断罪された悪役令嬢はそれでも自分勝手に生きていきたい

たかはし はしたか

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ナーフの場合

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騎士がナーフを扉の外に押し出した。
ナーフはドレスに足を取られて床に手をついたが、騎士は構わず扉を閉めた。
扉の向こうからは楽しげな声と音楽が聞こえる。
貴族の学園の卒業パーティー。
ナーフは断罪された。
無実だったわけではない。
一目惚れした公爵家嫡男に振り向いてもらいたくていろいろやった。
いろいろ。
だって嫡男には婚約者がいて、伯爵令嬢のナーフがただ自分を磨いただけでは一歩も近づくことは出来なかったから。
嫡男に出会った8歳から自分を磨き、人脈を作り、事業を起こしてお金を作った。
有り余るお金と人脈で婚約者を蹴落とそうとした。
望みは叶わなかったけど。
扉の向こうで嫡男と婚約者が踊っているであろう。
ナーフはポロポロと涙を流した。
がんばった。
わたしはがんばった。
それだけは確かだ。
とぼとぼと歩くナーフを両親が追いかけてきた。
怒られると身構えたが、二人はただナーフを抱きしめてくれた。

卒業パーティーの晩から、ナーフは二日間眠り続けた。
一目惚れした日から、あらゆることに全力で取り組み、睡眠を削ってきた反動だったのだ。
たっぷり寝て、すっきりした頭で目を覚ました。
いい天気だった。
もうすぐ春。
ほんのりと温かい陽気は、窓の外から鳥の声が聞こえてくる。

目覚めたナーフを両親は涙を流して喜んでくれた。
思えば両親を振り回してしまった。
もう返済したが事業を始める資金をだしてくれ、公爵嫡男と結婚したいというナーフのために我が家の後継を作ろうと高齢で出産に挑んだことも知っている。
整えてはあるものの、子を思いなくその姿にナーフは初めて両親の老いを感じた。
これからは両親を大切にしないと。
そうナーフが考えたところで執事がが手紙を届けてきた。
母のはとこの子、隣国の第二王子の2日後の来訪を告げる手紙だった。
あら。
とは母。
なんだか不思議そう。
普段あまりはとこ同士の交流がないのにいきなりその子からの連絡に首を傾げている。
ナーフの機嫌は急降下する。
学園には隣国からの留学生も何人もいる。
母は、どこかぽやっとした天然な人がだから不思議ねで終わりだが父はちょっと思うところがあるようだ。
それから3件、来訪予約の手紙が届いて疑念は確信に変わる。
公爵家の三男は嫡男の五つ下の弟
男爵家次男は同級生
領地が隣り合う伯爵家嫡男はナーフの幼なじみ
最後に伯爵家嫡男からの手紙が届いてナーフの疑惑は確信に変わる。
どいつもこいつもナーフが断罪されてチャンスだと食いついてきたのだ。
側近候補の公爵家嫡男との因縁を逆手に取っておくために、兄を蹴落とすために、フラレ女をもらってやる心広い男な俺に、隣の領地を取り込むついでにもらってやる優しい俺。
血縁だなんていうけれど隣国の王家と血縁な貴族など掃いて捨てるほどいる。
最近では前国王の妹の孫が公爵家の当主だ。
相手が弱ったところで善人面して寄ってくる男など最低。
誰1人としてナーフに苦言を呈するどころか無視してたくせに君は被害者?
これ以上キミへの理不尽を見過ごせない?
おじが学園に影響力がある?
これは笑うべきなのかしら。
公爵家嫡男は婚約者を愛し守った。
私は恋に敗れた。
それだけだ。
私の恋した公爵嫡男は卑怯なことはしていない。
卒業パーティーに乗り込んで逆プロポーズしたのは私。
手を取ってもらえなかったのだから、摘み出されたのは当然のこと。
卒業生でもないのに卒業パーティーに乗り込んだナーフが学園から処分を受けたのも当然だ。
もちろん1ヶ月の謹慎も受け入れるし反省文も書く。
退学などしないで学園を卒業する。
結婚して伴侶の権力で仕返ししようとか、よしよしいい子いい子してもらう必要はないのだ。
だってナーフは後悔してない。
公爵家嫡男は本当にいい男だった。
あの人に恋してよかった。
並び立ちたいと自分を奮い立たせて努力する原動力になる人だった。
おかげでナーフ個人もナーフの商会もこの国有数の資産を持つに至っている。
ナーフにとって破れても何かを残すのが恋だと思う。
そんなナーフにとって手紙をくれた男たちは「論外」であった。
ナーフは伯爵家を継ぐ。
公爵家嫡男には手が届かなかったが、きっと同じくらいいい男は他にもいるはずだ。
初恋は終わった。
とりあえず、利益度外視してお付き合いしてきた公爵家との商売を見直して適正価格の取引に変更。
取引してこなかった嫡男の婚約者家とは取引を開始しよう。
それはけじめ。
さあ、つぎにいこう。
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