使えるみたいだし、あの絨毯みたいに空を飛べるやつがあったら探索が格段に楽になるよ」

ウキウキとはしゃぎ、今にも外に飛び出してしまいそうなリサをユーサが引き止める。

「おい、何か忘れていないか」

「へ?」

キョトンとした顔をするリサにユーサは視線で示した。
マスルークが直した魔法道具だ。

「あ、そっか」

本当に忘れていたらしく、リサは慌てて魔法道具の方に行く。
レストに使用の許可を取り、ユーサから地下室で見つけた資料を受け取って、彼女はそれを魔法道具にセットした。

「内部の魔石が赤く光りだしたら印刷が始まりますから」

横から見ていたレストが使い方を説明する。
印刷に使うというだけあってコピー機のようなものだ。資料は分厚かったが、すぐに複製が二束分刷り上がった。

「はい、こっちがシャインの分」

リサは原本の方をユーサに返し、複製の一つをシャインに渡す。もう一つは自分のインベントリにしまった。

「本当にすごい。島の植物やモンスターの情報が詳細に載っている。これがあれば、採集系のサイドクエストで困ることはなさそうだ」

シャインは資料にさっと目を通して感嘆の声を漏らした。

「あの……皆さん。依頼達成の報酬を……」

レストが申し訳なさそうに間に割り込む。そういえばレストから報酬をもらっていなかった、と三人とも思い出す。

シャインの提案で報酬のお金は三等分することにした。

「あ、でもマスルークさんに修理代を渡さないといけないので報酬の一部で支払いましょうか」

シャインはそう言ったが、すぐにマスルークがその申し出を断る。

「叔父さんを助けてくれたお礼なんだろう? なら金はいらない。その代わり、俺からもあんた達に依頼を出したい」

マスルークが言う。
依頼の内容は「どこか静かで安全な、工房を建てられる場所を探してほしい」というものだった。

「依頼は急がないし、旅の途中でもしそう言った場所が見つかったら教えてくれるだけでいい。どうだ?」

マスルークの依頼内容に、ビスタが少し不満気になる。

「悪いな叔父さん。やっぱり貴族相手の商売は俺には合わねぇ。どこか静かなところでひっそりと魔法道具を作りたいんだ」

結局、ビスタが折れる形になり、「私からの注文依頼は断らないでくれ」という条件の下、依頼は正式なものとなった。
三人のクエスト一覧の画面に「職人の希望物件」が追加される。

「でもなぜ俺たちに?」

ユーサが尋ねる。彼は人嫌いだったはずだ。
忙しくて自分で探す暇がないのかもしれないが、自分たちに依頼するのが意外だった。

マスルークは「まぁ、あんたらなら信頼できそうだからな」と曖昧に返事をし、照れくさそうに笑った。
ただの人嫌いというわけではなく、人付き合いが苦手なタイプのようだ。

レストから報酬をもらい、マスルークから新たな依頼を受けた三人はビスタに魔法書と魔法道具を見せてもらうために彼の別邸へと向かうことにした。
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