ヒロインはモブの父親を攻略したみたいですけど認められません。

haru.

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ー番外編ーヴィオレット*隣国編*

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「一体どういう事なのッッッ!!!!!」

ガシャァァァァンッッッ!

豪華な室内には真っ赤な髪を振り乱している女性が甲高い叫び声や怒鳴る声を上げながら室内の物が壊しまくっていた・・・

女はセディルの元婚約者・エステリーナだ。

エステリーナが怒りと憎悪に顔を染めながら、暴れている側には騎士達がおり、俯きながらただエステリーナのヒステリーが治まるのを待つ事しか出来なかった・・・

パリーンッ!グシャァッッ!!ガシャァンッッッ!!

・・・・・・・・・・・・

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・ゆ、許せないわ。
その女の素性はわからなかっただけでなく、2人の関係はセディルバルドの片想いですってッッッ?!・・・・・・ッッッ!!!
私には欠片も気持ちを寄越さなかったあの男が恋をしているというのッッッ?!」

「あの能面のような男が頬を染めて、恋い焦がれているとッ?!
・・・こんな屈辱なくってよ・・・・・・」

「本当にあの男が美しく価値のある男でなければさっさと殺していたわ・・・それなのに生かされている自覚もなく、他の女にうつつをぬかして・・・あろう事か、薄汚い孤児の側にいるだなんて・・」

身の毛もよだつような表情で「いづれ孤児達も始末すべきね・・・。でもまずは女からにしましょう。」と恐ろしい言葉を呟いていた。

その様子を見る限りエステリーナはセディルバルドに執着するあまり、正気を失っているのだろう・・・騎士も侍女も気がついてはいたが自分達の身に被害が出るのを恐れて誰も口にする事が出来なかった・・・

「でッッッ!!!女の方は本当に何も出て来なかったのかしらッ?!」

騎士に詰めよって問いただすエステリーナ。

「あ、あの・・・え・・・っと・・・き、気になる男がいまして只今調査中です・・・」

「・・・何よそれは・・・・・・」

オドオドとしながら報告してくる騎士の話を訝しげに見つめるエステリーナ。

騎士の報告によると、国境付近の酒場で暴れていた男を知り合いの騎士が捕縛しているらしい。狂ったように暴れ、支離滅裂な言葉を発する男は、時折興味深い事を言うというのだ。

「身元などを尋問していた時に、女の話をするんです・・・自分の元婚約者で自分に惚れ込んでいた筈だから保釈金などの金は用意できるッ!あの女を探してくれッッッ!!とそう言うらしいです。そして女性の名はヴィオレット、金髪で菫色の瞳が特徴らしいです。」

何処かで聞いた事のある容姿に名前だとは思いませんか?と騎士は真剣な顔をして問いかけた・・・

「裏をとろうと情報収集しているのですが、今のところ掴める物が何もなくて、男の証言だけなのですが・・・それも何だか怪しい気がして・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

エステリーナの無言にまたヒステリーが起きるのかとドキドキしていた騎士だったが、「・・・へぇ~・・・・・・」ニヤリと悪どい笑みを浮かべたエステリーナは、何か悪巧みを思いついた様子だった。

「ではその男に確かめてもらえばいいわ。本当に自分の元婚約者なのか・・・金蔓が側にいた方が男の都合もいいでしょ?逃げられないように囲うか既成事実でも作らせなさい・・・」

「・・・それに私も久しぶりにセディルバルドの顔が見たくなったわ・・・・・・良い機会だから会いに行こうかしら・・・フフフッ・・」

エステリーナは良い案ね・・・と言いながら満足気に微笑んでいた・・・

「お、お嬢様・・・そ、それは成りませんよ?しばらくは大人しくしているように旦那様から言われていたではありませんか・・・。
い、今何か問題を起こせば取り返しがつかなくなるのでは・・・」

勇気をふり絞った侍女が怯えながらも苦言を呈してくる姿にイラッとしたエステリーナ。

・・・だが後になって気がつく・・・
ここがエステリーナにとってのターニングポイントであったと・・・侍女の言葉を聞き入れ大人しくしている事を選び、セディルバルドから手を引いていれば・・・

だが今のエステリーナにはそんな事がわかる筈もなく、侍女ごときが自分にたてついたと感じ、セディルバルドへの怒りも相まって、エステリーナのヒステリーは深夜まで続いたとか・・・

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

孤児院にいつも通りにやって来たら、何やら慌ただしく皆が動き回っていた・・・

「・・・どうしたの?」

走り回っていた子供達を捕まえて聞き出してみると・・・「あのね!セディル兄ちゃん達がしばらく遠くに行くんだって!・・・だから僕達プレゼントを渡そうと思って準備してるのッ!」
「朝、手紙が来たのッ!」
「馬車も一緒だったのッッ!!」
「あとでまた迎えに来るんだってッッッ!」

子供達は我先にと、情報を話そうとしてくれた。

(え・・・手紙?・・・遠くに行く?・・・どういう事なの・・・しばらくっていつまで・・・)

私は突然の言葉に困惑してしまい、楽しそうにハシャいでる子供達へ笑顔を向けてあげる事が出来なかった・・・

その間に情報を仕入れてきたサンが背後から、教えてくれた。
「どうやらウィルトリア公爵家から手紙が来たようです。侯爵家関係で何やら進展があった為、公爵家から迎えが来たのだと思われます」

(・・・進展・・・・・・わざわざ呼び出すって事は良い事なんだよね・・・)

公爵家から呼ばれたという事は証拠集めに目処がたったという事の筈なのに・・・何故か言い知れぬ不安が襲ってくる・・・・・・

私はとりあえずセディルさんに会おうと孤児院の裏にある小屋へ向かった。


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