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第一章
第一話 俺と神
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浮遊感に揺られ、懐かしい夢を見ていた気がする。
「ここは……」
目を覚ました俺は、真っ暗な場所にいた。
足元も闇が広がっているので、立っているのか、倒れているのかも定かではない。
それなのに、俺の姿は暗闇にハッキリと輪郭を写していた。
「目を覚ました?」
俺の後ろには、少年とも少女ともいえる中性的な顔立ちをした人物が体育座りをしていた。
「お前は、誰だ。俺はどうしてこんな所にいる」
「ボクかい? ボクに名前はないんだ。でも色んな名前で呼ばれる。ヴァーリ、ネメシス、アレークトー、メガイラ、ティーシポネー、他にも色々な呼び方があったっけ? そうだな、強いて呼ぶなら、エリニュスとでも呼んでおくれ」
そう言って、エリニュスはクスクスと楽しそうに笑う。
「それで、キミがここにいる理由だっけ? 召喚されるんだよ」
エリニュスは小さな子供が親に答えるように簡単に淡々と告げた。
「召喚? どういうことだ?」
エリニュスは、ニヤニヤと笑いながら俺を見つめる。
「それをボクに聞かれてもね。召喚したのはボクじゃないんだから。ただ――」
エリニュスはゆっくりと腕を上げて、俺を指差す。
「キミはこのままだと、死ぬ」
ゾクッとするような瞳をして、口を歪に歪めて楽しそうに嗤いながらエリニュスは死を告げる。
「どういう……ことだ……」
問いを受けて、エリニュスは俺の方に向けた指を顎の下に持っていき、頭を傾ける。
「うーん。そうだねぇ。全てを説明することは簡単だ。でもそれは面白くない。特にボクが楽しめない」
エリニュスは瞳を閉じて、少し考える。
そして瞳と口を開いてこう言った。
「キミは世界を敵に回す。そして死ぬ。だからボクだけはキミを助けよう」
『助ける』その言葉とは裏腹に、エリニュスの瞳は悪戯を楽しむ子供のように無邪気で、そして――凍えるような死と深淵を孕んでいた。
俺はただただ恐怖だけしか感じなかった。
エリニュスの言葉を信じるつもりはない。
しかしそれでも、目の前のコイツが俺の想像もつかないような危険な存在だということは本能が理解した。
「さて、それじゃあまり時間もないことだしね。キミにはボクの加護を与えておくよ」
そういうとエリニュスは俺の視界から消えた。
次の瞬間――
――背後から俺の胸を刃が貫いていた。
「な、にを……」
「え? さっきも言ったでしょ? 加護だよ。かーご。じゃあそろそろ時間だし、キミがこれから行く世界のことを教えるね」
エリニュスは胸を貫いたことは当然だというように、話を続ける。
「キミが行く世界の名前は【ジタン】。幼馴染の彼女も一緒だよ。ボクはこれからどう世界が動くのか……楽しく見物させていただくことにするよ」
薄れていく意識の中、エリニュスの顔が恐ろしく残酷に歪むのが視界の端に入った。
それを最期に俺の意識は……闇に溶けた。
「ここは……」
目を覚ました俺は、真っ暗な場所にいた。
足元も闇が広がっているので、立っているのか、倒れているのかも定かではない。
それなのに、俺の姿は暗闇にハッキリと輪郭を写していた。
「目を覚ました?」
俺の後ろには、少年とも少女ともいえる中性的な顔立ちをした人物が体育座りをしていた。
「お前は、誰だ。俺はどうしてこんな所にいる」
「ボクかい? ボクに名前はないんだ。でも色んな名前で呼ばれる。ヴァーリ、ネメシス、アレークトー、メガイラ、ティーシポネー、他にも色々な呼び方があったっけ? そうだな、強いて呼ぶなら、エリニュスとでも呼んでおくれ」
そう言って、エリニュスはクスクスと楽しそうに笑う。
「それで、キミがここにいる理由だっけ? 召喚されるんだよ」
エリニュスは小さな子供が親に答えるように簡単に淡々と告げた。
「召喚? どういうことだ?」
エリニュスは、ニヤニヤと笑いながら俺を見つめる。
「それをボクに聞かれてもね。召喚したのはボクじゃないんだから。ただ――」
エリニュスはゆっくりと腕を上げて、俺を指差す。
「キミはこのままだと、死ぬ」
ゾクッとするような瞳をして、口を歪に歪めて楽しそうに嗤いながらエリニュスは死を告げる。
「どういう……ことだ……」
問いを受けて、エリニュスは俺の方に向けた指を顎の下に持っていき、頭を傾ける。
「うーん。そうだねぇ。全てを説明することは簡単だ。でもそれは面白くない。特にボクが楽しめない」
エリニュスは瞳を閉じて、少し考える。
そして瞳と口を開いてこう言った。
「キミは世界を敵に回す。そして死ぬ。だからボクだけはキミを助けよう」
『助ける』その言葉とは裏腹に、エリニュスの瞳は悪戯を楽しむ子供のように無邪気で、そして――凍えるような死と深淵を孕んでいた。
俺はただただ恐怖だけしか感じなかった。
エリニュスの言葉を信じるつもりはない。
しかしそれでも、目の前のコイツが俺の想像もつかないような危険な存在だということは本能が理解した。
「さて、それじゃあまり時間もないことだしね。キミにはボクの加護を与えておくよ」
そういうとエリニュスは俺の視界から消えた。
次の瞬間――
――背後から俺の胸を刃が貫いていた。
「な、にを……」
「え? さっきも言ったでしょ? 加護だよ。かーご。じゃあそろそろ時間だし、キミがこれから行く世界のことを教えるね」
エリニュスは胸を貫いたことは当然だというように、話を続ける。
「キミが行く世界の名前は【ジタン】。幼馴染の彼女も一緒だよ。ボクはこれからどう世界が動くのか……楽しく見物させていただくことにするよ」
薄れていく意識の中、エリニュスの顔が恐ろしく残酷に歪むのが視界の端に入った。
それを最期に俺の意識は……闇に溶けた。
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