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精霊王の下へ編

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四人の精霊の力を借りて扉を開き、その扉の中に飛び込んだレオン達は時空を超えて旅に出た。

到着したのは深い森の中である。
「飛行」魔法を使っていた四人は体勢を崩して地面に頭から落ちる。

ずしりという重い音と共に、四人のうめき声が森の中に響いた。

「なんだ、今の……魔力のコントロールができなかったぞ」

誰よりも派手に地面と追突したマークが痛そうに鼻をさすりながらうめく。

マークほどではないにしろ全員がどこかしらを地面にぶつけて痛そうにしていた。

「転移魔法とは別種の魔法みたいだ。通り道には陰と陽の魔力が混ざり合っていて、僕たちの魔力を引っ張り合だてるみたいだった」

レオンは痛みに耐えながらもたった今通ってきた精霊界への扉を分析しているがその言葉はルイズの感嘆の声にかき消されてしまう。

ルイズは森を見て思わず声を出してしまったのだ。

オルセン侯爵家を出た時には朝方だったはずなのだが、辿り着いた場所の空は夜のように暗かった。

しかし、暗いのは空だけで森の中は驚くほどに明るい。

生え並ぶ木々の葉が煌々と輝いているのだ。

赤や青や黄色といった様々な光を放つ木々はここが別世界なのだと教えてくれる。

そして、ルイズが思わず声を出してしまうほどに美しかった。

その情景はおおよそ言葉では言い表すことができず、レオン達は言葉にならない声を上げた。


「ようこそ、精霊の地『テレニアの森』へ」

レオン達から遅れて地に降り立った妖精のアーティアが歓迎の言葉を告げる。

その横には二人の精霊が並び立ち、アーティアと同じようにレオン達に頭を下げた。


「あれ、精霊が一人いないね。風の子かな? シルエルっていう」


屋敷の中でレオンの体から飛び出した精霊の魂は確かに四つあった。
しかし、この場には三人しかいない。

そのことに気づいたオードがアーティアに尋ねるとアーティアは嬉しそうに笑う。

「あら、しっかりと名前を覚えてくださったんですね。嬉しいです。私達精霊は人に名前を呼ばれるのが大好きですから」

アーティアはオードにお礼を言ってからその質問に答える。

「ご心配なく、シルエルは向こうの世界に残りました。彼の力は必ずや向こうでも頼りになるでしょう」

どうやら風精霊シルエルは精霊の扉を通らずにオルセン侯爵家に残ったらしい。

それは主人であるレオンも初めて知ることだったが、残してきたヒースクリフ達に力を貸してくれるというのだから反対する理由はない。

むしろ、悪魔と対峙する時に精霊の力があれば少しは心強い。


「さて、皆様。これより精霊王アル・アル・カナル様の下へ向かいますが十分にご注意ください。かの方にお会いするのはそう簡単なことではありません」


アーティアは今度は深刻そうな表情になってレオン達に忠告する。

その言葉にいち早く反応したのはルイズだった。

「ちょっと待って、レオンは貴方達に認められて精霊王様に会えるんじゃないの?」

事前に聞いていた話では四人の精霊に認められれば精霊王と会う資格を得られるということだった。

それが、扉を通ってきた後に「簡単には会えない」というのならば話が違うという主張だった。

アーティアは慌てる様子もなく、ルイズの近くを飛び回り「まぁまぁ」と言いながら落ち着かせる。

「いえ、精霊王様に会うのは簡単です。もちろん資格もありますし、精霊王様の住むお屋敷はここから一本道ですから」


アーティアはそう言うとレオン達の前にできた道を指差す。

青い花が縦に続いてできたその道は光る木々を不自然に避けて真っ直ぐに伸びている。まるで木が意思を持って道を避けているようだった。

レオンはアーティアの口調に疑問を持つ。
精霊王に会う資格はあり、道は単純。
なのに、なぜか辿り着くのは困難。

アーティアの言い方では何か邪魔をする別のものがいると言っているように聞こえたのだ。
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