魔王を倒した勇者だけど帰還して今度はVRMMOに挑みます

六山葵

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初サイドクエスト

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ビスタは普段、様々な魔法道具を買い求め、さらにそれを欲しがる客へ届けるためにロトの町周辺の町や村を転々としているらしい。

本拠地となる店舗があるのは他の町だが、売れ残った魔法道具や町によっては需要のある魔法道具を保管しておくために主要な町には別邸をいくつか持っている。

案内されて一向が向かったのは外観はマスルークの店と遜色ないほど立派な、しかし内部は物で溢れ倉庫と化した建物だった。

「ここは普段人が来ない場所で、少しお見苦しいですがご勘弁を」

ビスタが謝罪する。
確かに物で溢れ返っているためにごちゃついて見えるが、よく見ると掃除は床の隅々まで行き届いている。

魔法道具と思しき品々も箱に入れられて整頓されていて、ビスタの几帳面さがよくわかる。

「宝の山ってところね」

いつの間にそんなに魔法道具好きになったのか、とユーサが思うくらいにはリサのテンションが上がっていた。

放っておいたら並べられた箱を片っ端から開けていって、中の魔法道具を精査しそうな勢いだった。

「さて、まずはお約束した魔法書からですな」

ビスタはそういって部屋の奥の方に行き、箱を一つ選んで戻ってくる。

これだけ物があってもどこに何があるのか把握しているのはさすがだな、とユーサは感心した。

ビスタの持ってきた箱の中には魔法書がぎっしりと詰め込まれていた。
部屋の押し入れにひっそりと置かれる読まれなくなった古本を思い起こす光景だ。

魔法書は確か高価だと言っていたが、こんな扱いでいいのだろうか。

そんな疑問が顔に出ていたらしい。
ビスタはユーサに笑いかける。

「実はここにあるのは珍しいからと買い取ったものの、全く売れなかった魔法書ばかりでして。助けていただいたお礼にそんなものを差し上げるのはどうかとも思うのですが、引き取っていただければ私も助かるので」

「何かお気に召す物があればいいのですが……」とビスタは視線をシャインに向けた。

彼の魔法好きは相当なようだ。
好きな物を前にすると異常にテンションの上がる人物がいる、というのをユーサはリサを見て知っていたが彼の喜びようはリサ以上だった。

目から光線でも出すのではないかと疑いたくなるほどに瞳を輝かせ、瞬きも忘れて箱の中の魔法書に見入っている。

「こんな魔法が……。こっちもすごい」

ユーサたちのことなんてすっかり忘れて独り言を呟くシャインに流石のビスタも戸惑っていた。

彼にとってはまさに「宝の山」なのだろう。
選ぶのにはまだまだ時間がかかりそうだ。

「それでしたら、本を選ぶまでの間にお二人にも何かお礼をさせてください」

ビスタがそう提案すると「待ってました」と言わんばかりにリサが身を乗り出す。

「私、魔法道具が欲しいんだけど!」

あまりの勢いにビスタは苦笑する。

「ええ、あまり高価な物はお譲りできませんが割引は可能です。安価な売れ残りでしたら、無償でお渡しできますよ」

彼の商売根性も逞しい。
口調こそ穏やかだが、「高価な物を持って行かれては溜まったものではない」という商人の意地が垣間見える。

それを差し引いても随分と気前のいい善人であることに違いはない。

ビスタはユーサの方を向き直り、

「あなたはどうされますか?」

と尋ねた。

正直魔法道具にはリサほどの興味はない。
空を飛べる乗り物のような魔法道具であれば多少欲しいが、恐らく高い。
割引されたとしても買える余裕は今はなかった。

そういえば武器がないんだった。

狼との戦いで棍棒を失ったことを思い出す。

「何か武器はないかな。片手剣タイプだと嬉しいんだけど」

「それなら……」

ユーサの問いにビスタはテキパキと反応し、先ほどと同じように箱を一つ選んで戻ってくる。

本よりも多少重かったのか、少し苦戦しながら縦長の箱をユーサの前にどんと置いた。
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