紅の宝玉と二人の守護者

凍星

文字の大きさ
8 / 29
第1章 焔の精霊

◆7 危険な願い

しおりを挟む
 

――朱雀。

四神。
受諾者レシピエント
精霊憑き。
守護者ガーディアン………

吞み込みきれない情報ばかり。
心の中がザワザワしていた。

(僕が選ばれた?どうして?
 炎の精霊――僕は確かに魔術の中では炎系が得意だけど)

イリヤは無意識に自分の髪に触れた。
幼い頃から魔女のようだと揶揄われ続けた、この紅い髪……それも何か関係があるんだろうか、と。

「――そう不安そうな顔をするなよ、イリヤ。基本的に、精霊は憑いた人間を守ってくれるものなんだから、きっと悪いようにはならないさ」

重たい気持ちを振り払うような明るいフィルの声にハッとなる。

「……楽しそうだね、フィル?」
「それはそうだよ!国の歴史に残るようなことだしね。魔術に関わる者なら、どうしたってワクワクしてしまう」
「う、うん――そうだよね」

フィルが、こちらを安心させるようにポンポンと背中を叩いてくる。
好奇心にあふれ、単純に楽しそうな彼を見ていると、悲観的な気持ちも少し薄れた。

「出来る限りサポートするから、安心しろ」
「我々、教授陣もじゃ。この、国立聖セラフィム魔術学院から受諾者レシピエントが生まれたのは名誉なこと。其方を加護するのは我が天命と心得ておる。安心しなさい」
「――ありがとうございます」

そう言ってイリヤは微笑んでみせたが、心の中にはいまだ嵐が吹き荒れている。


――ああ、本当に。
これから、どうなってしまうんだろう?
2人は応援してくれているけど――

強い精霊が――“神”と呼ばれる程の存在が自分の身に宿る?
それは本当に幸運なのか?


(ずっと欲しかった強さが……
冗談じゃなく手に入るって、実際どんな感じなんだろう)


イリヤはまた自分の髪に触れて、くしゃりとかき混ぜた。
国を動かす程の名誉と力……


(それはもしかして、望む相手をひざまずかせられる位、強いものなのか?)


忘れようとしても忘れられない相手の顔が、頭に浮かび上がってくる。


(――僕がずっと考えないようにしていた願いを、果たすことが――叶う……?)


途端に、どくんと――心臓が強く脈打つ。

“復讐”

そんな二文字が、イリヤの胸の裡を……燃え広がる炎のように侵蝕していく。
急に頬が熱くなり、震えが走って。恐れを隠すように、イリヤは自分の身体をそっとかき抱いた。
その時、胸の紋章も赤みを増して輝いていたなんて――そこまで気付きはしなかった。ブラウスの紐はすでに閉じていたから。

イリヤがそんな暗い感情に苛まれているとは知らない二人は、今後のことを予想して会話が盛り上がり、楽しそうにしている。

だけど、今。この瞬間に。
平穏な学院生活は終わりを告げた、という現実を。
この時のイリヤは、まだ完全には理解していなかったのだ…………


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

たとえ運命じゃなくても、僕は

mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。 たとえ運命から背を背けようとも」 音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。 努力家の先輩αと、 運命の番だと告げられた天才α。 運命か、愛情か―― 選ぶのは、僕自身だ。 ※直接的な描写はありません。

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

愛だの恋だの馬鹿馬鹿しい!

蘇鉄
BL
「俺は誰とも関わりたくないんだけどなあ、おかしいなあ?」 『回答。ユーザー様の行動が微妙に裏目に出ています。シミュレーション通りにならず当システムは困惑しております( ゚Д゚)』 平和な学生生活を手に入れるために生活サポートAIシュレディンガーと共に色々と先回りして行動していたらいつの間にか風紀委員やら生徒会やらに追い回される羽目になっていた物部戯藍。 街を牛耳る二大不良チームも加わる中、執着される理由がわからず困惑しつつも彼は平穏な生活の為に逃げ回る。 彼は愛も恋も信じない。それはとても不確かなものだから。バカバカしいまやかしだと決めつけて。 ※ 不定期更新です

祖国に棄てられた少年は賢者に愛される

結衣可
BL
 祖国に棄てられた少年――ユリアン。  彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。  その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。  絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。  誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。   棄てられた少年と、孤独な賢者。  陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

【8話完結】ざまぁされて廃嫡されたバカ王子とは俺のことです。

キノア9g
BL
廃嫡され全てを失った元王子。地道に生きたいのにハイスペ幼馴染が逃がしてくれません。 あらすじ 「第二王子カイル、お前を廃嫡する」 傲慢な振る舞いを理由に、王位継承権も婚約者も失い、国外追放されたカイル。 絶望の最中、彼に蘇ったのは「ブラック企業で使い潰された前世の記憶」だった。  「もう二度と、他人任せにはしない」 前世の反省を活かし、隣国の冒険者ギルドで雑用係(清掃員)として地道にやり直そうとするカイル。しかし、そんな彼を追いかけてきたのは、隣国の貴族であり幼馴染のレオナードだった。  「君がどんな立場になろうと、僕にとっては君は君だ」 落ちぶれたカイルに変わらぬ愛を注ぎ、元婚約者の悪意ある噂からも守り抜くレオナード。 すべてを失った元バカ王子が、社畜根性と幼馴染の溺愛によって幸せを掴むまでの、再起と愛の物語。 全8話。

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

処理中です...