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第2章:独角党
24.真夜中の襲撃者
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「うあ~、飲んだ飲んだあ!」
エヴァンとメフィストがぐでんぐでんに酔っぱらってクブカの屋敷に戻ってきたのは夜もとっぷり更けた後だった。
「まったく、何時だと思ってるんですか」
クブカは呆れたようにため息をつきながらもエヴァンとメフィストに水の入ったグラスを差し出した。
「それで、用事はもう済んだんですか?」
「あ~あれね!もう少し!もう少しで終わるから!それまでよろしく頼むよ、クブちゃん!」
エヴァンは音を立てて水を飲みながら陽気に叫んだ。
「ク、クブちゃん?」
クブカが目を白黒させた。
メフィストに至ってはエヴァンに担がれながら完全に眠り込んでいる。
「…とにかく、もう夜も遅いんですからあまり騒がないでくださいよ!」
ブツブツとこぼしながらもクブカはエヴァンとメフィストに手を貸しながら2人を客室のベッドまで運んでいった。
「あいあーい!承知いたしましたあ!」
ベッドに寝ころびながらエヴァンが大げさに敬礼しながら叫ぶ。
「まったく…」
頭を振りながらクブカは客室を後にし、まもなく部屋から寝息が聞こえてきた。
それから2時間後、客室のドアが音もなく開かれた。
黒づくめの服に覆面をした4人の男たちが滑るように部屋に入ってくる。
(傷つけても構わないが殺すなよ。生きて連れて帰れという命令だ)
男たちは無言で頷き合うとベッドへと向かっていった。
「どうやら今回は当たりみたいだな」
その時、男たちの背後から声がした。
驚いて振り返った男の顎が勢いよく跳ね上がる。
そこにいたのはエヴァンだった。
それを残りの3人は素早く部屋の隅に飛び退るとナイフを抜いた。
どれも刀身を黒く塗っている
「貴様、何故意識がある!」
「あ~、さっきの水に入ってた睡眠薬か?俺は耐毒持ちだからあのくらいじゃ効かないって」
「馬鹿な!魔族ですら数日は起きない量だぞ。現にこの女魔族だって…」
「ん~、そいつは多分普通に寝てるだけだと思うぞ?それよりもお前ら独角党の一味で合ってるんだよな?だったら話があるんだ」
エヴァンの言葉に3人の殺気が膨れ上がる。
「話し合う余地はなしか」
エヴァンは軽くため息をついた。
「まあいいや、後でゆっくり聞かせてもら…」
話し終わるのを待たずに男たちが三方からエヴァンに飛びかかった。
そして数秒後、そこには床に横たわる男たちの姿があった。
「結局こうなるんだよな。でも部屋に侵入してきたのはそっちなんだから悪く思わないでくれよ。おい、メフィスト、起きてくれ。お前さんの力が必要なんだ」
エヴァンは昏倒している男たちを手際よく縛り上げると眠りこけているメフィストの頬をペシペシ叩いた。
「ん~あと5時間…」
目をこすりながらメフィストが寝返りを打つ。
「5時間も寝たら普通に朝だろうが!早く起きろ!乳を揉むぞ!」
「ふ、ふざけるな!あたしが寝ているのをいいことにこの身体を弄ぼうというのか!」
メフィストが胸元を押さえながらがばっと起き上がった。
「起きてるじゃないか」
手をワキワキさせながらエヴァンがため息をつく。
「まあいいや、お前さんの力を借りたいんだ」
「なに?なにをすんの?」
「こいつらの記憶を読んでくれないか?どこから来たのかとか、誰に指図されたのかとかさ」
「ふあ~あ、そんだけ?まあいいけど」
あくびをしながらメフィストは一人の頭を掴んだ。
「ほいよっと」
男の頭から知恵の輪のような記憶の塊が飛び出す。
「どうだ?何かわかるか?」
「ん~、わかるっちゃわかるんだけど…」
目をこすりながらメフィストが答える。
「記憶って読んでく端から解放されていっちゃうけどいい?」
「……まあいいんじゃないかな。この連中もその位のリスクは覚悟の上だろう。むしろ悪党になってからの記憶を消してやった方が更生できるかもしれないな」
「オーケー、じゃあやっていくよ」
メフィストは指を鳴らすと記憶の知恵の輪に手をかけた。
◆
「…こ、これには…事情がですね…」
縛り上げた男たちを抱えて部屋を出てきたエヴァンを見たクブカの顔が真っ青になった。
陸に上げられた魚みたいに口をパクパクさせている。
「あ~、いいよいいよ。こうなるのは大体わかってたから」
エヴァンは男たちを床に転がすと手を振った
「す、すいませんでしたあ!連中とは商売上どうしても関わらざるを得なくて、それで無理やり脅されたんですう!」
クブカはそう叫ぶと床に額をこすりつけた。
「その割には薬入りの水を渡す手際が慣れてたよな」
「そ…それはですねえ…」
愛想笑いをしながら顔を上げたクブカが大きく目を見開いて固まった。
その視線はエヴァンの後ろにいるメフィストに向けられている。
「そそそ…その…ししし尻尾は……?」
「あ、しまい忘れてた」
メフィストが腰から伸びる尻尾に振り返った。
「力を使うとついつい出ちゃうんだよね」
「あ…あなた……悪魔なんですかああ~~!!??」
「そういうことなんだよ。悪いんだけどこのことはみんなに黙っててくれるかな?」
「あ、当たり前です!これでも私は天遍教の敬虔な信徒なんですよ!悪魔に関わってることが教会に知れたら…わ、私は火炙りにされてしまう!」
目に涙を浮かべて叫ぶクブカを見てメフィストが不思議そうな顔をした。
「天遍教ってなに?」
「あ~、この大陸で一番力を持ってる宗教だな。神を信奉していて悪魔や魔族を嫌ってるんだよ」
「ああ~、なんでこんなことに。もう奴隷商なんて因業な商売は止める!堅気になりますから神よどうかお許しください」
クブカはさめざめと泣きながら祈りを捧げていた。
エヴァンとメフィストがぐでんぐでんに酔っぱらってクブカの屋敷に戻ってきたのは夜もとっぷり更けた後だった。
「まったく、何時だと思ってるんですか」
クブカは呆れたようにため息をつきながらもエヴァンとメフィストに水の入ったグラスを差し出した。
「それで、用事はもう済んだんですか?」
「あ~あれね!もう少し!もう少しで終わるから!それまでよろしく頼むよ、クブちゃん!」
エヴァンは音を立てて水を飲みながら陽気に叫んだ。
「ク、クブちゃん?」
クブカが目を白黒させた。
メフィストに至ってはエヴァンに担がれながら完全に眠り込んでいる。
「…とにかく、もう夜も遅いんですからあまり騒がないでくださいよ!」
ブツブツとこぼしながらもクブカはエヴァンとメフィストに手を貸しながら2人を客室のベッドまで運んでいった。
「あいあーい!承知いたしましたあ!」
ベッドに寝ころびながらエヴァンが大げさに敬礼しながら叫ぶ。
「まったく…」
頭を振りながらクブカは客室を後にし、まもなく部屋から寝息が聞こえてきた。
それから2時間後、客室のドアが音もなく開かれた。
黒づくめの服に覆面をした4人の男たちが滑るように部屋に入ってくる。
(傷つけても構わないが殺すなよ。生きて連れて帰れという命令だ)
男たちは無言で頷き合うとベッドへと向かっていった。
「どうやら今回は当たりみたいだな」
その時、男たちの背後から声がした。
驚いて振り返った男の顎が勢いよく跳ね上がる。
そこにいたのはエヴァンだった。
それを残りの3人は素早く部屋の隅に飛び退るとナイフを抜いた。
どれも刀身を黒く塗っている
「貴様、何故意識がある!」
「あ~、さっきの水に入ってた睡眠薬か?俺は耐毒持ちだからあのくらいじゃ効かないって」
「馬鹿な!魔族ですら数日は起きない量だぞ。現にこの女魔族だって…」
「ん~、そいつは多分普通に寝てるだけだと思うぞ?それよりもお前ら独角党の一味で合ってるんだよな?だったら話があるんだ」
エヴァンの言葉に3人の殺気が膨れ上がる。
「話し合う余地はなしか」
エヴァンは軽くため息をついた。
「まあいいや、後でゆっくり聞かせてもら…」
話し終わるのを待たずに男たちが三方からエヴァンに飛びかかった。
そして数秒後、そこには床に横たわる男たちの姿があった。
「結局こうなるんだよな。でも部屋に侵入してきたのはそっちなんだから悪く思わないでくれよ。おい、メフィスト、起きてくれ。お前さんの力が必要なんだ」
エヴァンは昏倒している男たちを手際よく縛り上げると眠りこけているメフィストの頬をペシペシ叩いた。
「ん~あと5時間…」
目をこすりながらメフィストが寝返りを打つ。
「5時間も寝たら普通に朝だろうが!早く起きろ!乳を揉むぞ!」
「ふ、ふざけるな!あたしが寝ているのをいいことにこの身体を弄ぼうというのか!」
メフィストが胸元を押さえながらがばっと起き上がった。
「起きてるじゃないか」
手をワキワキさせながらエヴァンがため息をつく。
「まあいいや、お前さんの力を借りたいんだ」
「なに?なにをすんの?」
「こいつらの記憶を読んでくれないか?どこから来たのかとか、誰に指図されたのかとかさ」
「ふあ~あ、そんだけ?まあいいけど」
あくびをしながらメフィストは一人の頭を掴んだ。
「ほいよっと」
男の頭から知恵の輪のような記憶の塊が飛び出す。
「どうだ?何かわかるか?」
「ん~、わかるっちゃわかるんだけど…」
目をこすりながらメフィストが答える。
「記憶って読んでく端から解放されていっちゃうけどいい?」
「……まあいいんじゃないかな。この連中もその位のリスクは覚悟の上だろう。むしろ悪党になってからの記憶を消してやった方が更生できるかもしれないな」
「オーケー、じゃあやっていくよ」
メフィストは指を鳴らすと記憶の知恵の輪に手をかけた。
◆
「…こ、これには…事情がですね…」
縛り上げた男たちを抱えて部屋を出てきたエヴァンを見たクブカの顔が真っ青になった。
陸に上げられた魚みたいに口をパクパクさせている。
「あ~、いいよいいよ。こうなるのは大体わかってたから」
エヴァンは男たちを床に転がすと手を振った
「す、すいませんでしたあ!連中とは商売上どうしても関わらざるを得なくて、それで無理やり脅されたんですう!」
クブカはそう叫ぶと床に額をこすりつけた。
「その割には薬入りの水を渡す手際が慣れてたよな」
「そ…それはですねえ…」
愛想笑いをしながら顔を上げたクブカが大きく目を見開いて固まった。
その視線はエヴァンの後ろにいるメフィストに向けられている。
「そそそ…その…ししし尻尾は……?」
「あ、しまい忘れてた」
メフィストが腰から伸びる尻尾に振り返った。
「力を使うとついつい出ちゃうんだよね」
「あ…あなた……悪魔なんですかああ~~!!??」
「そういうことなんだよ。悪いんだけどこのことはみんなに黙っててくれるかな?」
「あ、当たり前です!これでも私は天遍教の敬虔な信徒なんですよ!悪魔に関わってることが教会に知れたら…わ、私は火炙りにされてしまう!」
目に涙を浮かべて叫ぶクブカを見てメフィストが不思議そうな顔をした。
「天遍教ってなに?」
「あ~、この大陸で一番力を持ってる宗教だな。神を信奉していて悪魔や魔族を嫌ってるんだよ」
「ああ~、なんでこんなことに。もう奴隷商なんて因業な商売は止める!堅気になりますから神よどうかお許しください」
クブカはさめざめと泣きながら祈りを捧げていた。
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