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ー本編ー
お祖父様の怒り
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「すまぬ・・・現実を教えてやろうとお前達の話を聞かせていたのだか・・・耐えきれなかったようだ」
お父様の後ろからお祖父様も部屋へ入ってきて侮蔑の視線をお父様へ向けながら淡々と話しだした。
「こいつには婚姻を認める変わりにヴィオレットの自由を約束させた。
どんな道を選ぼうと反対はしないそうだ。」
「そ、それはこんな事を考えてるのなど知らなかったからで・・・」
お父様は狼狽えながら・・・泣いている私にすがるように視線を向けてきた。
「この愚か者が!!!!!」
「自分の娘がこんなに泣き崩れるまで追い込まれているというのに・・・それも実の父親であるお前が傷つけたのだぞ!!!
自覚しているのか!このクズが!!!」
お祖父様の凄まじい怒号が屋敷中に広がった。
(お祖父様は厳しい方だけど、人を貶す言葉は決して言わないのに・・・凄い怒ってる・・・)
お祖母様が微笑みながら小さな声で、
「あの夜会の話を聞いてから、私でも見た事が無いくらい怒っているのよ・・・あの人。ヴィオレットが辛い想いをした事が相当許せないのね・・・。隣国へ行こうって言い出したのもあの人なのよ・・・」
私は驚いて、お祖父様を見つめてしまった。
(だってお祖父様は誰よりも貴族である事を誇りに思っていた筈、それなのに・・・)
私の視線に気づいたのか、
「ヴィオレット・・・お前の決意は確かに聞いた。何も心配する事はない。例え隣国へ行こうとも、貴族でなくなろうとも、私達は何も変わらん!」
「自分自身に恥じないように生きるのなら、どんな場所でどんな生き方をしようが誇りを失う事はない。」
「そうよ・・・ヴィオレット。
私達の事を心配する必要はないわ。これでも、長い事生きているのですからね・・・フフフ」
「お嬢様!!!
私もお嬢様の味方です。隣国だろうが、共に参りますよ。私は貴女のお側におります!!」
「「「私達だってお嬢様と一緒がいいです!!」」」
私が皆の言葉に心が温かくなり、また涙が溢れそうになっていた時・・・またもあの人が・・
「どうしてだ?・・・ヴィオ」
「ルーチェは悪い子ではない。どうして認めてくれないのだ・・・」
「それに・・・隣国へ行くなんて・・・この家を出るなんて・・・どうして・・・」
お父様は本気で不思議がっている・・・
いつからこんなに人の気持ちがわからない鈍感な人になっていたのだろう・・・
「この!!!大馬鹿者が!!!!
何故わからない!ヴィオレットはお前を父親として愛し、信頼していたのだぞ・・・それを・・・それをお前は・・・ヴィオレットではなくあの小娘を選んだのはお前自身だろう!それなのにその上、娘までも手放したくないなど・・・許さんぞ!!!!」
お祖父様は怒りのあまりお父様へ殴りかかろうと腕を振り上げた・・・
「お祖父様!!!!」
私の声にお祖父様は腕を下ろして振り返った。
「ここからは自分で話します・・・」
「・・・わかった。」
私はお父様と向かい合い視線を合わせた。
「私は・・・元婚約者様との婚約破棄で傷物令嬢となりました。
あの方に恋をしていたわけではありませんでしたが、世間から好奇の視線に晒された事には深く傷つきました。」
「あの令嬢を恨んでいるわけではありません。ですが・・・私の中には拭いきれない気持ちがあるのも事実です。」
「そんな中、あの夜会が起きました・・・
私はお父様が誰かと婚姻の約束をした事をあの場で初めて知りました。
それも私と同じ歳の令嬢で、私が傷物令嬢となったきっかけの令嬢です。」
「しかも・・・あの令嬢の容姿は幼く、私には12、3歳の少女にしか見えません。
そんな令嬢と実の父親が目の前でイチャつき、その上私の義母になりたいと言うのです。」
「執務室でお会いした時私は婚姻の説明もされておりませんし、自己紹介すらありませんでしたわ・・・それなのに、お二方はもう既に決まったかのような振る舞いでした。
お父様の中ではもうあの方との事は決定事項で私の承諾など不必要なのでしょう?」
「それに・・・あの時から私にはもう貴方が自分の知っているお父様には見えなくなってしまいました。」
「ですから・・・私はこの家を出て貴方とは縁を切ります。どうか親不孝な娘の事などお忘れ下さい・・・」
私はあくまでも冷静に、淡々と言葉を並べた。
「待ってくれ。た、確かに・・・ルーチェの外見は幼い・・・だが婚約破棄についてはルーチェには落ち度はなく・・・今回の夜会も・・・あの子は何も悪くは・・・」
お父様は青白い顔をしながらシドロモドロと言い訳をした・・・
(ここまで言っても私への謝罪じゃなくて、あの子の事を擁護するんだね・・・)
心が軋む音がするのを無視しながら言葉を続けた・・・
「ですがお父様は言いましたわ・・・
私が婚約破棄をされた時、「この件に関わった者、全員・・・娘を傷つけた者は誰であろうと許さない。」と・・・。あの令嬢は意図していなくとも明らかに関わっていましたわ。
それをわかった上でお父様はあの方を許し、愛されたのでしょう?」
「それに・・・あの夜会でのお父様の振る舞いは・・・あの令嬢は守れたかもしれませんが、私は今後、婚約者を奪われ、父親すら奪われた令嬢と呼ばれます。
その上、義母があの方なら私はいい笑い者ですわ・・・それをわかった上であの場にお父様は出ていったのでしょう?」
「それに・・・なにより・・・キモチワルイですわ。
可愛らしい令嬢だとは思いますが、自分と同じ歳の令嬢を・・・明らかに成熟出来ていない女性を自分の父親が選んだと思うとゾッとします・・・」
私は自分の気持ちは押さえて客観的に話していたつもりが・・・段々と怒りが混み上げてきていた。そんな私の表情は怒りや軽蔑で凄い物になっていそうだ・・・
お父様も話の途中から私を見ていられなくなったのか視線が合わなくなり、顔を伏せてしまっていた・・・
お父様の後ろからお祖父様も部屋へ入ってきて侮蔑の視線をお父様へ向けながら淡々と話しだした。
「こいつには婚姻を認める変わりにヴィオレットの自由を約束させた。
どんな道を選ぼうと反対はしないそうだ。」
「そ、それはこんな事を考えてるのなど知らなかったからで・・・」
お父様は狼狽えながら・・・泣いている私にすがるように視線を向けてきた。
「この愚か者が!!!!!」
「自分の娘がこんなに泣き崩れるまで追い込まれているというのに・・・それも実の父親であるお前が傷つけたのだぞ!!!
自覚しているのか!このクズが!!!」
お祖父様の凄まじい怒号が屋敷中に広がった。
(お祖父様は厳しい方だけど、人を貶す言葉は決して言わないのに・・・凄い怒ってる・・・)
お祖母様が微笑みながら小さな声で、
「あの夜会の話を聞いてから、私でも見た事が無いくらい怒っているのよ・・・あの人。ヴィオレットが辛い想いをした事が相当許せないのね・・・。隣国へ行こうって言い出したのもあの人なのよ・・・」
私は驚いて、お祖父様を見つめてしまった。
(だってお祖父様は誰よりも貴族である事を誇りに思っていた筈、それなのに・・・)
私の視線に気づいたのか、
「ヴィオレット・・・お前の決意は確かに聞いた。何も心配する事はない。例え隣国へ行こうとも、貴族でなくなろうとも、私達は何も変わらん!」
「自分自身に恥じないように生きるのなら、どんな場所でどんな生き方をしようが誇りを失う事はない。」
「そうよ・・・ヴィオレット。
私達の事を心配する必要はないわ。これでも、長い事生きているのですからね・・・フフフ」
「お嬢様!!!
私もお嬢様の味方です。隣国だろうが、共に参りますよ。私は貴女のお側におります!!」
「「「私達だってお嬢様と一緒がいいです!!」」」
私が皆の言葉に心が温かくなり、また涙が溢れそうになっていた時・・・またもあの人が・・
「どうしてだ?・・・ヴィオ」
「ルーチェは悪い子ではない。どうして認めてくれないのだ・・・」
「それに・・・隣国へ行くなんて・・・この家を出るなんて・・・どうして・・・」
お父様は本気で不思議がっている・・・
いつからこんなに人の気持ちがわからない鈍感な人になっていたのだろう・・・
「この!!!大馬鹿者が!!!!
何故わからない!ヴィオレットはお前を父親として愛し、信頼していたのだぞ・・・それを・・・それをお前は・・・ヴィオレットではなくあの小娘を選んだのはお前自身だろう!それなのにその上、娘までも手放したくないなど・・・許さんぞ!!!!」
お祖父様は怒りのあまりお父様へ殴りかかろうと腕を振り上げた・・・
「お祖父様!!!!」
私の声にお祖父様は腕を下ろして振り返った。
「ここからは自分で話します・・・」
「・・・わかった。」
私はお父様と向かい合い視線を合わせた。
「私は・・・元婚約者様との婚約破棄で傷物令嬢となりました。
あの方に恋をしていたわけではありませんでしたが、世間から好奇の視線に晒された事には深く傷つきました。」
「あの令嬢を恨んでいるわけではありません。ですが・・・私の中には拭いきれない気持ちがあるのも事実です。」
「そんな中、あの夜会が起きました・・・
私はお父様が誰かと婚姻の約束をした事をあの場で初めて知りました。
それも私と同じ歳の令嬢で、私が傷物令嬢となったきっかけの令嬢です。」
「しかも・・・あの令嬢の容姿は幼く、私には12、3歳の少女にしか見えません。
そんな令嬢と実の父親が目の前でイチャつき、その上私の義母になりたいと言うのです。」
「執務室でお会いした時私は婚姻の説明もされておりませんし、自己紹介すらありませんでしたわ・・・それなのに、お二方はもう既に決まったかのような振る舞いでした。
お父様の中ではもうあの方との事は決定事項で私の承諾など不必要なのでしょう?」
「それに・・・あの時から私にはもう貴方が自分の知っているお父様には見えなくなってしまいました。」
「ですから・・・私はこの家を出て貴方とは縁を切ります。どうか親不孝な娘の事などお忘れ下さい・・・」
私はあくまでも冷静に、淡々と言葉を並べた。
「待ってくれ。た、確かに・・・ルーチェの外見は幼い・・・だが婚約破棄についてはルーチェには落ち度はなく・・・今回の夜会も・・・あの子は何も悪くは・・・」
お父様は青白い顔をしながらシドロモドロと言い訳をした・・・
(ここまで言っても私への謝罪じゃなくて、あの子の事を擁護するんだね・・・)
心が軋む音がするのを無視しながら言葉を続けた・・・
「ですがお父様は言いましたわ・・・
私が婚約破棄をされた時、「この件に関わった者、全員・・・娘を傷つけた者は誰であろうと許さない。」と・・・。あの令嬢は意図していなくとも明らかに関わっていましたわ。
それをわかった上でお父様はあの方を許し、愛されたのでしょう?」
「それに・・・あの夜会でのお父様の振る舞いは・・・あの令嬢は守れたかもしれませんが、私は今後、婚約者を奪われ、父親すら奪われた令嬢と呼ばれます。
その上、義母があの方なら私はいい笑い者ですわ・・・それをわかった上であの場にお父様は出ていったのでしょう?」
「それに・・・なにより・・・キモチワルイですわ。
可愛らしい令嬢だとは思いますが、自分と同じ歳の令嬢を・・・明らかに成熟出来ていない女性を自分の父親が選んだと思うとゾッとします・・・」
私は自分の気持ちは押さえて客観的に話していたつもりが・・・段々と怒りが混み上げてきていた。そんな私の表情は怒りや軽蔑で凄い物になっていそうだ・・・
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