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第十四話 不可解2
しおりを挟む「一体何考えてんだよ!あんな所で!!」
逃げ込むように部屋に入っては、千紘に食いかかるように怒鳴りつけた
千紘は澄ました表情で注いできた水を飲んでいる
「何ってお前が物欲しそうな顔してるからそれに応えただけだろ」
「はぁ!?そんな顔してない!」
「えー?なに?仲間外れ反対~」
市井が不貞腐れたようにブーブー文句を言う
オレは溜めていたものが吹っ切れたように二人に言い放った
「一体何の目的でオレを連れてきたんだよ!言えよ!」
そう言うと千紘と市井は目を丸くしてお互いを見ては、観念したように息を吐いた
「まぁ…そうだな、単刀直入に言おう」
千紘は先程のウィンドウショッピングで一人こっそりと買っていたらしい紙袋を物色し、それをオレの目の前に持ってくる
「これは…」
それは、見覚えがあった
一時期物凄く流行っていて、今も第3シーズンに突入している深夜アニメの主人公のコスプレ衣装だ
その主人公の顔に似ているだか何だかで、オレは一時期そのコスプレばかりさせられていたこともあり、その時の動画は物凄く伸びていた
「これを着てほしい」
「…は?」
千紘は真剣な顔でその衣装を押し付けてくる
オレは面食らった顔で戸惑った
「俺達今そのアニメ結構ハマっててさ~、初めてマツリちゃん見たのもそのコスプレしている時の動画だったんだ~」
ニコニコと市井が笑いながら補足する
差し出された衣装を、ついクセで受け取ってしまったオレはやっと我に返る
「…なに?じゃあこれを着せたくてオレにずっと付き纏ってたワケ…?」
「まぁ、そうだな」
呆気に取られる
こんなくだらないことの為にこの二人は必死になってオレにここまでのお節介を焼いたのか
「マツリちゃんホントに似てるんだよ~初めて見た時感動したもん」
市井が喜々として語ってくる
オレはそんな期待を踏み躙るように持っていた衣装を床に投げ捨てた
「誰がこんなの着るか!もう帰るからな!」
ソファに置いていた学生鞄を取ろうと手を伸ばすと、その手を強引に引かれてソファに倒れ込む
「ブッ!」
「ダメじゃん。そんな雑に扱ったら。それに、お前に拒否権なんてあると思ってんの?」
「お~市井がキレたぞ、床に投げ捨てるのはマズかったな」
千紘が横でケラケラと笑う
鼻を打ち付けて涙を滲ませたオレに市井は続けて言った
「下手に出てたらいい気になりやがって、今ここでブチ犯してやろうか」
そう言ってそのまま馬乗りになると、着ていた学ランを無理やり引き裂き、ボタンが四方に飛び散った
「な…ッやめ!…叫ぶぞ!」
「あ、そうそう既に上がっていた動画は俺達がなんとかしたけど、この前お前と遊んだ時の動画は俺達が持ってるからな」
「…はっ…」
市井は戸祭の衣服を淡々と脱がせながら、にこやかに言う
「叫んでも良いけど、もっと大変な動画がネットに流れちゃうかもね」
「それに、既に消した動画も俺達は管理してるからな」
二人はニヤついた顔でオレを見下ろす
オレは顔を青ざめて、自分の置かれた状況をやっと理解した
「………。」
ただ主導権が、学校の先輩たちからこの二人に変わっただけで、オレの立場は何も変わっちゃいない
タチが悪いのは、より悪質な脅迫になってしまったこと
奴隷はどう足掻いても奴隷なのだ
仮初の平穏に飼いならされた無知でバカな鳥籠の奴隷だ
あからさまに落胆した表情を浮かべて、オレは口籠り二人の悪魔の顔を交互に見やる
本当にバカだ、オレは。最初から分かっていた事なのに
「…分かった……」
目に涙が浮かび、馬乗りになる市井の握り拳に震えながら両手を重ねた
「それ着る…から…どいて下さい…」
オレの屈服した態度に、千紘と市井は満足げに微笑む
もう取り返しがつかない負の連鎖に、オレは袖を通した
.
「可愛いね、やっぱそっくりだよ。マツリちゃん」
「……ン…ッ…ふ」
「正義の主人公を服従させてる背徳感、ハンパねえな」
カラオケルームに、不純な音が響く
アニメのコスプレを着せられたオレは、ソファに座る市井の前に挟まるように屈み込み、拙い舌使いでその昂ぶりに奉仕していた
「ㇵ…ふゔッ…ン…ンッ」
ペチャペチャと口を開いた時に否応無く溢れる唾液が音を立てる
嫌なのに、同時に両耳をいたぶる手付きがじわじわと己の快感を拾い上げてしまう
「やっぱ下手だね~、これからいっぱい練習しようね」
ウイッグ越しに頭を撫でつける不快な感触に、苛立ちが募る
千紘の持つスマホの画面がこちらに向き、また新たに弱みが増えていく
「…も…撮るのは…やめ…っ…んぐッ」
「口放しちゃだめでしょ?ほらしっかり奉仕して」
市井に乱暴に頭を掴まれると、グと喉奥に剛直が挿し込まれる
口を圧迫する息苦しさと喉を貫く不快感で咳き込む
「アッ…が!ハッ!ゲホッゲホッ!」
「歯立てちゃダメじゃん。まあ今日はこのぐらいにしてあげる」
床に座り込む戸祭の両脇に手を回し、難なく持ち上げては膝の上に跨がらせるように座らせる
「待っ…こんな所で…!嫌だ…ッ」
グイッと市井の肩を押すと、それはあっさり解放された
余りにも呆気ない様子に逆に驚く
「そうだね、ここだと人に見られる可能性もあるし、今日はお仕舞いにしよう」
市井は笑顔でオレを隣のソファに掛けさせると、自身のポッケから一万円を取り出し机に置く
「これでお会計してね。着替えるだろうから俺達は先に出てるよ。また来週ね、マツリちゃん」
「……へ…?」
「その服、月曜日に持って来いよ。放課後迎えに行くから」
千紘もいつの間にか身支度を終えて、二人は平然とした態度で表へ出る
取り残されたオレは、鳩が豆鉄砲を食らった顔で呆然とした
「……何がしたいんだ…アイツら…」
オレは不可解な疑問符と口内の不快感を洗い流すように、テーブルに置かれたコーラを一気に飲み干し服を着替えてカラオケを後にした
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