夫が愛する妾との子供を認めない私は酷い悪女ですか?それならどうぞ、お好きになさって旦那様 〈ルイディアとマートルの日常〉

はなたろう

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結婚生活 2年0ヵ月 ~菜の花は警告する~

ミツバチの習性

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「まぁ、なんて美しい景色かしら!」


街から屋敷へ帰る馬車の中。窓の外に広がるのは、息をのむほどに鮮やかな光景でした。

一面を覆う黄金色の絨毯。遠くの山並みまで続く菜の花畑が、春の光を浴びてきらきらと輝いています。


「ねぇ、少し停めてくれない?」


思わず声を上げると、馬車はゆるやかに速度を落とし、静かに止まりました。

扉が開くと、むせ返るような、青々とした花の香りが流れ込んできます。その爽やかさに、旅の疲れも一気に吹き飛ぶようでした。


「今年の菜の花は本当に見事ですね。去年よりも、ずっと色が濃く見えるわ」

「ルイディアお嬢様、ご無沙汰しております!」

「あら、オルトさん。ごきげんよう」


声の主は、この土地の畑を長年管理しているオルトさんでした。丸々としたお腹に、いつもにこにこと笑っている優しい顔が印象的です。

御者が手綱を握り直す傍ら、私たちは言葉を交わしました。


「すごい香りですわ。今年の蜂蜜は期待できそうですね」

「ええ、ミツバチどもも大喜びで飛び回っております。今年は例年になく、蜜の質も量も期待できますぞ。とびきり上等なものを、必ず屋敷へお持ちしますから、楽しみにしていてください」

「それは嬉しいですわ。あなたの蜂蜜は、この世で一番美味しいものですもの」


スコーンにたっぷりとかけていただく蜂蜜は、私にとって何よりの贅沢です。

香り高い紅茶とともに、黄金色の液体がとろりと垂れるのを眺めるだけで、心が満たされていきます。


「それにしても、ミツバチは本当に働き者ですね。毎日、休むことなく花から花へと飛び回って」


そう言って、私は一つ大きなため息をつきました。それに比べて、私の旦那様ときたら。


結婚して2年。

彼は侯爵家の仕事を、いまだに覚えようとしません。

朝は昼過ぎまで眠り、昼は友人と釣りに出かけ、夜は街の劇場に入り浸っているようです。領地の経営も、屋敷の運営も、社交界での役割も、そのすべてを私が引き受けています。


唯一の取り柄といえば、女性への愛想の良さでしょうか。

特に、口うるさいマダムたちが来客した際には、とても重宝します。彼を応接室に座らせておくだけで、どんな女性でも上機嫌になってしまうのです。

まるで、その場限りの甘い蜜をばら撒いているように。


「旦那様は、お元気でいらっしゃいますか?」


私の気持ちを知ってか知らずか、オルトさんが尋ねてきました。私は軽く首を振ります。


「ええ、もう。元気すぎて困るくらいですわ。今日もきっと、どこかで羽を伸ばしていることでしょう」

「それは何よりですな」

「私たち夫婦は、花とミツバチとは大違いですわ。旦那様は蜜を集めるどころか遊び回って、私が咲かせた花を食い散らかすばかりですもの」


そう言って笑うと、オルトさんもつられて笑いました。しかし、その笑みはどこか引きつって見えました。


「花もミツバチが来てくれなければ種を紡げません。ミツバチも、花がなければ蜜を集められません。双方、必死なのですよ。お嬢様という花に、旦那様というミツバチが呼び寄せられる……そう見えますな」


オルトさんの言葉は、どこか私と夫の関係を暗示しているようにも聞こえました。


「ルイディア様、そろそろお時間です」


御者の声に、現実へと引き戻されました。


「美味しい蜂蜜を楽しみにしていますわ。その時は、ご一緒にお茶をしましょう」

「はは!次期領主様はなんともお優しい。この土地に生まれたことが誇らしいですぞ!」

「ふふ。お身体にはお気をつけて。この養蜂所がなくなったら、誰よりも私が困りますから」


そう言って、私は馬車へと乗り込みました。名残惜しく、遠ざかる菜の花畑を窓越しに見つめます。

やがて馬車は再び走り出し、少しずつ速度を上げていきました。景色は後ろへと流れていきます。


「あら?」


その時、遠くの菜の花畑の中に、ぽつんと立つ人影が見えた気がしました。


村の子どもが、かくれんぼでもしているのでしょうか。


黄色い花々の中に埋もれるように、その影は見えます。あまりに遠く、判別はできません。

私はそっと目を閉じ、ゆっくりと息を吐きました。

御者の声が遠くから聞こえ、馬車の揺れが心地よい眠気を誘ってきます。
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