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「リナ!」
大きな扉が開くと共に名前を呼ばれてリナは大きく肩を揺らした。
屋敷中に響き渡る大声を出す男をリナはよく知っていた。
「リナ!…聞いてるんだろう、リナ!」
「旦那様、いけません」
アギロを後ろから制止しようと初老の男が追いかける。
そんな男の努力もむなしく、アギロは目的の部屋にたどり着くとノックもなくリナの部屋に入り込んだ。
「年頃の女性の部屋に入るのは男性としてはしたないのではなくて?」
机に向いたままの背中に呆れた声でアギロは反論した。
「大切な話があるなら別だ。それにここは私の屋敷だ」
頑なに振り替えるそぶりを見せないその背中はアギロにの反論に小さく動く。
それだけでアギロにはリナが自分に何を言われるのかわかってわざと無視をしているとすぐにわかった。
「私が何を言いに来たかわかってるんだろう」
脅しをかけるように声を深くしたアギロ。
その手には彼女がいつも大切にしている鍵の束があった。
チャリと、鍵通しがぶつかる音が鳴る。
「書庫に入る事を禁ずる」
「…だめよ!それだけはダメ!」
鍵の音で何を言われるのかわかったリナは、アギロが全てを言い終える前に悲鳴を被せた。
アギロの声を無視していた事も忘れて必死の形相のリナ。
鍵を頭上で揺らされ、取り戻そうと手を伸ばす姿は子猫が猫じゃらしで遊んでいるようだったが、本人たちはいたって真面目だった。
「なぜあんなことをした?」
「そんなの決まってるでしょう?」
ふんっと顎を逸らしてリナはアギロをにらむ。
その姿は16歳にしては幼く、大人ぽい見た目からは想像もつかない程子供っぽい仕草だった。
「『軍人でもないのに危ない真似はやめろ』そう口酸っぱく言う後見人を黙らせるために決まってるじゃない」
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