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ユリアの戸惑い

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  ーー私はこんなこと望んでいなかった。



  ある事情から侯爵家でお世話になる事になった厄介者の私はなるべく迷惑をかけないよう心掛けてきたつもりだった。

  侯爵家の指示通り学園に入学してアルバート様の側でひっそりと息を潜めるように過ごしてきた。目立たぬよう周囲にいる貴族令嬢と同じ振る舞いをして可も不可もない成績を残して誰の記憶にも残らないよう頑張ってきた。

  仕方がないとはいえ婚約者のいるアルバート様が私のお目付け役としてずっと側に居てくれている事はすごく申し訳なかったが、それと同時に心強くもあった。

  不安なこの状況に一人で立ち向かわなくても済むのはとてもありがたかった。

  そのせいでアルバート様の婚約者であるカタリナ様には不快な思いをさせてしまっていた。恋仲になることは絶対ないし、私がアルバート様に対してそのような感情を抱くことは絶対にありえないと伝えてみたが、婚約者に近づく別の女にあまり良い感情は抱いていない様子だった。

  まぁそれは当然のことだし。
  原因の私があれこれ言うよりも婚約者のアルバート様にフォローしてもらうのが一番だと思い、私は自分の役割に徹して学園卒業に向けて努力することにした。

  だからこんな事になってしまったのだろうか?

  学園の暗黙の了解なんて知らなかった。
  婚約者がパートナーになるのが伝統だと事前に知っていたら授業を欠席していたと思うーーいや、私の立場で欠席を続けて授業の単位を落とすなんて事は許されなかっただろう。そうなれば私のパートナーは自ずとアルバート様になっていたはず。

  ……ならどちらに転んでも現状は変わらなかったか。

「親戚だからって婚約者を押し退けてパートナーに収まるなんて図々しいにも程がありますわ」

「カタリナ様がお優しいからってこれみよがしに頭なんて撫でられちゃって何様かしら!」

「婚約者のいる殿方を奪おうなんて卑し過ぎますわよ。わたくし同じ空気すら吸いたくありません」

「あれって侯爵家の正妻の座を狙っているのかしら。ならもう少し常識を学んで欲しいですわね。カタリナ様に成り代わろうというのなら」

「ルヴェルダン様も女を見る目が無さすぎますわ。あんな見た目が可愛らしいだけの女を側に置き続けるなんて何を考えてますの?」

  婚約者のいるアルバート様を寝取ろうとする女
  図々しくて常識が欠場している女
  浅ましく卑しい女

  彼等の視線や言葉はそう私に向かって言っていた。

  そう思われても仕方のない行動をとってきた。
  自業自得なのはわかっている。

  だけど私にだって言い分はあるのよ。

  侯爵家に来たのも、学園に通うのも全部私の意思じゃない。全部仕方がなかったのよ。
  抗わずに流されちゃった自分が悪いのは重々承知してる。でもだからって部外者にそこまで言われなきゃいけないのは何でなの?

  侯爵家の方々やアルバート様、カタリナ様からの言葉なら受け入れられた。でもあの人達は私達とはなんら関係のない完全な部外者。だからとても腹が立ってしまう。


  三年間我慢しなきゃ。
  学園卒業は私に課せられた義務なんだから。
  わかってる。私が原因で色んな人に迷惑がかかってるんだから我慢しなきゃ、我慢……



  …………でも我慢っていつまで?
 
  三年間耐えれば私は幸せになれるの?
  



  ーー本当に?



  誰も私を守ってくれない。
  隣国へ追い払われるだけの存在の私に幸せがやってくるの?

  こんな立場で生まれてきたのは私のせいじゃない。
  それでも私は我慢し続けなきゃいけないの?

  いつまで?
  ……いつまで我慢したら私は幸せになれるんだろう。



















  幸せそうに笑ってる人達が羨ましい。
  ずるいな……

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