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第一二話
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しおりを挟む誰も報われませんね。
物語は揚々と進んでますけど。
「えぇ。ワタクシもゴリラのままですから、恋なども出来ませんし。かの守護騎士達の様に完凸している方が相手ならまだしも、普通の人間ではハグしただけで破裂しますので」
ゴリラ補正高過ぎません?
それもう通常のゴリラの範疇超えてますよね。
明らかに超ゴリラ人ですよね。
お月さま見たらヤバイ奴ですよね。
「ですが尻尾は握られると快楽でパワーアップします。違う転生者が試した瞬間、この世から消滅しましたの。迂闊ですよね」
ヒエ……容赦ありませんね、ゴリラパワー。
胸がバチバチしてそう。ドラミングで。
そういえば今、違う転生者とおっしゃいましたが。
もしかして、今でも転生者と出会うのですか?
「はい、幾度も出会っておりますよ。続く冒険の最中で。新たな守護騎士だったり、従者だったり、あるいは暗殺者だったり。重要そうな場面で出会う方は大概転生者だったりします」
で、恨み節をぶつけられると。
「そうですね。決まっていつも『私こそがゴリラに相応しい』と名乗ってくれます。でもだからと言って【令ゴリ】プレイヤーだけという訳じゃありません。ゴリラの飼育員だったり、ゴリラの保護運動をしていたり、ゴリラハンターだったり、ゴリラ信仰の原住民だったり。ゴリラ関係者オールスターバトルって感じです」
ゴリラ愛に溢れてますね。
なんですかね。
この世界を創った神様、ゴリラに命を救われたんでしょうか。
一人くらいは普通な人がいても――あ、それがルクセレンさんですね。
明らかに一人だけ場違いですもんね。
今はゴリラそのものですけど。
「そう言ってくださると少しは救われますね。(笑) まぁ冒険し続けていると馴れてしまって。今ではもうすっかりゴリラである事に誇りを持ってしまっています。もう普通な人はいなくなってしまいましたわ」
か、帰って来てくださーい!! まだ間に合いますからー!!
となると冒険も大変でしょう。
毎度毎度バトルなんじゃないです?
ゴリラ願望バトルロワイヤルみたいな。
「いいえ、さすがにそこまでの頻度では。精々ワタクシの冒険先に現れる障害程度ですわ。でもその度に新たな称号の力で消し飛ばしています。全裸に剥いて。なのでほとんど戦いはありませんの」
称号、まだ増えてるんですか……。
「えぇもちろん。今となっては、悪役令嬢聖女賢者薬師仙人侯爵鍛冶屋錬金術士商人公安看護師仕立屋魔王傀儡師ゴリラを名乗っています」
え? ちょ……す、すいません。
途中から何言ってるかわからなかったです。
漢字だけで目滑りしたの初めてかも。
どういう事です?
つまり、もうそれだけイベントクリアしたって事なんです?
「そうですね。しかも今現在も継続中です。今付こうとしている称号は勇者とスチュワーデスですね。同時取得を狙っています」
勇者とスチュワーデス。
待ってください?
どうしてもそれが同時に付くシチュエーション思い浮かばないんですが?
「最近、古代の飛空船を手に入れまして。そこで市民を乗客として乗せて、そのまま勇者として大魔神との最終決戦に挑もうとしている所です」
逃げてー!! 乗客逃げてぇーッ!!
「ですが安心してください。聖女ゴリラ究極能力・ゴリラクゼーションのお陰で、ワタクシの半径三〇キロメートル以内にいれば死んでも直ぐに蘇生されます。粉々になっても問題ありませんから安心ですわ」
ゴリラ汎用性たけぇ!! そんなにゴリラ凄いの!?
っていうかゴリラって何なの!? もう訳わからないんですけど!?
「ゴリラというのはすなわち、究極に進みし者という意味があります。ですので、ゴリラにいたった者は人を超え、獣を超え、そしていずれは神をも超えるでしょう」
アグレッシブビースト過ぎませんかそれ。
野生本能どころか神力開放しそうな勢いです。
なんだかその体格の理由がわかる気がしますね。
なんせもう地球基準で身長六メートル? くらいありますし。
合体したんです? 鷹とか豹とか虎とかと。
「常に成長期ですから。まだまだ大きくなれるでしょう。ただ、惜しむらくはこの力を最大まで引き出す機会が無いという事ですか。もし今、力を解放すれば恐らく星が持たないでしょうから」
そうですか。成長期なら仕方ないですよね。
にしてもなるほど、その気持ちよくわかります。
ワタクシも時々ありますから。
ありあまった力、試したいですもんね。
「パプリエル様もきっと持て余しているのでしょう? 何せ前々回の後の非公開戦、凄かったでしたから。お呼ばれした際に目を通させて頂きましたが、その素晴らしい戦闘能力に感激致しました。是非ともお手合わせを願いたい程に(微笑)」
おや、やりますか? フフフ。(メキキッ)
「よろしいですわよ? ワタクシはいつでも(ゴギンッ)」
――と言いたい所ですが。
実は前々回の戦いの際にスタジオ界を半壊させてしまいまして。
今後はその様な事が無きようにと注意を受けております。
なので申し訳ありませんが、正式な機会を得た時によろしくお願い致しますね。
ただ、天使は私闘を禁じられておりますゆえ可能性は薄いと思ってください。
「あら、それは残念です。なら仕方ありませんね。滞在中は予定通り、観光スポットの神ゴリラ専門店に赴いて楽しんでくる事に致します」
神ゴリラ専門店……ッ!?
そんなお店が天界にあったんですか!?
ううーん、天界の事なら大体知ってるつもりだったのですが。
どうやらまだまだ未熟者だった様です。
まさか下界の方に思い知らされるとは。
天界マスターへの道は実に険しいですね。
さて、今回の紹介された世界は如何だったでしょうか。
確かに、ルクセレンさんは今でも快進撃を続けております。
ですがその過程において誰一人救われてはいません。
むしろ後悔したまま消し飛ばされているという。
果たして、これはルクセレンさんにとって幸せと言えるのでしょうか。
いいえ、正しい心を持っているからこそ彼女にとっても不幸でしかないのです。
たとえ順応しているのだとしても。
だからこそ世界の神には幸せの意味を理解して頂きたいですね。
ただ悪を倒せばいいだけでなく、その行いに報われる結果を与えてあげてください。
決して称号なんてモノだけとは言わずに。
例えば無限バナナの木を与えるとか。
そうするだけできっと、彼等はまた前を進んでくれるはずですから。
主人公が必ずしもルクセレンさんの様に超絶ポジティブとは限りませんので。
ていうかもう彼女、走る暴力ですよね。
そろそろ誰か止めてあげて?
※※※
本話は友神の方々よりネタ情報を頂き、企画にいたりました。
ユニークな話題の提供、誠にありがとうございました。
(ディレクター及びスタッフ一同より)
スペシャルサンクス
・巴月のん様
・猫龍(庵)@あわメンタル_(꒪ཀ꒪」∠)_様
・あくあ(みすてぃ)様
応援ありがとうございます!
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