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ありえない理由
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当主の決定に従うのか、逆らうのか。
私かあの男、どちらを選ぶのか。
母親に対して酷な事を言っているのかもしれないが、私にも守りたい物がある。この決定は絶対に譲らない。
「…………ジュリエッタの言い分はわかったわ。今までロブゾ家の事を貴女達に任せきりにしてきた私には何も言う資格なんてないわね」
瞳に涙を滲ませ悲しそうな表情をしているが、あの顔に騙されてはいけないと私は知っている。あの顔は自分は弱くて何も出来ない、したくないと五年間駄々こね続けた時の顔だ。
同情をひこうとして無意識にやるお母様の癖。
「………………」
「良いのよ。貴女がそう思うのも仕方ないわ。……でもね、聞いてちょうだい。アルバートは別にロブゾ家へ帰って来た訳ではないのよ」
「…………では何しに来たのですか」
「ふふふ、アルバートの隣に小さな男の子が居たでしょう? あの子ね、レオナルドと言ってアルバートの息子なのよ! 小さい頃のアルバートそっくりで驚いてしまったわ」
数秒前の涙が一瞬で乾き、笑っているお母様。
その起伏の激しさは一体何処からくるのだろう。
「そうなのですか。……それで?」
「え……ジュ、ジュリエッタ……それでも貴女、アルバートの妹なの? 兄に子供が居たのよ? 貴女の甥にもあたる子なのよ?」
私が甥の話を聞けばあの男を許すと思ったのだろうか?
ありえない。本当にありえない。
「それはわかりました。……それよりもあの方が屋敷に来た理由を説明してください。ただ子供の顔を見せに来た訳ではないでしょう? なんですか? ロブゾ家へ戻ってくるつもりでないのならお金でも求められましたか?」
貴族でなくなったあの男が戻ってくる理由なんて地位か金の二種類しかない。
誰もが思う事を率直に言っただけだったが、お母様はあの男を侮辱するような発言を許さなかった。
「な、な、なんてはしたない事を言うの!? アルバートはそんな卑しい真似はしないわ!」
「五年前はその卑しい真似を平気でしていきましたよね? 我が家の金庫から金を盗むという犯罪行為をーー」
「聞きたくないわ! そんな昔の事を持ち出さないでちょうだい!」
私の話を過り大声を出す。耳を両手で塞ぎながら首を横に振るお母様。
その姿は癇癪を引き起こす幼児のようだった。
「アルバートは貴女の為に帰って来たのよ! 当主になったのに結婚相手が見つからず、跡継ぎを産めない貴女の為にレオナルドを養子として差し出してくれるつもりなのよ! 少しは兄に感謝したらどうなの!?」
「…………………………は? 養子?」
「愛する我が子だけど、ロブゾ家の存続の為に泣く泣く手離す決意をしたアルバートを貴女は切り捨てようとしているのよ!」
意味が理解出来ない。
成人前の私に未婚の母になれと言っているの?
何故私があの男の子供を養子にしなければいけないの?
一体何に感謝しろと?
誰のせいで私の結婚が難航していると思ってるの?
しかも捨てたはずの家に子供を養子に出すなんて可笑しい。絶対に何かある。
「優秀なアルバートの血をひく子供よ。きっと立派な跡継ぎに育つわ!」
勝手にあの男の子供を引き取って育てていく未来を思い描いているお母様には悪いが、そんな未来は絶対に訪れない。
色んな事がありすぎて疲れた私は溜め息を溢し、側にいた侍女にお母様を部屋へ連れていくように命じた。
「お母様は混乱しているみたいね。後の事は私に任せて部屋へ連れていってちょうだい」
大騒ぎするお母様に頭痛を感じながら、その日の出来事は終わった。
私かあの男、どちらを選ぶのか。
母親に対して酷な事を言っているのかもしれないが、私にも守りたい物がある。この決定は絶対に譲らない。
「…………ジュリエッタの言い分はわかったわ。今までロブゾ家の事を貴女達に任せきりにしてきた私には何も言う資格なんてないわね」
瞳に涙を滲ませ悲しそうな表情をしているが、あの顔に騙されてはいけないと私は知っている。あの顔は自分は弱くて何も出来ない、したくないと五年間駄々こね続けた時の顔だ。
同情をひこうとして無意識にやるお母様の癖。
「………………」
「良いのよ。貴女がそう思うのも仕方ないわ。……でもね、聞いてちょうだい。アルバートは別にロブゾ家へ帰って来た訳ではないのよ」
「…………では何しに来たのですか」
「ふふふ、アルバートの隣に小さな男の子が居たでしょう? あの子ね、レオナルドと言ってアルバートの息子なのよ! 小さい頃のアルバートそっくりで驚いてしまったわ」
数秒前の涙が一瞬で乾き、笑っているお母様。
その起伏の激しさは一体何処からくるのだろう。
「そうなのですか。……それで?」
「え……ジュ、ジュリエッタ……それでも貴女、アルバートの妹なの? 兄に子供が居たのよ? 貴女の甥にもあたる子なのよ?」
私が甥の話を聞けばあの男を許すと思ったのだろうか?
ありえない。本当にありえない。
「それはわかりました。……それよりもあの方が屋敷に来た理由を説明してください。ただ子供の顔を見せに来た訳ではないでしょう? なんですか? ロブゾ家へ戻ってくるつもりでないのならお金でも求められましたか?」
貴族でなくなったあの男が戻ってくる理由なんて地位か金の二種類しかない。
誰もが思う事を率直に言っただけだったが、お母様はあの男を侮辱するような発言を許さなかった。
「な、な、なんてはしたない事を言うの!? アルバートはそんな卑しい真似はしないわ!」
「五年前はその卑しい真似を平気でしていきましたよね? 我が家の金庫から金を盗むという犯罪行為をーー」
「聞きたくないわ! そんな昔の事を持ち出さないでちょうだい!」
私の話を過り大声を出す。耳を両手で塞ぎながら首を横に振るお母様。
その姿は癇癪を引き起こす幼児のようだった。
「アルバートは貴女の為に帰って来たのよ! 当主になったのに結婚相手が見つからず、跡継ぎを産めない貴女の為にレオナルドを養子として差し出してくれるつもりなのよ! 少しは兄に感謝したらどうなの!?」
「…………………………は? 養子?」
「愛する我が子だけど、ロブゾ家の存続の為に泣く泣く手離す決意をしたアルバートを貴女は切り捨てようとしているのよ!」
意味が理解出来ない。
成人前の私に未婚の母になれと言っているの?
何故私があの男の子供を養子にしなければいけないの?
一体何に感謝しろと?
誰のせいで私の結婚が難航していると思ってるの?
しかも捨てたはずの家に子供を養子に出すなんて可笑しい。絶対に何かある。
「優秀なアルバートの血をひく子供よ。きっと立派な跡継ぎに育つわ!」
勝手にあの男の子供を引き取って育てていく未来を思い描いているお母様には悪いが、そんな未来は絶対に訪れない。
色んな事がありすぎて疲れた私は溜め息を溢し、側にいた侍女にお母様を部屋へ連れていくように命じた。
「お母様は混乱しているみたいね。後の事は私に任せて部屋へ連れていってちょうだい」
大騒ぎするお母様に頭痛を感じながら、その日の出来事は終わった。
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