【完結】独占欲の花束

空条かの

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9章『恋恋編』

173「俺にもチャンスくださいよ」(R)

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「天王寺にレイプされたんですよね」

ゾクリと背中が縮んだ。
あの時に味わった恐怖と痛みが、一気に俺に襲いかかる。
記憶が呼び覚まされて、俺の瞳は大きく見開き動揺して揺れる。

「体から始まった恋なら、俺にもチャンスありますよね」
「やめ、ろ……」

高城は楽しそうに囁くと、俺の首筋に指を滑らせた。
そして、甘い香りが俺の口元に漂い、何かが唇に押し当てられる。

「チョコレート、好きでしょ」

正方形の小さなチョコレートを、高城はおひとつどうぞと笑う。
危険な匂いのするチョコレート。食べてはいけないと本能が知らせるが、固く口を閉じた俺の鼻をつまみ、高城はわざと呼吸を奪って、口を開かせる。

「……はぁ、っ……んぐっ」

苦しくなって開いてしまった隙間から、高城が無理やりチョコレートを押し込んだ。
それは、甘く甘く、焼けるように甘いカカオ。

「天王寺より、もっとずっとよくしてあげますよ、姫木先輩」
「何を……」
「媚薬入りチョコレートは、どうですか?」
「……媚薬?」
「姫木先輩も気持ちいい方がいいでしょう」

背筋が凍った。
高城の目的を知り、俺は逃れようともがくが、両手を捕らえられ、体は高城自身で壁に押さえつけられ、完全に身動きが取れない。
自分の非力さに泣けてくる。

「何、考えてんだっ!」

睨みつけて声を出せば、なぜかニヤリと笑われた。
「俺にもチャンスくださいよ」
「チャンス?」
「襲われて、恋に落ちたなら、俺にも試させて」


『せんぱい』


と、甘く囁いた。

「違うッ!」
「何が違うんですか、レイプされた相手を好きになるなんて、普通じゃないですよ」

高城の瞳が冷たく光った。
怖くて、気持ち悪くて、痛かった。無理やり襲われたあの感覚が身体を震わせる。
俺を襲った天王寺。
怒気に満ちて、乱暴に扱われた記憶が鮮明に浮かび上がり、全身が小刻みに震え出す。

「……ぅ、っ……ん、ぅ」
「コレ、吸ってください」

高城は俺の口を手で塞ぐと、鼻先に小さな小瓶を近づけてきた。花のようなハーブの甘い香り。
嗅いではいけないと、俺は息を止める。
すると、

「や、ぁ……、んんっ……っん」

何を思ったのか、高城は俺に口づけをしてきた。
唇で覆うように俺の口を塞ぎ、舌に舌を絡めて、呼吸を奪うような濃厚なキス。
それから、何故か鼻を摘ままれた。
首を左右に降って、なんとか高城から逃れようともがいたが、後頭部を強く壁に押しつけられ、逃れられない。
息が……、苦しい。
そう思った瞬間、突然摘ままれていた鼻を解放され、代わりに口が手で塞がれる。
鼻でしか空気を取り込めなくなり、俺は怪しい小瓶の香りをめいっぱい吸い込んでしまった。

「う、……ごほっ、……っ」
「いっぱい吸いましたね」
「なんだよ、コレ……」
「気持ちよくなれるモノですよ」

チョコレートに続き、媚薬的なものを与えられたんだと知った。

「……高城」

こいつは本気で俺を襲うつもりなんだと、恐怖で顔が歪む。

「いっぱい気持ちよくしたら、俺を好きになってくれますか?」

狂気かと思うほどに、高城は怪しく笑みを浮かべていた。
無邪気な高城はここにはいない。

「なるわけないだろう」
「だから試すんですよ。天王寺よりよかったら、俺を好きになるかもしれないじゃないですか」
「ならない」
「はっきり言ってくれますね」

妖艶に微笑んだ高城は、そう言って俺にもう一度キスをしてきた。

「やぁ、……」
「天王寺のように、乱暴になんかしませんよ」

優しいキスをして、高城はそっと俺の頬に手を添える。
それから、恐ろしい台詞を続けた。

「姫木先輩から、淫らに誘ってくれますから」

赤い唇を舌で軽く舐めた高城は、もうすぐ俺が媚薬に溺れると示唆する。
汗がじんわりと滲み出す。それは、チョコレートのせいなのか、それともあの怪しい小瓶なのかはわからないが、ドクンと身体が跳ねる感覚がした。
その感覚は全身に行き渡り、熱を持った心臓が全身にあるみたいな感覚がしてきた。
ドクドクと脈打ち出した俺の身体は、悶えるように熱い。

「……ぁ、は、ぁぁ……」
「熱いですか?」
「熱く……、な、い」

虚勢をはって、俺はなんとか高城を睨み付ける。

「やぁぁっ!」

それを聞いた高城が、俺の下肢を膝で撫でた。
すでに固くなっていたそこは、わずかな刺激に反応してしまう。

「嘘つきですね。姫木先輩のここ、もう充分に熟れてますよ」
「やめ、触る……なっ、はぁんんッ」
「撫でただけですよ」

高城が言うとおり、服の上から撫でられただけで、俺は電気が駆け抜けたような快楽を味わってしまった。
足に力が入らなくてなってきて、俺は情けなくも高城に抱きつくように身体を崩してしまう。

「……も、やだ……」

もどかしい感覚が駆け巡り、俺は強い刺激がほしくて高城を見つめてしまう。

「熱いですか?」
「……、熱い」
「可愛い、姫木先輩」

熱に浮かされて見つめた高城は、嬉しそうに俺を支えると、浴衣の隙間から手を差し込み、直接触れてきた。

「はぁっん! ……あぁっ……、ああッ!」

握られただけなのに、俺は白濁とした熱を高城の手に放ってしまっていた。

「そんなにいいんですか?」

触られただけで達してしまった俺に、口角を緩めた高城は満足そうに問いかける。
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