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第五話

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 改めましてーレティです。
 今回語るのは、規模だけなら大型の世界……その名も【煌霊合神エルフィオン】!!
 あ、でも今は存在していないので検索しても無駄ですよー。

 私はその世界の、とある貴族の娘でした。
 それしか語れない様な私がふと、彼等と出会ったんです。

 そう、アシュフィル君達――この世界の主人公達なんですよー!
 あと私がこうハッキリと言える理由は話の先できっとわかると思います。

 彼等の力は凄まじいものでした。
 なにせ空から飛来した巨大機動兵器を前にして、圧倒的な力で返り討ちにしたんですから。
 眼から光線を放ち、巨大な腕を飛ばし、重厚な脚で蹴り上げて。
 敵はあっという間にスクラップです。

 きっと私達だけでは敵わない相手だったでしょう。
 何せ剣と魔法くらいしか無く、鋼鉄の残骸でさえ処理するのに時間が掛かったのですから。
 なので彼等自身が片付けを手伝ってくれたりと、皆いい人ばかりでしたね。

 そしてその際、アシュフィル君達は教えてくれました。
 「今の相手が僕達の敵なんだ」って。

 その敵が何故この星を襲いに来たのかはわかりません。
 けれど、なんか力になりたいと思って。

 いや、きっとならないといけなかったんですね。
 彼等にしか対抗出来る戦力は無かったですから。

 だから私は彼等と共に歩む事を決めました。
 一族の財産をも費やすつもりで。

 それから私達は幾度と無く戦いを繰り広げました。
 それはもう、何度も死にそうになりながら。
 もちろんエルフィオンも苦戦したり、あるいは負けた事だってあります。

 それでも諦めずに戦いました。
 そして知ったのです。空から飛来する敵の正体を。

 敵――それはかつてELFと争った種族、OGAでした。

 大昔、彼等OGAはELFとの宇宙戦争で痛み分けし、休戦したそうな。
 ですが遥かな時を超え、今また過去の復讐を果たそうと戦いに来たという。

 そう、OGAは私達の星ではなくエルフィオンを狙っていたんです。
 後に彼等自身がそう公表した事で事実が明らかに。

 これには世界が反発しました。
 私達は一斉に非難の的となり、支援も打ち切られて。

 でもアシュフィル君達はそれでも諦めませんでした。
 「絶対に世界を守ってみせる」と。己達の身も立場も顧みず。

 だから私もそれに賛同し、そしてある事が起きたんです。

 それは強敵の新型OGAマシンにより窮地に立たされた時でした。
 突如、私が六人目としてエルフィオンと合体したのです。

 そして進化した巨人は更に巨大となり、超パワーを得る事に。
 その名も、【大煌霊合神ハイエルフィオン】。

 その力によってOGAマシンは瞬殺。
 更にその力で宇宙へ上がり、敵本拠地へと乗り込んだのです。
 多くの人々の応援の名の下に。

 そう、アシュフィル君達の必死な姿が人々に勇気を与えていたんです。
 皆、やっぱり彼等を信じていたんですよ。

 その応援のお陰で力が増し、OGA本拠地であるマザーシップの破壊に成功します。
 必殺、エルフィングスターゲイザーによって。
 それでやっと世界に平和が訪れました。

 とはいえ、この戦いで世界の幾つかの都市は壊滅しましたけどね。

 とにかくこれで戦いは終わり。
 平和な世界を享受しよう。

 そう思っていた矢先でした。



「ククク、平和を享受出来ると思ったか? 我こそは魔王……募った憎しみを受け、今こそ生まれたぞ!!」



 そう、新たな敵が現れたのです。

 その名も【魔王バルフェドー】。
 OGAの憎しみを吸い取って生まれた邪悪な存在でした。

 彼等は宇宙の果てにあるOGA本星より飛来してきて。
 更に強力になったOGAマシンで星を攻撃し始めました。

 そう、彼等はもはやエルフィオンだけでなく、私達の星を破壊対象としたのです。

 ハイエルフィオンも戦いました。
 しかし相手はもっと強かった。

 その結果は散々たるもので。
 なんと世界都市の九割が壊滅し、人々の半数が死に絶えました。
 相手が巨大な隕石を落としてきた事によって。

 これは私達も防げないくらいに激しい猛攻だったんです。
 なので私達もこれには諦めそうになります。
 それ程に相手が強大だったから。
 
 ですが戦いが最高潮を迎えた時、星が一つになりました。

 何と人々が一丸となり、星を介して私達に心を送ってくれたんです。
 これが私達に大いなる力を与えてくれました。

 そしてまた進化したのです。
 更に強大で、巨大で、猛々しくも壮観なその姿へ。
 その名も、【煌霊合神王カイザーエルフィオン】。

 その力は私達の想像さえ遥かに超え、とてつもなかった。
 何せ宇宙より飛来する魔王兵団を瞬時にして消し飛ばしたのですから。

 そして最終決戦へ。
 私達は魔王と対決しました。

 それはもう長く激しい戦いでしたね。
 OGA本星を消滅させるくらいに。

 ですが辛うじて私達の剣が届き、魔王は暗黒空間に呑まれて消えました。
 必殺、エルフィングカイザースターバーストによって。
 私達が勝ったのです。

 とはいえ、この戦いで私達の本星も死に掛けましたけどね。

 とにかくこれで戦いは終わり。
 世界を新たに復興し直そう。

 そう思っていた矢先でした。



「フハハ、星を蘇らせるなど無駄な事……我こそは超魔王。暗黒に溜まった負を今こそ解き放とう」



 超魔王って何!? 超って何なの!?
 思わずそんなツッコミが飛びましたね。

 でも超魔王【バルバム】はそんな冗談が通じないくらいに強かったんです。

 私達の星が、消滅しました。
 一瞬で、人々をも巻き込んで。

 私達はその頃OGA星域から戻る最中で、全く間に合いませんでした。
 見ているその中で故郷が消滅させられたんです。絶望しましたね。

 それでも私達はやっぱり諦めません。
 もうこうなったら戦うしかない、たとえハイエルフィオンのままでも、と。
 まぁ半分はもう破れかぶれでしたけど。

 もちろん戦いは惨敗。
 私達は完璧に打ちのめされて。
 もう世界に平穏は訪れないのだろうと嘆きました。

 今までの戦いは何だったの?
 こんな強い敵が何でここまで出て来るの? と。

 すると、私達の嘆きを聞き取ったのでしょう。
 なんと銀河の星々が応えてくれたんです。

 それがまた戦う力を与えてくれる事となります。

 カイザーエルフィオンよりもずっと強く、大きく。
 それでいて神々しささえ醸し出すその神霊巨神が姿を現します。
 その名も、【星煌霊合神ギャラクシーエルフィオン】。

 その力もまた神々しいものでした。
 星をも消す超魔王の波動魔弾でさえ無効化するのですから。

 この力で、私達は超魔王と戦いました。
 銀河系の命運を賭けた戦いとして。

 そしてとうとう超魔王を真っ二つに。
 必殺、ギャラクティックオーバースラッシュによって。
 私達が勝ったのです。

 とはいえ、この戦いで私達の銀河星系の大半が消滅しましたけどね。

 とにかくこれで戦いは終わり。
 新たな新天地を求めて旅立とう。

 そう思っていた矢先でした。



「諦めろ、世界にはもう安息は訪れない。そう、我……業魔王がいる限り!!」



 もうやめて、ホント勘弁して。

 一息つく暇も無いんです。
 だってここまでOGA最終戦から一週間経ってないんですよ? 速過ぎません?
 まぁしょうがないから戦いますけど。

 半分、いや七割くらい呆れたまま私達は戦いました。
 でもね、やっぱり負けるんですよ。
 そりゃもう強かったんです、業魔王【ングドィウヴァー】は。
 発音難し過ぎるからもう【業さん】でいいよねって、口合わせする暇しか無かったんです。

 お陰で私達の銀河が消滅しました。

 でもまぁもういっかなって。
 故郷ももう残って無いし、何を守るのかもさっぱりわからなくなってたんで。

 けどやっぱりお約束で、宇宙中の星々が一斉に力を分けてくれたんです。
 「いやもうその力で直接業魔王倒せよ」ってツッコミましたけど。

 それで出来たんですね。強い、大きい、カッコイイ。
 その名も、【双陽煌霊合神シャイニングエルフィオン】。

 この力で私達は業魔王と戦いました。
 それはもう激戦でしたね。
 何せ剣の一振りで星々が消し飛ぶし、太陽でさえ火傷にすら出来ませんから。

 まぁそんな訳で私達が勝ちます。
 必殺ファイナルエルフィングプロージョンで。
 もうどんな技かは覚えてません。眩し過ぎたので。

 とはいえ、その光で宇宙の半分の星が消えた訳ですけどね。

 とにかくこれで戦いは終わり。
 どうしたらもういいかわからないけど何かしよう。

 そう思っていた矢先でした。



「ならば滅びを与えよう。我、宇宙大魔王が」



 ないわー。その名前はないわー。

 もうそれしか出ませんでした。ネーミングセンスの欠片も無いし。
 んでもって宇宙が滅びます。私達だけ残して全部暗黒空間と化します。
 これどうすりゃええの? なんて呆れ返る中で。

 すると今度は神様が出てきて。

「もうお前達に任せる以外の道は無い。あの宇宙大魔王は私の力を超えている。あれは私の範疇を超えて生まれて来たものだからだ」

 アッハイ。
 そしてお決まりのパワーアップです。
 その名も【真世煌霊合神グランゴッドエルフィオン】。
 この力をもらって宇宙大魔王に戦いを挑む事に。

 ――ですが。

 ここで皆が疑問に思います。「これ、無限ループじゃね?」って。
 なのでふと、私達は試みる事にしたんです。

 宇宙大魔王との対話を。

「宇宙大魔王さん、貴方の目的は一体?」

「え? なんだろう?」

 するとこんな意外な答えが返ってきました。

 そう、宇宙大魔王さん、自分の目的がわからないそうです。
 ただ滅ぼすくらいしか。
 それもざっくばらん過ぎて、絶対にやりたいとかそんなんじゃなくて。

 そこで私達はさっき話し掛けて来た神に返します。
 「宇宙大魔王さんの存在意義とは?」って。

 そうしたらこんな答えが返って来たんですよ。

「いや、知らないんだって。私にも想定外な事で。だって考えたの私じゃなくて読者だもん」

 だそうで。
 ここでちょっと神に相談し、原因を突き止めてもらう事に。
 それでようやく原因がわかったんです。
 この世界にやたらと魔王の訪れるその理由が。

 何でも、他の世界で転行っていうのが起きまくってて。
 でもなんか世界に意図しない行動をする主人公が増えたそうな。
 目的から外れてスローライフ? とか死亡フラグ回避? とか。

 お陰で各世界から【運命力】っていうのが溢れまくってるらしくて。
 それが私達の世界に一気に流れ込み、次々に強敵を産んだのだそうです。

 【運命力】っていうのはすなわち、世界のイベントを起こす力。
 たとえばドラマティックに物事を解決したりすると大きく消費したり。
 逆に敢えて平凡を貫くと徐々に増えていったり。

 本来はその力をコントロールする事で世界が成り立つそうで。
 でも今はその仕組みすら無視した、いわゆる起伏の少ない世界が増えたんだそうです。
 何でも、ハードな展開を好まない神が増えたのが原因らしいと。

 加えて、主人公が自分勝手に動く事で本来起きるべきイベントが起きない。
 すると行き場を失った【運命力】が世界から飛び出してしまう。

 それも、最も力を消費しやすい場所へと向けて。

 そう、その行き先こそが私達の世界。
 並いる魔王を屠れるポテンシャルを持ったエルフィオンの下だったんですね。

 良い【運命力ふこう】の消費先だったのでしょう。
 強い刺激を求める勢のしわ寄せ先って事です。

 ま、私達にとっては迷惑千万で。
 早速抗議し、対策を練ってもらう事に。

 そのお陰で最近ようやく落ち着きました。
 今は宇宙大魔王さんと一緒に宇宙の外、聖域【非公界】で仲良く暮らしてます。
 ほら、もう私達の世界滅んじゃったし、帰る場所も無いんで。
 それにこれは特別措置みたいな感じらしいし。

 宇宙大魔王さんも悪い人じゃないっぽいんでいいかなーと。
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