妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。

haru.

文字の大きさ
17 / 34
~第一章~

サマンサの計画

しおりを挟む
「あははははははっ!  やっぱり王女様って良いわね~」

  王城内に与えられた自室で、サマンサは豪快にソファに寝転びながらフルーツやケーキ、焼き菓子などを好き放題食べていた。

  テーブルの上には1日じゃ、あきらかに食べきれない量の食べ物が乗せられていた。

  部屋の至るところに大小様々な贈り物の小包が重ねられており、包装紙がビリビリに破かれて箱の中身が飛び出ていた。

  床には沢山のドレスや靴、色とりどりの宝石がついたアクセサリーや髪飾りなどが散らばっていた。

  本来頂いた贈り物は侍女が代わりに開けて主に報告後丁寧に保管する。その際に頂いた者と人物がわかるようにリストを作成しておくのが基本だ。

  だが箱から勝手に出され、床に散らばっているこの状況から察するにリスト作成はもう不可能だろう。

  これでは社交の際に御礼を言う事すらできない。

  貴族の贈り物というのはタダではなく、何かしらの見返りを求める物だ。人前で自分が送った物を身に付けてもらって繋がりを周囲にアピールしたり、話の種にしたり、思惑は様々だ。

  そんな事とは知らないサマンサは好き勝手に気に入った物を身に付けていた。

「17年間はずっとあんな貧乏人の元で生きなきゃいけなかったから最悪だったけど、耐えて良かったわ!  やっぱりヒロインに王子様との出会いは必須だものね!」

  鼻唄を歌いながらサマンサは香油をつけて丁寧に手入れして貰った艶々な髪を指でくるくるとしながらニヤリと笑った。

「ここが『妖精の悪戯~真実と共に~』の世界で本当に良かったわ。あのアニメ私も大好きだったのよね~。下町生まれの少女が隣国の王子に出会って恋に落ちるの。まぁトラブルとか沢山あってその先には隣国の王子の婚約者でこの国の第二王女だと思われていたアクリアーナがいるんだけどね。王族として何にも誇れる物が無いくせに我が儘だけは一丁前、傲慢な態度で臣下を虐げ家族や婚約者から嫌われていた存在で、最後には妖精が現れて真実を国中に知らしめてサマンサは第二王女として隣国の王子と結婚して幸せになるんだけど……」

  クッキーをさくりと食べながら考えた。

「うーん、私も面倒くさいからって色々話すっ飛ばして夜会に乗り込んじゃったけど、アクリアーナってあんな感じだったっけ?  大した反論もしなかったし、暴言を一回も言わなかったけど……ドレスの感じとか髪型や化粧なんかもアニメとは違ったような気がする。新しい家族も何か変だし。可愛くて優しい本物の愛する娘が現れたのに何か距離あんのよね。……食事も未だに別々だし、会ったのもまだ三回しかないし。兄姉なんか一度も会いに来ないのよ?  感動の再会なんてウザいし、やりたくなんてないけど人目もあるんだからパフォーマンスぐらいしてもいいのに……。照れくさいのかそれともあのくらいの距離感が王族の家族なのかな?」

  王座で国王陛下と王妃様に見下ろされる形で対面した日を思い出していたサマンサ。
  サマンサは自分も王族になったというのに、何で床にひざまずいて頭を下げなきゃいけないのかと不満だった。
  それも感動の再会なんてもんじゃなく、臣下に命令を告げるように淡々と温度のない声を聞かされて嫌な気分になった事を思い出した。

「いや、王族なんて所詮血も涙もない傲慢な奴等なのよ。第二王女がアクリアーナから私に変わった所で興味がないってだけなのよ、きっと!  それにあの人達も言ってたじゃない。クリス様隣国の王子と婚約したのならマルヴィーア王国で過ごすよりも隣国で王子妃教育を受けるといいって。クリス様も早く自分の国に来て欲しいって言ってたし、楽しみだわ~。」

  サマンサはそう言いながら血のような真っ赤なワインが入ったグラスに口をつけて飲んだ。

  酒の高揚感に溺れ、頭に浮かんだ小さな疑問達を愚かにも忘れていった。その疑問が一番重要だという事にも気がつかずに。


△▽△▽


  国王と王妃の自室。
  密かにサマンサの監視を1日中していた執事が報告にやってきた。

「どうだ……?」

「問題ありません。毎食 肉中心の脂っこい物や高カロリーのデザートを用意しておりますが、出された食べ物や酒をこれでもかと食べて毎日部屋で怠惰に過ごされております。今の所、周囲に怪しんでいる者はございません。」

「そうか。ではこのままあの者がこの国から去る日まで続けるように……」

「承知いたしました。」

  執事が去っていき扉が閉まるのを確認すると、今まで黙っていた王妃が呆れたように口を開いた。

「あの女は馬鹿なのかしら?  仮にも隣国の王子の婚約者となったにも関わらず、何も準備していないこの状況が恐ろしくないのかしら?  しかも何も考えずに暴飲暴食なんてありえないわ……普通好きな殿方が出来れば食事は喉を通らなくなるわよ!  あの女、豚にでもなるの!?」

「さぁな。……ただこの程度の事にすら気づけないのなら王族としてやってはいけないだろう。これは王族以前に人としての資質の問題だ。毎日人に世話されて怠惰に過ごして、それでも罪悪感も抱かずにいられるとは私には考えられない。時間とは限りがあるのだ。 しかも王族にはやらなきゃいけない事が山のようにある。それこそお茶を楽しむ余裕なんて年に一、二回しかない。それも人前だと気が休まらないから自室に籠って隠れて飲むしかない。外では一瞬たりとも気が抜けないからな……。それをあの女は……いや、あの女の態度は私達にとっては好都合だな。」

「ええ、このまま行けばどうなる事か。まぁ、でもこれはクリスディーク殿下の要望ですからね。『今すぐにでもサマンサと一緒になりたい。どうか何も準備はいらないからサマンサを私の国に連れて帰る許可を頂けないだろうか。サマンサの身一つだけあれば問題はない!』……でしたわね。ふふふ、愛というのは本当に人を愚かにしてしまうのですね。」

「国同士の婚姻において準備はいらないし、身一つだけで問題ない。とは愚かにも程がある。あの発言では国の利益を全て捨てたも同然だぞ。」

「よろしいではありませんか。どうせ彼方の国もこの件は了承済み。婚約書も、もう交わしているのです。新しい婚約書の条項を読んだか否かは彼等サマンサとクリスディークの責任ですわ。」

「ああ、その通りだ。王族が交わす契約書とはどんな罠が隠されているのかわからないのだ。それを見逃さないよう精査した上で国に有益な契約を交わすのも王族の大きな役目で責任だ。それをあの小僧は愚かにも臣下に頼らず一人で勝手に契約書にサインした。その行為はもう許されるものではない。」

「私としてはさっさと目障りな方々が消えてくれればそれでいいですわ。あの方々がこの先どんな目にあおうが自業自得。それよりも彼方はどうなってるの?」

「問題ない。あの女が旅立つ日に私が最終確認した物を国中に配布する。王の決定だ。これに関しては奴等には口を挟ませない。奴等とて自分で選んだ道なのだから……」

「……当然の報いですわ。」

  王と王妃は自身の耳につけられた琥珀のピアスに触れながら、もう会えない自分達の愛する娘を想った。
  

しおりを挟む
感想 227

あなたにおすすめの小説

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...