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祖母の世界
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「えっ?」
祖母の世界につき、バレは思わず、初めて会う祖母に目の前で声をだした。
祖母の世界の住人70万人、5つの町に別れた世界、祖母の名前ギルバー・マナー、住むのはセシ町。世界の中でも1番奥の町だ。
祖父の世界から列車で5時間かかり、列車賃が90パレかかり、手元には1週間分の生活費90パレしか残らなかったバレは、片道3時間を歩き、セシ町についた。
平屋で屋根から壁まで全てブルーの30人は住めそうな家の前には、2人の祖母がバレを待っていた。
「びっくりしちゃうわよね。私はギルバー・マナー、こちらはJ・マフラー、あなたの母方のおばあちゃん。この世界ではパートナーが亡くなると同じ世界同士の家族が住むのよ」
バレよりもひとまわり体格がよく、穏和なギルバー・マナーが教えてくれた。
宙の国から出て、世界を旅してバレは初めて「死」がこの世界に本当にある事を知った。
バレは45歳になっていた。
「あの、お金がないんです。働く所を知りませんか?」
祖母の世界は豊かで、働く場所が駅の駅員の仕事か運転手しかない。バレは運転免許がない。
「あら、なら、ちょうどいいわ。マフラーは家の裏で畑仕事をしているの、滞在中に働けば次の世界に行く資金はたまるわ」
ギルバー・マナーの横で少し華奢なマフラーはニコニコ笑っている。
まるで二人とも太陽のように暖かい人達だった。
ギルバー・マナーは、料理上手でJ・マフラーは畑仕事が上手だった。
世界の奥に行けば行くほど、豊かな富裕層のため、バレの2人の祖母の家は、部屋数10部屋と庭と裏には家と同じくらいの広い畑がある。
富裕層は、この世界では、メイドや執事や料理人を雇うのが当たり前だか、祖母2人は自分の生活は、自分達2人でこなす人達で、近所からも、どうやら変わり者扱いらしい。
家の中は清潔にされていたが、質素な暮らしで必要なテーブルや生活用品しか置かれていない。
「1番手前と2番目の部屋が私とマフラーの部屋だから、バレはどの部屋を使ってもいいわよ。そろそろ夕食の準備をするから、バレはマフラーと畑で野菜をとってきてちょうだい」
マナーはてきぱきと指示をだした。
広すぎて居心地が逆に悪くなり、バレは祖母2人の次の3番目の部屋のブルーのドアをあけた。
中には、ブルーのテーブル、ブルーのベッド、ブルーのバレの身長よりも高いタンスとブルーの化粧台があった。
バレは荷物を置いて、祖父が用意してくれた1番おちついた色のグレーのワンピースを着て畑に出た。
J・マフラーは、口数が少ないが笑うと目じりにシワがよって、とても可愛い祖母だった。
母親の世界で会ったギルバー・サマーとは似ていない。母親は亡くなった祖父に似ていたのだろうか?
「トマトをとりましょう。トマトを持ってひねれば茎から取れるわ」
1番手前の畑には、キラキラと光る赤い実がなっていた。
マフラーから1つかごを渡されたバレは、1時間ほど無言でトマトを取った。
「上手いわね。ずっとここにいて欲しいくらいだわ」
J・マフラーは、1言だけ言うと、またニコニコ笑って畑仕事に戻った。
「あらあら、夕食ですよ。たくさんトマトをとったのね。サラダにしようかしら」
エプロン姿で出てきたマナーが楽しそうにニコニコ笑っていた。
バレが立ち上がると、畑の向こうにはキラキラとオレンジ色に光る夕日がゆらゆら揺れていた。
「綺麗・・・」
宙の国をでた時に見た青い空と同じように、バレにとって久しぶりの美しい空だった。
「食べてごらん」
気がつくと、トマトのかごを持ったマフラーが、1番真っ赤なトマトを小さな手でバレに差し出してくれている。
「甘いっ」
1口食べると、祖父から出してもらったパンとは違うさっぱりした甘さだ。バレはトマトを食べるのは、初めてだった。
テーブルに並んだ夕食は、バレが旅した、どの世界よりも豪華だった。
コーンスープ、祖父が出してくれたパンの倍は大きな焼きたてのパン、畑でとったトマトを使った野菜サラダ、牛肉のステーキ、カボチャのプリン、赤ワイン。
どれもおいしくてバレは全部食べてしまった。バレが食べる姿を2人の祖母はニコニコ笑いながら見ていた。
食後にチョコレートアイスが出て、3人でゆっくり食べた。家族とは、こうも暖かいものだろうか?それとも、祖母2人が他の家族とは違うのだろうか?
バレは急に不安になり、チョコレートアイスをすくったスプーンを持つ手元を見た。
「いろんな子供達や家族に会ったでしょ?でも、どれがちゃんとした家族なんてこの世界にはないの。大切なのは、バレ、あなたがだれを家族かと思うことよ」
ギルバー・マナーがバレの心を見すかしたように言った。
「もちろん、愛する人の世界でも同じことよ、だれに何を言われても、あなたが愛した人こそ本物なの」
J・マフラーが続けるように言った。
バレの瞳からポロポロと涙があふれた。宙の国から出てから、バレが泣くのは初めてだった。
「あらあら、可愛い私達の孫は泣き虫さんね」
2人の祖母は、声をあげてなくバレが泣き終わるまで席を立たなかった。
結局、祖母の世界には3週間半もいた。畑仕事もてぎわよくこなせるようになったが、義務として次の世界に行かなくてはならない。
J・マフラーは畑仕事の給料を千パレも出してくれた。バレが半月分には多すぎると言うと
「私達2人の生活は、質素でそんなにお金も使わないの、私達の孫が使ってくれるのが、私達の1番の幸せなの」
ギルバー・マナーが言って、バレはまた涙で瞳をあふれさせた。
J・マフラーがそっとシワだらけの小さな暖かい手で涙をふいてくれた。
「これから大人になると、世界はもっときびしくなるわ。どうか、忘れないで、私達がずっとあなたの事を、この世界で覚えていることを」
2人の言葉にうなずく事しか出来ないバレだったが、2人の祖母はずっとニコニコ笑っていた。
バレは千パレと箱につめられたトマトサラダとからになった水筒に入れてもらったコーンスープをリュックに入れ、祖母の世界の駅へと歩き出す。
空は、3週間半前に、初めて畑で見たオレンジ色に光る綺麗な夕日でゆらゆらと満たされていた。
バレの瞳の涙が、オレンジ色に染まって、夕日と一緒に落ちていった。
祖母の世界につき、バレは思わず、初めて会う祖母に目の前で声をだした。
祖母の世界の住人70万人、5つの町に別れた世界、祖母の名前ギルバー・マナー、住むのはセシ町。世界の中でも1番奥の町だ。
祖父の世界から列車で5時間かかり、列車賃が90パレかかり、手元には1週間分の生活費90パレしか残らなかったバレは、片道3時間を歩き、セシ町についた。
平屋で屋根から壁まで全てブルーの30人は住めそうな家の前には、2人の祖母がバレを待っていた。
「びっくりしちゃうわよね。私はギルバー・マナー、こちらはJ・マフラー、あなたの母方のおばあちゃん。この世界ではパートナーが亡くなると同じ世界同士の家族が住むのよ」
バレよりもひとまわり体格がよく、穏和なギルバー・マナーが教えてくれた。
宙の国から出て、世界を旅してバレは初めて「死」がこの世界に本当にある事を知った。
バレは45歳になっていた。
「あの、お金がないんです。働く所を知りませんか?」
祖母の世界は豊かで、働く場所が駅の駅員の仕事か運転手しかない。バレは運転免許がない。
「あら、なら、ちょうどいいわ。マフラーは家の裏で畑仕事をしているの、滞在中に働けば次の世界に行く資金はたまるわ」
ギルバー・マナーの横で少し華奢なマフラーはニコニコ笑っている。
まるで二人とも太陽のように暖かい人達だった。
ギルバー・マナーは、料理上手でJ・マフラーは畑仕事が上手だった。
世界の奥に行けば行くほど、豊かな富裕層のため、バレの2人の祖母の家は、部屋数10部屋と庭と裏には家と同じくらいの広い畑がある。
富裕層は、この世界では、メイドや執事や料理人を雇うのが当たり前だか、祖母2人は自分の生活は、自分達2人でこなす人達で、近所からも、どうやら変わり者扱いらしい。
家の中は清潔にされていたが、質素な暮らしで必要なテーブルや生活用品しか置かれていない。
「1番手前と2番目の部屋が私とマフラーの部屋だから、バレはどの部屋を使ってもいいわよ。そろそろ夕食の準備をするから、バレはマフラーと畑で野菜をとってきてちょうだい」
マナーはてきぱきと指示をだした。
広すぎて居心地が逆に悪くなり、バレは祖母2人の次の3番目の部屋のブルーのドアをあけた。
中には、ブルーのテーブル、ブルーのベッド、ブルーのバレの身長よりも高いタンスとブルーの化粧台があった。
バレは荷物を置いて、祖父が用意してくれた1番おちついた色のグレーのワンピースを着て畑に出た。
J・マフラーは、口数が少ないが笑うと目じりにシワがよって、とても可愛い祖母だった。
母親の世界で会ったギルバー・サマーとは似ていない。母親は亡くなった祖父に似ていたのだろうか?
「トマトをとりましょう。トマトを持ってひねれば茎から取れるわ」
1番手前の畑には、キラキラと光る赤い実がなっていた。
マフラーから1つかごを渡されたバレは、1時間ほど無言でトマトを取った。
「上手いわね。ずっとここにいて欲しいくらいだわ」
J・マフラーは、1言だけ言うと、またニコニコ笑って畑仕事に戻った。
「あらあら、夕食ですよ。たくさんトマトをとったのね。サラダにしようかしら」
エプロン姿で出てきたマナーが楽しそうにニコニコ笑っていた。
バレが立ち上がると、畑の向こうにはキラキラとオレンジ色に光る夕日がゆらゆら揺れていた。
「綺麗・・・」
宙の国をでた時に見た青い空と同じように、バレにとって久しぶりの美しい空だった。
「食べてごらん」
気がつくと、トマトのかごを持ったマフラーが、1番真っ赤なトマトを小さな手でバレに差し出してくれている。
「甘いっ」
1口食べると、祖父から出してもらったパンとは違うさっぱりした甘さだ。バレはトマトを食べるのは、初めてだった。
テーブルに並んだ夕食は、バレが旅した、どの世界よりも豪華だった。
コーンスープ、祖父が出してくれたパンの倍は大きな焼きたてのパン、畑でとったトマトを使った野菜サラダ、牛肉のステーキ、カボチャのプリン、赤ワイン。
どれもおいしくてバレは全部食べてしまった。バレが食べる姿を2人の祖母はニコニコ笑いながら見ていた。
食後にチョコレートアイスが出て、3人でゆっくり食べた。家族とは、こうも暖かいものだろうか?それとも、祖母2人が他の家族とは違うのだろうか?
バレは急に不安になり、チョコレートアイスをすくったスプーンを持つ手元を見た。
「いろんな子供達や家族に会ったでしょ?でも、どれがちゃんとした家族なんてこの世界にはないの。大切なのは、バレ、あなたがだれを家族かと思うことよ」
ギルバー・マナーがバレの心を見すかしたように言った。
「もちろん、愛する人の世界でも同じことよ、だれに何を言われても、あなたが愛した人こそ本物なの」
J・マフラーが続けるように言った。
バレの瞳からポロポロと涙があふれた。宙の国から出てから、バレが泣くのは初めてだった。
「あらあら、可愛い私達の孫は泣き虫さんね」
2人の祖母は、声をあげてなくバレが泣き終わるまで席を立たなかった。
結局、祖母の世界には3週間半もいた。畑仕事もてぎわよくこなせるようになったが、義務として次の世界に行かなくてはならない。
J・マフラーは畑仕事の給料を千パレも出してくれた。バレが半月分には多すぎると言うと
「私達2人の生活は、質素でそんなにお金も使わないの、私達の孫が使ってくれるのが、私達の1番の幸せなの」
ギルバー・マナーが言って、バレはまた涙で瞳をあふれさせた。
J・マフラーがそっとシワだらけの小さな暖かい手で涙をふいてくれた。
「これから大人になると、世界はもっときびしくなるわ。どうか、忘れないで、私達がずっとあなたの事を、この世界で覚えていることを」
2人の言葉にうなずく事しか出来ないバレだったが、2人の祖母はずっとニコニコ笑っていた。
バレは千パレと箱につめられたトマトサラダとからになった水筒に入れてもらったコーンスープをリュックに入れ、祖母の世界の駅へと歩き出す。
空は、3週間半前に、初めて畑で見たオレンジ色に光る綺麗な夕日でゆらゆらと満たされていた。
バレの瞳の涙が、オレンジ色に染まって、夕日と一緒に落ちていった。
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