【完結】独占欲の花束

空条かの

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9章『恋恋編』

178「他の誰にも渡したりはせぬ」(R)

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「私の手に落ちてしまえばよいのだ」

このまま全てを預け、自分のものになってしまえばよいのだと、天王寺が囁く。

「姫は私だけのもの、他の誰にも渡したりはせぬ」

決して手放したりはしない、生涯をもって愛すると誓う。だから自分の元へ来て欲しい、自分だけを見て、自分だけを愛してほしいのだと、天王寺は想いを募らせる。

「……天王寺も、俺だけ、……のもの……っあ、っ」
「姫?! 今、なんと申したのだ」
「天王寺は、俺のだって……。俺以外に触っちゃ、……やだ」

泣き声に近い甘えた声でそんなことを言われ、薬のせいだと分かっていても、天王寺の理性は崩れていく。もう一度聞きたい、もっと自分が欲しいと言わせたい、甘えて欲しい、強く欲を欲した天王寺は、

「私が欲しいと、再度申すのだ、姫」

激しく腰を穿ちながら、強要する。
「やっ、ああ……、欲しい、天王寺が欲しいから……あ、ぁッ」
「姫、姫……」
「ッ……らめ、ぇ……とって、天王寺、そこ離してっ、ぁぁっあ」

塞き止められた下肢が、限界以上の硬さと膨張を訴えるが、握り込まれたままそれは解いては貰えず、焼けるような摩擦を感じるほどに布団に身体を擦られる。
もう何も考えられなくなった姫木は、ただただ出口を解放してほしいと啼く。

「なんでもするからっ、……やああッ、も、出したい……」

悲鳴のような喘ぎを漏らされ、天王寺はようやくそこから手を外した。しかし、それと同時に腰を激しく突き上げ、胸の尖りを摘まみ上げた。
最深部を激しく突かれ、擦られ、心地よい痛みを伴う刺激を胸に受け、姫木の身体が跳ねるように撓る。

「私を愛せ、姫。そなたの全てが愛おしい、……姫は私のものだ」
「やああ、ダメ、だめぇ……、ッ壊れちゃう……」
「壊しはせぬ。溺れさせるまでだ」
「い、やぁッ……死んじゃう。……天王寺ッ……やぁああ、あ゛あ゛ァァ――ッ!」

天王寺が、焼けるように熱い白濁とした液を奥に打ちつければ、高い嬌声をあげた姫木の身体が一度大きく跳ねて、そのまま力なく崩れた。
ぐったりと、布団にうつ伏せに倒れた姫木の意識はなくなっていた。それを確認した天王寺は、ドロッとした体液とともに自身を姫木からゆっくり抜き去ると、うつ伏せになっている姫木をそっと抱き起こし、仰向けに抱きかかえる。

「ようやく飛んだか」

乱暴にしてしまったことには悔いがあったが、こうでもしなければ、あのまま本当に壊れてしまうまで求め続けるだろうと、奥歯を噛む。
おそらく身体は今だに火照ったままだろうが、意識がなければやり過ごすことができる。天王寺は、泣きはらした瞼と頬を見つめ、苦く辛い表情を浮かべた。

「……そなたをここまで泣かせるつもりなど、なかったのだ」

許して欲しいと、天王寺は声にならない謝罪をし、そっと持ち上げると、泣きはらした頬にそっと口づけを落とした。

「姫にこのような仕打ちをした者が、許せぬ」

薬物を使用してまでも、姫木をいいようにしょうとした者が誰であっても許せないと、天王寺の顔は恐ろしく陰る。もしも尚希が姫木を見つけていなかったら、今頃姫木は誰かに襲われ、誰とも知らない者に強請って、甘えていたかと思うと、その怒りと嫉妬は計り知れない。
今すぐにでも犯人を再起不能まで落としたいと思いながらも、天王寺は姫木を綺麗にしてあげることを優先する。
優しく抱き上げ、浴槽へと向かった天王寺は、姫木の身体を拭い新しい浴衣を着せ、新しい布団に寝かせると、自らもシャワーを浴びて、尚希の部屋を後にした。

「しばし、大人しくしておるのだぞ」

部屋を出るとき、眠る姫木の手の甲へ触れるだけの口づけをして。






犯人は尚希に任せてある。ゆえに、今頃実行犯は見つかっているだろうと、天王寺は怒りを抑えながらフロントへと向かった。
顧客情報を漏らすような宿ではない、しかし尚希ならば言葉巧みに糸口を見つけているだろうと、天王寺はあえてフロントに声をかけた。
夜も遅く、フロントには一人しかおらず、天王寺は好都合だと若干の安堵感を得ていた。

「すまぬが、兄が落とし物をしたらしいのだ。何か届いてはおらぬか?」
「天王寺尚人様、お調べいたしますので、少々お待ちを」

フロント係は丁寧にお辞儀をしてから、奥の事務所へと入っていく。高級旅館での落とし物、しかも利用客は富裕層の方々ばかり、落し物は厳重に金庫にしまわれている。故に時間がかかると分かっての行動だった。
フロントから人払いをした天王寺は、急ぎ本日の宿泊客の名前を覗き見る。
偽名を使用する者もいるが、天王寺はとある名前を見つけ、グッと拳を握った。


『高城 学』


確かにその名前があった。

「お待たせいたしました。当館で現在お預かりしておりますものは……」
「すまぬ、見つかったとの連絡があった。手間を取らせた」
「いえ、お探し物が見つかりまして、何よりです」
「感謝する」

天王寺が礼を述べると、フロント係は笑顔で会釈を返し、見送ってくれた。
部屋番号を頭に入れ、天王寺は迷うことなくその部屋へと向かう。
きっと尚希がいるだろうと、天王寺は部屋まで来ると軽くノックをしてみせた。チャイムがついてはいたが、天王寺は怒りが抑えられず、思わずドアを叩いていたのだ。
数回も叩けば、ドアが開けられた。
当然、天王寺は勢いよくドアを開けると、殴り込む勢いで部屋に侵入する。そして、すぐに尚希に抑えられた。

「落ち着いて尚ちゃん!」

そのままの勢いで高城を殴り飛ばすんじゃないかと、尚希が先手を打って抑え込んだのだが、高城の頬はすでに真っ赤に腫れ、口角からわずかだが血も滲んでおり、畳の上に座り込んでいた。

「……これは」

驚いた天王寺が声をだせば、尚希が軽く舌を出して見せた。

「ごめん、やっちゃった」

天王寺が手を出す前に、尚希がやってしまったと白状した。尚希が誰かに手を出すなんてにわかには信じられず、天王寺は驚きとともに視線を向けた。
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