【完結】王妃を廃した、その後は……

かずきりり

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「……今日は帰る」

 嫌な思考が巡ったホセは、顔を真っ青に染めながら侯爵家を後にした。
 考えたくない。
 考えたくはないが……まさか……。
 一人考えるホセは、常に最悪な事を考え続けた。
 ……婚約したのは別の人なのではないかと。
 しかし、勝手に抜け出して会いに行ったのはホセだ。
 誰かに相談など出来るわけもない。

「……確かめよう」

 埒が明かないと思ったホセは、再度侯爵家へと向かったのだった――。





「ホセ、ちゃんと理解しているのか? 正式に会えるのは王太子妃教育が終わってからだぞ」
「分かってますよ」

 食事の席で父である国王から放たれた言葉に、ホセはそれが? と言わんばかりの態度で答える。
 婚約してから数か月後。
 婚約する前は、早くラウラに会わせろと煩かったホセが、今は何も言ってこない。
 なのに、どうやらナバーロ侯爵家へ足しげく通っているという報告を受けているのだ。

「貴方もしっかり王太子教育を受けないと」
「分かってますよ」

 聞いているのか、いないのか。
 確かにホセはラウラが王太子妃教育をしている時間にナバーロ侯爵家へ行っているようだから、会ってはないのだろうけれど……。

「ホセ、お前は一体どこに……」
「ごちそうさまでした。では勉強するので」
「ちょ……ホセ!?」

 さっさと食べて、食堂から出て行くホセの背に声をかけるが、ホセは足を止める事なく出て行ってしまった。

「……一体、何だと言うのかしら……」

 国王と王妃は、ホセの変わりように首を捻る。
 だけれど、エマとミケルは怪訝な目をホセに対して向けていた。





「ようこそお越し下さいました。王太子殿下」
「あぁ、失礼するよ」

 今日もホセは王城を抜け出してナバーロ侯爵家へとやってきた。
 にこやかに出迎える侯爵夫人。しかし、その隣に居る侯爵は怪訝な顔をしながらも、追及の言葉を口にしないでいた。
 それはそうだろう。……疚しさしかないのだから。

「やぁ、パウラ。また来たよ」
「ホセ様!」

 中庭のガゼボで、ホセとパウラはお茶をする。
 近くに侍女達は居るが、話し声は聞こえない位に離れてもらっていた。
 これは、いつもの事だ。だって、パウラからきちんと話を聞かなくてはいけないのだから。

「パウラ……大丈夫か?」

 満面の笑みを浮かべていたパウラが、ホセの言葉で表情を一転させ、悲しい表情をして涙を流した。
 パウラと何度か会っているうちに、ラウラからアクセサリーやドレスを毎回奪われていると相談を受けていた。
 だから、いつもこうして気にかけていたのだけれど……。
 
「……屋根裏部屋を部屋とされました……」
「何だと!?」
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